魔術師VS魔女
「シャロル様すげえな。霧がどんどん消えていくぜ?」
「これぐらいどうって事ないですわ!では皆さん出発ですわ!」
「…待つ…おかしい…気になる…」
『霧が一箇所にまとまり始めたぞ?』
うん?人型にまとまっていくわよ?魔人だったりしないわよね?
『そんなはずはあるまい。霧に変化出来る魔人などいるはずが…。』
「え?あの子は…?」
「アマミさんですの?」
『アマミだと?』
そういえば、確かにアマミね。顔つきも服装的にもとんがり帽子まで。
「どうしてこんなところにいらっしゃいますの?!」
「おいおい、まさか付いてきたとか?」
どうやって来たのよ?
『アホか?単独でこんな所まで来る奴がいるか?』
でも、あの性格ならやりかねないわよ?
『やりなねないって…ものには限度というものがあるだろ?!』
「…本物…偽物…不明…アンドロイド…機能…無し…」
「使えねえな。機械ならそれぐらい分からないのか?」
“エナは戦闘兵器。調査能力はない”
「アマミさん?アマミさんですの?」
返事ないわね?
『こっちは見ているが、動きが全く見れん。生きているのか?』
というより、本当にアマミなのかしら?
『逆に聞きたいが、この状況で本当にアマミか?とか考えている奴はお前らだけだぞ?』
なんでよ?根拠は?
『霧から生き物が生成されたんだぞ?人間なわけあるか。どう見ても魔物かその分類に決まっているだろ。』
え?じゃあ、アマミは魔物って言う事?人型ならば魔人だと思っていたわ。
『お前は天然か?いいか。アマミから離れろ。奴はアマミではない。魔物が化けたと言っているんだ。あと、補足だが、魔物の中に魔人は分類されているからな。要はどっちも同じもんだぞ?』
は?その方が傷つくんだけど?私は魔物なの?
『誰かが説明したような気がしていたが…魔物の中でも取り分け人間出身なのが魔人として重宝されているだけだ。予めだが魔物だって全部害虫じゃないんだぞ?お前だって、人間と共存できる魔人じゃないか。誇りに思え。』
いやよ!私は伯爵令嬢として普通に生きたいんだけど!!
「アマミさん?返事をしてくださいまし?」
「おい、シャロル様?様子が変だぞ?近づくのは不味いんじゃあねえか?」
「アマミさんを放っておけませんわ!先日だって、授業中走り回って天井に穴を開けているのですのよ!」
そういえばあったわね。
『逆に走り回って天井に穴を開けれるのがおかしいがな。』
あの子、箒で空飛べるからね。既に常識なんてあの子には通用しないわよ?ここにいても不思議じゃないわ。
『あいつは霧化出来るのか?』
うーん?
“アマミって霧になれたりするの?”
「…出来る…化け物…」
「人間だったら無理じゃね?吸血鬼とかだとコウモリに化けるとか聞いたことがあるがな。」
それは初耳ね。
『吸血鬼か。あったら刈ってみるか?』
だから私は伯爵令嬢だから!なんで戦闘民族みたいなことしなければいけないのよ!
『で、迂回しまくっているが…あれはどうするのだ?』
不気味なのは一切動かないし、何もしてこないのよね。アマミ本人だったらシャロルに抱き付きに行っても可笑しくないんだけど。
『その判断基準も色々おかしいがな。』
アマミに常識は通用しないと言ったわ。
「アマミさん?大丈夫ですの?」
「おいシャロル様!明らかにおかしいぞ?あまり近づくな!」
「で、ですが…野放しには…あれ?」
「…何か…あった…」
「そ、そんな…偽物でしたわ!」
いや、そこまで驚くことでもなくない?
『逆に、即回答が出ないお前らがどうかしているぞ?』
普通なら出来るわよ。ただ、あの子には常識が通用しないから分からなくなるだけよ!
「普段嗅いで入るアマミさんの匂いではありませんわ!」
「おい!判断基準そこかよ!」
「…匂い…不詳…そこ…判断基準…今後…参考…」
そこを参考にする奴がいる?!逆に変態の域じゃないの?!
