007▼分冊7▼殺人に至るメカニズム◆当然にできること
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(委託サイト、一発やる会の管理地などで、有償公開)完結済み。
『小説家になろう』で毎週きりが良いところを連載形式で公開予定です。
法事事にてお休みいただいてましたので、一挙まとめて掲載進めます(20181109)
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◆◆◆場所:『数日ぶりの紫煙(私怨)渦巻く尋問(教授)部屋』……語り手:『ショートヘア』
「授業を行う教師の気持ちになったことはあるか? たしかに、『ショートヘア(お前)』の事だから、『睡眠学習』なる技術を持っているのかもしれない。だが、だからといって、授業中に頭を伏せて寝るというのは良くないことだ。授業風景が乱れ、規律が乱れ、何よりも教師の心が乱れてしまう。教師とは意外と繊細な心の持ち主で、些細な生徒の反応でも気にしてしまい、鬱病になるぐらい、それはそれは慎重に授業というものを行っているものだ。そんな心優しい方々のために、しっかり勉強しているフリだけでもしてやってくれ。彼らに自信をつけてさせて、より良い授業をしたいと思わせることは、君たち学生にとってもプラスになると思うぞ。世の中、『WIN―WIN』な関係であらねばならん」
《以上、他の先生方からのお前に対する忠告だ》と、『白眼鏡』教授(先生)は、ありがたいことを、仰った。
「まぁ、そうですけど。眠い授業は眠いんですよ。『教科書のまんま(テンプレ通り)』とかあるじゃないですか? もっと学生に分かりやすいように、興味を引くような授業をしてくれたほうがいいんですけど、そのへん、どう思いますか? 『白眼鏡(先生)』としては?」
なんとなく気になったんで聞いてみた。
このトンデモ教授は、きっと私の昔からの疑問に答えてくれそうな気がする。
「寝たい輩は寝ればいい。押し付けても仕方ない。受けたい者だけ受ければいい。【いくらでも答えを教えることはできる。だが、人は自分で見つけた答えでないと納得しない生き物だ】。――自分で気づかなければ意味がない。『畢竟、独学に勝るものなし』だ。自分で必要だと思ったことを自分でやる気持ちがなければ物事の本質は見えない」
あれ? ちょっと、意味がわかりにくい答えだ。
「えっと……、つまり、どういうことですか?」
「試験の結果が悪ければ、落第だ」
すっごく、分かりやすく答えてくれました。
……ものすごく、分かりやすいです。一瞬で理解できましたよ。長年の疑問がキレイさっぱり消えた気がしますよ。
――この人、『超現実主義』だ!
「で、でも、押し付けないって言いながら、めっちゃ課題出したじゃないですか? それって『矛盾(シリ/めつ)』ですよ?」
「あれは一般教師としての務めだ。給料をもらっている以上、私の主義に反してでも、『お前たちのために勉強を教える』という責務は果たさないとならんだろう。教授を任されるというのはそういうものだ」
なるほど。
たしかに、『給料泥棒』はダメだよね。
――あれ? でも、今の話し方だと、義務がなければ『お前らなんかの授業しねぇよ』ってニュアンスに感じたんだけど……。
「さて、教師としての責務は果たした。本題に入ろう」
「えっ、今の話が、今回、呼び出された本題だったんじゃなかったんですか?」
「今のは、他先生方から頼まれたことだ。『熱弁家』に直接言うと、討論が始まって収集がつかんと言われてな」
《学生の戯言に振り回されるとは情けないことだ》と、『白眼鏡』教授(先生)は呆れ気味です。
なんか、バカにされてるのか、褒められているのか複雑な気分だ。
「さて、話に戻ろう。お前の『得意分野』について聞きたいことがある」
えっ、そんなもんあったっけ?
