転送アイテムって魔族でも需要あるらしい
「うーむ。護衛を頼もうと考えたがの。『死の鉱山』に行くとわかった時点で皆拒絶に決まっておる。」
「…入らない…足手まとい…」
「おいおい、そんな言い方ないだろ。」
「…本当…嘘…言っていない…」
「私としてはお前達が生還する可能性がないと踏んでいるが。」
「そうではないかもしれぬの。」
「リボン様?」
「この転送アイテム。確か、使うのには膨大な魔力を有するんじゃったな。即ち彼らにはそれ程の力があるというもの。命優先で危険と察した時逃げることが出来るのであればそこまで心配するまででもあるまい。」
「しかし…」
「であればディビルよ。お主が彼らの護衛について参れ。」
「そ、それは…」
「出来ないことを他者に押し付けるのはどうかと思うの。にて、少々頼みがあるのじゃが。」
「承りますわ。」
「ちと、この転送アイテムを貸して欲しいのじゃ。握っているだけである程度の使い方が分かる辺り相当素晴らしいアイテムだと踏んでおる。お主らが遺跡にこのアイテムを使うのであれば話は別じゃが。」
『こりゃ、運良ければそのアイテムを強奪する気だな。』
え?あの子が?そんなことするようには思えないんだけど。
『恐らく、返せと言われれば返すであろうが…万一我らが全滅した場合は誰も返せとは言うまい。』
そうか。私達が死んじゃったらそうなるもんね。でも、死ぬ気は満更ないけど。
“皆はどう思う”
「…反対…帰れない…」
「私は貸しても問題ないと思いますわ。私も、気になるものには目がありませんわ。」
「俺はどっちでもいいや。帰れればさ。」
うわ。多数決が機能してないじゃん。
『多数決などやめとけ。少人数派が正しいことなどいくらでもある。』
わかったわよ。
“返してくれれば構わない”
「おお、それは嬉しいの。ただ良いのかの?遺跡までは徒歩になると思うが。」
「…遺跡…記録無し…転送アイテム…利用不能…」
そう言えばそうだったね。一度行ったところじゃないと使えないんだっけ。
『帰りは有効利用出来るがな。』
でも地図的にはあまり遠くないし。万一があった場合は…
『強奪か?』
だから物騒なことを言わないで。
『じゃあ他に何か案があったのか?』
う、うるさい!
「では軽い物資は提供しようかの。」
「まさか国税から出すとか言いませんよね?」
「なんじゃ?他国家に依頼金を出すと言う形じゃ。問題あるのかの?」
「今国内中で飢饉問題が起きているのですよ。そんなことをすれば問題になります。しかもたかが『死の鉱山』のためだけに。」
「じゃが…」
“大丈夫です”
「…サクラ様…同意…リスク…許容…」
「大丈夫か本当に。まあ、物資が増えたから生存率が上がると言うダンジョンではなさそうだが。」
「私も覚悟を決めますわ。ただ、物資はサクラ様のご両親がくださったもので十分ですわ。アマミさんではありませんので多大の物資を運ぶのは、それはそれで非効率ですわ。」
『だそうだが?』
お金しか貰っていないわよ。いつもそれしかくれないし。
『お釣りは全てマイポケットだったな。』
依頼受けたんだからそれぐらい当然でしょ。
「すまないの。誤認逮捕の上、ロクに手伝うことも出来なくての。」
「…平気…いつもの事…」
「大丈夫ですわ。ダンジョンの情報提供に感謝しますわ。」
“じゃあそろそろ行く?”
「行こうぜ?宿探すんだっけか?」
「あの娘、一切喋らなかったな。」
「そうじゃの。文字で意思疎通する辺り声が出ないようじゃな。その路線で謝礼を渡せぬかの。」
「私用目的の国税利用は良くないと思いますが。」
「給料からなら問題ないじゃろ。」
区切りが良いのでここで一旦切ります。