声が出ないって不便で仕方がありません
キーンコーンカーンコーン
はぁ…。今日もようやく授業終わったー!
「では、号令。えーっと、今日の日直はアマミ!」
「はいなんです!うーん、トイレ行くんです!」
「…シャロル。代わりを頼む。」
「わかりましたわ。気を付け。礼。」
「「「ありがとうございました!」」」
『後ろの方で走っていったな。』
アマミでしょ。いつものことだから気にしたら負け。
『よくあれでこの学校に編入できたな。』
私は詳しくは見ていないけど、シャロルによるとめっちゃすごい魔法使えるんだって。
『そうなのか。そんなに強いなら一度戦ってみるか?』
あのさ、私はモーレン伯爵令嬢よ。そんな戦闘狂みたいなことはしないから。
『我を従えた魔人が何をいっている?今まで幾つの魔物を葬って来たのだ?』
「…伸びてる…」
伸びてないし!
「…帰りたい…」
私も帰りたいんだけど、今日シャロルが待ってっていっていたじゃん!
「…応答…」
応答してるじゃん。聞こえないの?
『お前、声が出なくなっているの忘れたのか?』
貴方が私に取り付くのが悪いんでしょ!
“まだ駄目。シャロル待ち”
「…サクラ様…書くスピード…早い…」
うるさいわね。声が出なくなってから一生懸命スケッチブックに描く練習したんだから。
『その愚痴も聞こえていないがな。』
うるさい!
「あれ?シャロル様は?」
「…帰った…」
嘘?!
「ま、マジ?俺らに徴集をかけておいてか?」
「…来た…」
『戻って来たな。さっきのアマミという奴と一緒だったのか。あいつらよく一緒にいるな。』
まあしょうがないよ。あの二人仲良いみたいだし。
『班分けの時、何故あの二人は別れたんだ。』
強い魔術師が二人とも同じチームじゃ不釣りあいだったんじゃない?
『エナは弱いのか?』
あの子は自分にリミッターつけてるじゃん。実際はめっちゃ強いよ!
「…見られてる…恥かしい…」
「何が恥かしいんだ?しかも真顔なんだが?」
「皆さん集まるの早すぎですわ!」
「…シャロル様…遅い…」
「申し訳ありませんわ。アマミさんの面倒は私が見ると決めていますわ。」
「尊敬するわ。横目で見ている分にはめっちゃ面白いが、あんなのと話していたら気が狂うわ。」
「アマミさんは私にとってよき友達であり、よきライバルですわ!何れ彼女の箒に乗って空を自在に飛んで見せますわ!」
「…飛ぼう…思う…可能…」
ちょっと、エナ?貴女が飛べることは知っているけどそれを話したら貴女がアンドロイドということがバレちゃうよ?!
「え、エナさんも空を飛ぶことが出来るのですの?!」
“無理!”
「ですわよね、サクラ様。」
「…我慢…人間…わからない…」
「というより、シャロル様。なんで俺らを集めたんだ?」
「決まっていますわ!今日の班決めで私達は同一チームになりましたわ。即ち、これから冒険者ギルドに行って依頼を受けるのですわ!」
急すぎない?!
『それは一体なんだ?』
えっと、冒険者ギルドでは色々と依頼があってそれを受けることによりお金を貰うことが出来るんだよ。
『なんだ。お前の両親がお前に依頼するのと大して変わらないではないか。』
うーん。お父様とお母様の依頼だとお金は貰えないよ。何かしら持ってくることにはなるけど。
「シャロル様、いきなりじゃ無理じゃね。俺ら今日初めてチームになったんだぜ。お互い全くわからないじゃないか。」
「だからこそ、依頼を受けることにより違いを知る良い機会となるのですわ。」
「…予定…聞く…無難…」
確かに。急に決まっても誰かが予定があれば厳しいよね。
「わかりましたわ。ところで皆さんなにか予定があるのですの?私はあえて今日はアマミさんに先に帰ってもらいましたわ。」
「…アマミ…登下校…箒乗る…一緒…帰宅…不能…」
「そんなことありませんわ!あの箒は2人ぐらい乗れますわ!途中まで乗せて貰うぐらい可能ですわ!」
ということは、普段二人で箒に乗って帰っているの?ずるい。
“今度乗りたい”
「お願いすれば誰でも乗せてくれますわ。私の場合はアマミさんと箒に乗ることにより飛ぶための勉強をするのですわ。」
『勉強熱心で何よりのお嬢様だな。それに比べて我の伯爵令嬢ときたらどうしようもないな。』
うるさい!私は伯爵令嬢であって冒険者になりたい分けじゃないから。ただ両親が魔人になったなら戦う技術を身につけろと強引に冒険者育成学校に入れられただけだから。
「…予定…どうなった…」
「そうでしたわ。ゴンペイさんは大丈夫ですの?」
「俺か?俺なら平気だな。」
“ゴメン、無理”
「何か予定があるのか?」
「…サクラ様…エナ…この後…ダンジョン潜る…サクラ様両親…依頼…」
明日から休日だからお父様とお母様に素材採取を頼まれちゃって。ごめんね。
『お前の声は聞こえていないといつも言っているのだが。』
うるさい!貴方が私に取り付くまでは私はちゃんと喋れたのに。貴方が取り付いたのが原因で、喋れなくなるわ冒険者育成学校に入れられるわ散々なんだからね。
「ダンジョンですの?!どこのダンジョンですの!」
“詳細はまだ聞いていない”
「…だったら、私達も連れて言ってくださいまし!人数が多いに越したことはありませんわ!」
うーん、確かにそうなんだけど…お父様とお母様の依頼は鬼畜だよ。この学校の学生程度じゃ10秒持たないで死ぬと思う。
“エナ、どうする?”
「…サクラ様…両親…聞く…早く…片付く…」
「え?聞くってことはサクラ嬢のお屋敷に行くってことか?い、いいのか?俺ら平民が行っても。」
「少なくとも私は何も思いませんわ。私のお屋敷に友達がいらっしゃるとなれば大歓迎ですわ!」
「そりゃ、シャロル様だってオラクル子爵令嬢じゃないか。だけど、俺は平民だし…。」
“シャロルも言っている。平気。気にしないで”
「…行く…サクラ様…ご両親…待ってる…」
「わかりましたわ!皆様、出陣ですわ!」
ねえ、確か班決めした時、位の都合上リーダー私になった気がするんだけど。
『喋れないお前が仕切るのは難しいだろ。』
わかったわよ。魔人剣、私の精神傷つけるのやめてくれない?
在庫作成のため、次回投稿は6/28(金)を予定しています。以下のストーリーの姉妹作でありながら、原本よりも滅茶苦茶先に進んだ状態からスタートという有様。
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