「世界に対する不満を爆発させろってことですか? 矛盾を、『壊して解体して並べて揃えて晒してやれ』ってことですか?」
《お前はどこの『戯言遣い(いーたん)』だ》と、『白眼鏡』先生が『戯言シリーズ』を知ってるようです。
えぇ、私も大ファンです。
『シリ/めつだよね』ってセリフは、その『戯言です』っていうは内緒です。
「お前の戯言は、ママゴトだ。そんな他人の『猿真似』よりも、得意な領域があるじゃないか。――そう、『都市伝説』という領域があるだろう?」
《噂じゃなくって、ウワサだがな》と、『白眼鏡』が、なんか皮肉げに言ってくれます。
「……いや、でも、ただの趣味ですよ? 先生がタバコを吸うぐらいの趣味です。そんな専門だなんて――」
「ほぅ、『煙草ぐらい』か。これは、とんでもない勘違いをしていたらしい。――これは私が生きる上で、必要な命の糧だ。むしろ、命がけだ」
《お前がそんなつもりだったとは》と、『白眼鏡』は、尊大に言いました。
いや、タバコって、そんな命を張るようなもんじゃ……。
――まぁ、健康への悪さは、『一本で五分』の命を削るようなものだけど。
「で、ウワサって何を話せばいいんですか? 最近じゃ、『連続バラバラ殺人事件』が、『流行』ですけど」
「あぁ、それで頼む。最初に事件が起きてから、かなりの日数が経過しているからな。是非、その進展具合を聞いておきたい。お前が知ってる『都市伝説』を話してくれないか?」
《それで今回は不問だ》と、『白眼鏡』は、『司法取引』を出してきました。
私の居眠りの罰って、そんなのでいいんだろうか? ――まぁ、願ってもないことだけど。むしろ、ありがたいぜ!
「そうですね。最近聞いたウワサだと、どこかのラブホであった『バラバラ殺人事件』。他には、隣の岡山のある公園の車の中から『解体死体』が見つかったり、大阪の道頓堀のあたりで、『猟奇現場』があったり、広島の『原爆ドーム』あたりとか、山口、広島、神戸、大阪、大阪、奈良、奈良、京都、大阪、神戸、岡山、広島、香川、高知、北海道、東京で犬が手を咥えてたとか、千葉、滋賀、佐賀、神奈川、東京、秋田、新潟、札幌、沖縄でツチノコ見つけたと思ったら人の脚だったとか、静岡、名古屋とかのいろんなところで似た猟奇殺人事件が起きてますよ。大体、『一日一殺』以上のペースで、全国的に【都市伝説】が展開中です。まぁ、捏造とか模倣かもしれないですけど、三十以上は逝ってるんじゃないかな」
《なるほど、続けてくれ》と、『白眼鏡』が、『全部話せ』と、『人を殺したことあるような眼』で見てきてくれます。
……まぁ、話します。
話しますよ。これは、私に分がありまくる『司法取引』だし。
――下手に拒否ったら、課題の山とか出そうだし。
「他ですか。他といえば……。そういえば、変なんですよね。この殺人事件のウワサで、大体共通してることは、全部が全部、顔の皮だけはキレイに剥がされて、その辺に、鋭利な骨片で突き刺されているっていう異様さです。事件の中には、無傷の心臓が転がってて脈打ってたりとかいう踊り食いみたいな状況とかも。だけど、服とか靴とかの持ち物とか、身体は、シュレッダー使ったように、細切れのバラバラだったり、潰したようにぐちゃぐちゃだったり、燃やされてたりしてるとか。まるで、何かの黒魔術でもやってるんじゃないかって、オカルトな連中が騒いでたりしちゃいます。《『ノストラダムス(世界滅亡)の大予言』はこの事件を予言してたんだ!》とか、この前テレビでやってましたよ」
《なるほど、車について何か聞いてないか?》と、『白眼鏡』が質問してきた。
「――えぇ、車ですか。車、車、車といえば……。あぁ、そういえば、アレです、被害者はみんな車持ってるらしいんだけど、ヘンなんですよ。殺された人と、車の所有者が一致しないとか。まぁ、免許証とか、それらしい身分証明書は全部バラバラなんで、顔の雰囲気で見ただけらしいですけど。――あれ? でも、地方によっては、車なしってのもあったような……。まぁ、イマイチわからないって言えばそうかもしれません。……あっ! それと、アレです。被害者だったミンチからは、お金が見つからなかったそうですよ。一銭もなかったそうです。これは全部が全部に当てはまりますね。『これは在日がやったんだ!』って、外国人嫌いの人たちが騒いでますね。『移民庁なんか作ったからいけないんだ!』って、日曜の朝の討論番組でやってましたよ。――とまぁ、『異常のようにシリ/めつれつ』な話ばっかです」