『あれじゃないか?馬鹿は伝染するという奴だ。シャロルとアマミはよく共に行動しているんだろ?』
フォローしてあげたい所だけど、フォローする場所がないわね。
「おい、偽物ってわかったらこっちへ戻ってこいよ!危ねえぞ?」
「分かりましたわ。このシャロル・オラクル令嬢、アマミさんの偽物は容赦しませんわ!本物がわからなくなってしまいますわ!」
戦闘理由がアホだと思うのは私だけ?
『生憎だな。我もだ。』
貴方と気が合うのはゴメンだわ。
『我の扱いももう少し伯爵令嬢として接して欲しいものだが。』
「…潰す…エナ…やる…?」
「偽物は私が成敗しますわ!皆さんは観ていてくださいまし!」
チュドーン!
シャロルの魔法っていつ見ても他のクラスメートより凄いわよね。
『詠唱スピードも早いしな。お前も使えるようになればいいのにな。』
私は、魔法使えないし!てか、そもそも戦闘に興味ないし。貴方のせいでこうなったんだから!
『我は何もしていないぞ?お前が我に触れるのが悪いのだ。』
あれは事故だし!こうなるなんて予想していなかったし!
「やったか?」
「偽物であれば余裕ですわ。…どうして無傷ですの?!」
『おいおい、全く効いていないぞ?』
うーん。固そうね?
「追撃ですわ!アマミさん自身には勝てませんが、偽物には勝てるはずですわ!」
ドカーン!
「おいおいマジかよ。」
「…危険…判断…追撃…準備…」
“落ち着いて”
「…何故…」
『なんだ?考えがあるのか?』
おかしいと思わない?
『何がだ。実際は本物だったとかか?』
違うわよ。攻撃してこないのよ?敵ならなんだかんだで攻撃してくるでしょ。
『確かにそうだな。』
とりわけ、こっちから仕掛けても何も起きないのはどうかと思って。
『企んでいるとでも言いたいのか?』
うーん。個人的何もしてこないならそのまま素通りでもいいかなと思っていたり。
『魔人としてのプライドが皆無すぎる。もう少し、魔人として振る舞え。』
残念。私は伯爵令嬢でした!
“仕掛けてこない以上、戦闘するだけ消費する。何もせず放っておく”
「ま、待つのですわ!それでは偽物を退治出来ないですわ!」
“既に対応出来ていない。目的は魔人の素。あれは魔人ではない”
「し、しかしですわ。私はアマミさんに勝ちたいのですわ!偽物ぐらいは倒させてくださいまし!」
「おいおい。サクラ様は伯爵令嬢だぜ?シャロル様は子爵令嬢でサクラ様の方が上じゃねえか?逆らっていいのか?」
「う…わ、分かりましたわ。今度、アマミさんに相談して見ますわ。」
『お前の貴族の位が役に立ったな。』
こんなところで役に立っても嬉しくないわよ!ただの暴君じゃない!
“じゃあ行こう。エナ。先頭よろしく”
「…心得た…」
『何故、エナを先頭にして行かせるのだ?』
万一仕掛けて来た場合、エナなら大丈夫かなって。
『お前もロボットの扱い雑だな。』
「…無事…突破…流石…サクラ様…体力…温存…成功…」
「残念ですわ。私だけが魔力を消費してしまいましたわ。既に限界が近いですわ。」
『あれだけデカイ魔法打ちまくればそうなるよな。』
「おい、見てみろよ。アマミが霧になって消えてくぜ?」
あら?さっきまではじっと、シャロルのことを見ていたのに。
『よくわからんが、どうやらあの霧はシャロルに反応していたみたいだな。シャロルが関心を示さなくなったから元に戻ったか?』
まあいいわ。次へ行きましょう。というより、大分音が大きくなって来たわ。そろそろ不気味な音の正体がわかりそうね。
個人的に少々やりたい事が出来まして投稿スピードを一時的に遅らせます。




