1-10 恋愛の足枷
「それが、そうもいかなくてな」
みかんの言葉に対して俺が答えた。ラブラブするのはハードルが高過ぎるのもそうだが、理由は他にあり、
「中学二年の頃だったかな、許嫁がいるってのが嫌になって、こちらからの手紙に嘘で『彼女ができました』って書いたら親同士を伝ったのか、父さんにめちゃくちゃ説教受けた。俺の父さんは許嫁の子ファーストらしい。そのときは、この状況で嘘とか言えなくて別れたってことにした。あと、それ以来俺からの手紙は禁止されてる。住所は俺の父さんしか知らないから、俺からは手紙を出せない」
「それで、許嫁の子もこの学校にいるし彼女を持つこと事態が難しいと?」
「……そうなる」
みかんは友達の恋愛成就を期待していたのか、俺の言葉を聞いて「はぁー」と大きなため息をついて残念そうにテーブルに突っ伏した。確かに夏音の立場からしても叶わぬ恋というのは可哀想だ。
「あの、こんなことを話しておいてなんだが、1つ頼みがあってな……」
「ぅんー?なにー?」
みかんは完全にやる気を失っている。生気を感じない返事が返ってきた。
「さっきも言ったが、俺は許嫁の子に好意は抱いてない。だから許嫁の人をうまく言いくるめて、足枷を外せれば、夏音と、そ、その、付き合っても問題ない。というより、正直いまだにその許嫁の子にはうんざりしてるから、出来ることなら恋人が欲しい」
少し照れ臭そうに言う俺の言葉にみかんの生気は一瞬にして復活し、突っ伏した状態からひょいと起き上がり目をキラキラさせて俺に詰め寄ってくる。
「じゃ、じゃあ……」
「あ、あぁ、だが条件がある」
「条件?」
俺の挙げた条件は
・うちの学校にいる許嫁を捕まえて、説得する。
・無理なら、説得するために俺から告白は出来ない。もし、俺から告白したと知られたら、許嫁の子がゆるしてくれるはずもなくまた父さんに怒られる。許嫁の子に認めてもらえるくらいの愛情を夏音に見させてもらう。
・許嫁のことなど、今日のことは夏音には伏せること。もし、知られて夏音に退かれたら、俺は許嫁の足枷をはずすことが出来ない
の3つだ
「つまり、許嫁の子を説得して、無理なら夏音から告白しろってこと?」
「そうなるな、まだ夏音と許嫁の子のことよく知らないから俺がどっちを選ぶかはわからないけど、これなら夏音にもチャンスはあるぞ」
なんか、女たらしのような言い方をしてしまったが、実際は夏音に9割ほど分がある。許嫁の子にはうんざりするほどの手紙が来ているからだ。恥ずかしかったから互角って言い方にしておいた。
「で、お願いって?」
「許嫁の足枷を外すことに協力して欲しい」