《ん? 『以上と異常』をかけたのか? それと『支離滅裂をカジュアル』に言ってるのか?》と、『白眼鏡』が、あえて、わざわざ、ツッコンでくれました。
――『マイブーム』で口癖なんだから、ほっといてください。
「で、こんなカンジでいいですか? あくまで私が聞いた、『女子高生と犯ろうとする』と、【解体される都市伝説】なんですけどね」
「あぁ、十分だ。とても有効な情報だ、痛み入る。私も今回の事件に関しては興味があって、独自に調べていたのだが、どうしても腑に落ちない部分があってな。お前の話で、大体補完できた」
「えっ? いやっ、私の情報っていっても、『人伝』だったり、『ネットの掲示板』とかで知ったようなモンですよ。別に確証とかは……」
《なんだ、そんなこと気にするな》と、『白眼鏡』は、不敵に笑っています。
「不確かなことを確かにするのが科学者だ。『推理・実験・結果・考察』を通して、有象無象で膨大なデータを精査し、不要なデータは切り捨て、必要なデータだけを残し、最も有力な説を導き出すのが私たちの『領分(仕事)』だよ。――だから、情報はあればあるほどありがたい。何が正しく、何が間違っているかは、情報を見比べて多面的に考えたときにようやく判断できるからな。お前の噂話は役に立つ。ウワサでなく、噂であって、都市伝説だがな」
《【歩く騒怨】も舌を巻いていたぞ》と、『白眼鏡』は楽しげに笑っています。
なんだか、めっちゃ褒められたようです。
だけど、ちょっと、私はついてけてないです。――【歩く騒怨】ってなんですか?
「それは、『やさ男』に一度話した。そっちで教えてもらうといい。お互いが持つ情報を交換し合うのは、『今まで知っていたこと』をより深く知るために有意義だからな」
なんか、先に答えが飛んできた。
この人は、『読心術』でも使えるのだろうか。
……『超感覚知覚』だったらイヤだな。
「で、話はこれで終わりですか? だったら、このヘンで帰りたいんですが……」
《あぁ、帰っていいぞ》と、『白眼鏡』教授(先生)は、プリントの束をくれました。
「……えっ? これなんですか? 私は『異端審問』にはきっちり答えて『無実』だと思いますが?」
「あぁ、今回の話はためになった。だが、それとは別件だ。そのプリントをよく見てみろ」
ずっしり重いプリントには、赤色の文字が書かれてました。
たくさん、書かれてました。
『アンタは赤ペン先生ですか!』ってぐらいに、キレイに書かれてました。
「再提出だ。題意をよく考えて、考察をしてみてくれ」
た、たしかに、別件です。
今回の呼び出しとは関係ないです。――えぇ、関係ないです。
これは、前の呼び出しのときにもらった課題であって……。
――嗚呼、やっぱり、それっぽい『サイトのコピペ』じゃダメでしたか……。
この『白眼鏡』の眼は、『伊達じゃない!』って『自己主張』された気がします。
――つうか、赤ペンで、全部の『サイトのURL』書いてあるとか、どんな『化け物(嫌がらせ)』だよ!
今日から徹夜な日々が続きそうです。
◆◆◆場所:『久方ぶりの紫煙(私怨)渦巻く奴隷労働(強制奉仕)』……語り手:『やさ男』
「――『例の連続バラバラ殺人事件』ですか? えぇ、もちろん『ショートヘア』から毎日聞かされてますよ。ホント、毎日聞かされてます。っていうか、テレビも新聞もネットもバスでも、どこでもその話題で持ちきりですよ。最初は、『ショートヘア(物好き)』ぐらいしか話してなかったのに、今じゃ、誰もが誰でも知ってる『超流行トピック』ですよ。さすがに容疑者が捕まったり、容疑者と名乗る人物が出てきたりしてますが、次から次に類似の事件が上がってきて終わりが見えない。《ダメ、一人。一緒に帰ろう》ってのが、最近の『ナンパの常套句』だったり、CMとかでも使われてて、今年の『流行語大賞』になるじゃないかって勢いですよ。もっと、放送すべきこととか、話すべきこととかあると思うのに何なんでしょうね? とまぁ、そんな程度なら知ってますよ」
《十分だ。世界の流行に敏感なのはいいことだぞ》と、『白眼鏡』教授(先生)は、ご満足みたいです。
「実にうらやましいことだ。研究職をやってるとな。どうしても世間ズレしてしまうから気をつけねばならん。お前たちの行動から解決策を見出させてもらおう」
いや、ちょっと違うんじゃないでしょうか。
うん、違うと思う。流行以前に、『常識がズレてる』と思う!
――これが、『大学教授とは変人である』って、『都市伝説』を生むんだよな。いや、現実のことだから、『実話』かもしれない。
「で、呼び出しって何ですか? 今回は特に何も思い当たることはないんですが……」
「あぁ、私的な用事で呼んだだけだ。迅速にかけつけてきてくれて助かる」
えっ、なにその職権乱用。
また体罰的で神罰的で絶対服従な気分で駆けつけた僕は、すでに調教された下僕ですか?
「まぁ、そう硬いことを言うな。私とお前の仲じゃないか。一緒に過ごした時間はそう短いわけでないだろう?」
な、なにこの人は、へ、へんな言い方を。
べ、べつにぼぼ、僕は動揺なんかしてなんか!
――つうか、その『上目遣い(うわめづかい)』は危険です。
いつも、『見ろ、人がゴミのようだ』って、上から目線の『下目遣い(しためづかい)』だった分、凶悪です。
「さて、何か楽しそうなことを考えているところ悪いが、本題に入らせてもらおう。今回、お前に聞きたかったのは、さっきお前が話した事件に対する感想だ」
「感想も何も、さっき言ったのが全てですよ? 毎日毎日マイナスな話ばっかり聞いてたら、誰でも殺したくなるし、真似したくなるもんですよ。『右に倣え(ミラー・ニューロン)』ってヤツですか? 同じ赤信号をみんなで渡るよりも、もっと個人的なオリジナリティもったり、プラスプラスな話で盛り上げたほうがいいです」
「うむ、良い意見だ。一理ある。さすが私の生徒だ。よく勉強している。――では、ちょっと話題が変わるが、お前自身の『独自性』である、その眼で見た場合はどう感じた? その【殺人視考】で見た感想を教えてくれないか? 特にバラバラ殺人の『類似性』について頼む。お前なら出来るはずだ」
実にイヤな響きです。
あんまり好きじゃない、僕の『性癖』らしいです。――つうか、嫌過ぎ。
一度、こちらに話させてから、こちらが答えた意見を褒めながら、肯定しながら、話しにくい話題を話させるって、『誘導尋問』使ってきてるとか。――まぁ、立場上、話すしかないんだけど。
「そうですね。あくまで『勘』ですが、僕が見たカンジだと、微妙に違うんじゃないかと。同じ『解体』でもその雰囲気がなんか違う気がします。変な例えですが、同じ楽器を使っても全然違う音色になるように、『死体のバラバラ具合』が違います」
《なるほど、良い考察だ》と、『白眼鏡』教授(先生)は、満足げに、たくさんの写真を見せてくれます。
その数は、わかりません。――つうか、追加で、三冊のアルバム持ってくるってどうよ?
「――私なりに精査してみた殺人現場の写真だ。これについては何が視える? 特に類似性について教えてくれ」
《ちょっと、待ってくださいね》と、僕は、凄惨な解体写真を見る。
イッパイありすぎて、『これで、ジグソーパズルしたら、人ができるんじゃね?』って思うほど。
――何度見ても、気分の悪くなりそうな、『肉バイキング』の群れ。だけど、汚さが段違い。だって、内臓に詰まってた汚物が混じってるってのは、かなりのエグさがあるよな?
《……》、《……》と僕たちが沈黙する静寂の中、写真の捲られる音だけが響く。その間、『白眼鏡』は僕を全く急がせようとはしない。時間があり余ってるかもしれないし、特に気にしてないだけかもしれない。いや、もしかすると僕の仕草を観察しているのかもしれない。――まぁ、僕には、人の気持ちなんて分からないけど。
「――えぇ、一通り見終わりました。だけど、一部、雰囲気が違うモノが混ざっていたので、分けさせてもらいました。余計なコトだったら悪いことをしたと思いますが……」
「いや、構わない。むしろ、そのほうが好都合だ。『題意』というのをよく見抜いている。つまり、私が聞きたいことが、何かわかるな?」
これは試験ってヤツなのか? それとも実験か?
よく分からないけど、僕と『ショートヘア』はなんかの訓練か実験対象にされているのかもしれない……。
まぁ、これはあくまで憶測であって、邪推なので、思ったことを答えるだけだ。
「最初に起きた『バラバラ殺人事件の写真』と比べると、手際が『ぬるい』です。テレビで捕まった容疑者を見ましたが、どれも『最初の事件』とは違った雰囲気を感じました。どういったらいいか、わかりませんが、『ぬるい』って気がします」
「どのように『ぬるい』のだ? 傷口の切断面や、バラされた物品の横断面に関して答えてくれないか?」
《そうですね……》と、僕は再度、写真と、『にらめっこ』しながら考える。
「うーん。なんて言えばいいんでしょうね。――とにかく綺麗なんですよ。例の『直視の魔眼』ってワケじゃないですが、切断面が綺麗です。なんというか、繊維に沿って、流れに沿って、間接や骨や肉の一番弱いところを刃物がすり抜けているような傷です。切り口の周りがほとんど潰れてない。この写真の解像度じゃ、なんとなくしかわかりませんが、細胞が死んだことも気づかずに、細胞間隙を分かたれたってカンジですね。まるで、手慣れた解剖を行ったような、『ブラックジャック』がやるような完璧な手術をやったような……。特に、冥王台や病院で起こったっていう『最初のバラバラ殺人事件』では、それが顕著です。他にも似たような事件もあって、一度、臓器を綺麗なまま取り出してから、体外で切り刻んだようなカンジです。さっき除外した写真は今言った二種類とは違って、『力技で叩っ切った』ような気がしますね。あっ、やっぱり切り口が歪んでたり、骨が無理やり折られてたりするんでおかしいですね。こんなところでしょうか? あくまで素人考えの勘ですけど」
《……》と《白眼鏡》教授(先生)は、僕を見ています。
その眼は、人を殺したことのあるような、とてもとても怖い眼です。
――まるで、神話に出てくる、『恐ろしいもの(ゴーゴン)』とか『蛇女』の『石化の魔眼』な気がします。
ぶっちゃげ、身体が動かん! 『眼で殺す』というのは、こういうことを言うのか……。
「――脅威だな」
「な、何が脅威なんでつか!」
俺はアンタのほうが怖いっての!
ちょっ、恐すぎて、声が上擦りすぎて、噛んじまったじゃねぇか。いきなり、そんな真剣な声を聞いて、死ぬかと思った。
アンタの存在は『マンドラゴラ(断末魔)の悲鳴』よりタチが悪いって気づいてくれ! ――マジで自覚してくれ!
とりあえず、気を取り直そう。
「――何が脅威なんですか? そりゃ、こんな綺麗な解体をすりゃ驚異ですけど……」
「あぁ、それも驚異だ。こんな手腕は滅多に拝めるもんじゃない。――だが、それ以上のことに気づかないのか? それともお前は気づいてないのか?」
《いや、気づかないフリをしているだけなのか?》と、『白眼鏡』は、あの眼で、僕を視てくる。
「お前の存在が、脅威だよ」
そう告げられた。
ただ、告げてきた。
淡々と、冷静だが恫喝混じりの声で、実験動物に話すように告げてくる。
「私はお前の【殺人視考(病状)】を過小評価していたようだ。――お前の眼は一体何を視ているというんだ?」
問われた。聞かれた。
――だけど、何も答えない。何も答えられない。
俺の眼は別に何も見てなんかいない。何も見えてなんかいない。
ただ、『フツー』に視てるだけだ。ただ、『フツー』に世界を視ているだけだ。
――だって、俺はただの『甲斐性なし(やさ男)』なんだぜ。
『フツー』に視るしかできるわけないじゃねぇか――。
Presented by 一発やる会
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