005▼分冊5▼殺人に至るメカニズム◆『妹』の定義とは?
人間は決して一人では生きられない。
――『人』と『人間』は違う生き物なのだから。
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(委託サイト、一発やる会の管理地などで、有償公開)完結済み。
『小説家になろう』で毎週きりが良いところを連載形式で公開予定です。
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◆補足
けもみみシリーズと世界観がリンクしています。
前なのか、後なのか、今なのか。
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◆◆◆場所:『一人ぽっちの戦争(見学)で』……語り手:『セミロング』
「すっごい本の数だね。私がいた学校とは、大違いだよ。国語に算数に理科、社会。それに英語で書かれた本もある。古い本独特のニオイが立ち込めてて、『年季の違い』ってのを思い知らされた気分だょ」
制服姿のセミロングのコが、スカートに吊り下げた黒皮っぽい『シザーバック』を揺らしながら、興味津々な様子で、本を物色してる。――それは、『監視カメラ』に映る私の姿みたいだけど。
ここが、大学の図書館らしい。
勉強机みたいに区切られた机や、持ち出し禁止の監視とか、『パソコン』による貸し出し管理とか、ハイテクってヤツなのかもしれなぃ。
知ったタイトルがあるか、探してみたけど、専門用語ばっかりで、イマイチよくわからなぃものばっかりが見つかった。
しばらく探してたら、パソコンで検索できることがわかったので、調べてみると、『ハリーポッター』とかもあるらしい。だけど、難しい英語だったんで、さっぱりわかんなかった。
「さすが、大学だけあって、みんな勉強して、スゴいなぁ。私もそのうちこういうところに来るのかな」
小さく呟いてみた。
自分の声を耳で聞いて、すぐに、その呟きに対して、疑問が浮かぶ。
――もう家に戻れない私が、学校に行くことなんて、できるんだろうか?
みんなと同じように、フツーの生活ができるんだろうか。
「それに、私には、もう居場所なんて――」
今度は、呟けなかった。
今度は、自分の耳で、聞けなかった。
口は動かず、心の中で小さく呟いただけ。ただ、小さく、小さく。不安を呟いただけ。
――ふいに、『お兄ちゃん』のことを思い出す。やさしい笑顔を思い出す。
楽しかった日々のことを思い出す。『みんな』と一緒にいて楽しかったときを思い出す。
ただただ、ただただ――。
『やるんじゃなかった』って後悔が浮かんだ。
――そして、『生まれてこなければよかったのに』という願い。
「ううん、ダメだよね。こんな弱気になってちゃダメだよね」
《いかん、いかん》と、私が『ショートヘア(お姉ちゃん)』の真似をして、元気を出してみる。
よしよし、やればできる。私はできるコだ。やれたからこそ、私はここにいるんだょ。
「――『やさ男(お兄ちゃん)』たちを待とう。そして、みんなで、楽しもう。そうしよう」
そう思った。
そう誓った。
そうしたかった、私の目に飛び込んだ。――それは、新聞の群れ。
普通の新聞や『スポーツ新聞』や『インチキ(ゴシップ)紙』なんて関係なしに、新聞たちが、見せつけた。
「これって……」
例の『バラバラ殺人』事件。
この街であった凶行。病院であった惨殺。冥王台であった一家強殺。被害者の名前と数。犯人が逃走中のこと。犯行の動機の推察と、被害者を知る人たちの悲痛なコメントの数々――。
新聞たちが、それらの情報を『でかでか』とした『見出し』と『色文字』で、私に訴えかけてきた。
「いやだょ、こんなの……」
聞きたくない話。
見たくない話。思い出したくない話。
――だけど、いくら耳を塞いでも。
――いくら、目を塞いでも。
――心を閉ざしても。
「――ぅ……うぅ」
身体が震える。怖い。怖い。怖い。怖いッ――。
この話を思い出すだけで、身体が震えて、おかしくなりそぅ。
『ショートヘア(お姉ちゃん)』と一緒に話してるときは、別に何でもなかったのに。
――独りでいると、独りで考えると、おかしくなる。
一緒にいて欲しい。誰かが私の側にいて欲しい――。
「だけど、ここも私の居場所じゃなぃよね」
うん。
そうだ。そうだょ。ここにいたら、ダメだ。ダメだょ。
すっごく、嬉しいけど、ここは、私の場所じゃない。
「……だって、あの二人は、あんなに楽しそうなんだから」
そう。だから。
あんなに優しくしてもらったからこそ、私は、ここにいちゃいけない。
「迷惑かけちゃいけないんだよね――」
声は出ない。
その代わり、私の息遣いが、震えてるのを感じた。
――私は、やっぱり、死んだほうが、よかったのかもしれない。
気づけば、本のニオイが、しなくなっていた――。
◆◆◆場所:『二人でお姫様を迎えに図書館(戦場)へ』……語り手:『やさ男』
「そうだ、死んでしまえ! てめぇらなんていらねぇよ! 死んでも誰も困らないっての。人の迷惑考えずにやりたい放題、好き勝手なことしやがって、てめぇらが好き勝手にやる『自由』を主張するなら、私は『公共の福祉』を主張するね。『日本国憲法』の『法の下の平等』を履き違えてんじゃねぇよ。『自由主義』と『自己中主義』を混同してんじゃねぇっ!」
『ショートヘア(閣下)』が、『怒り心頭』で『頭から湯気』を出してます。
なんかやたらと、怒ってます。
授業が終わるなり、騒いでた『経済学部』の連中に目がけて叫び始めました。
《うぉっ、なんだこいつ。ヤバイんじゃね?》と、彼らは、『一目散に』逃げていきます。
あの、僕も逃げていいですか?
――うわっ、『ショートヘア(怒れる葡萄)』が、スゴい顔で見てきてます。
「おいおい。その辺にしとけよ。若気の至りで、悪ぶりたい連中なんだ。傍から見てたら、『どっちがバカか、わかんねぇ』ぜ?」
「――まぁ、そうだけど。私にも言ってやりたいときはあるんだよ。今日は、『セミロング(我が妹)』に応援されたお姉ちゃんとして、一生懸命勉強をしようと思ったんだ。それなのに、あいつらと来たら、『ピーチクパーチク』、『雀のよう』に囀ってくれて、全然授業が聞こえないっての。それだけなら、まだ、ぎりぎり許してやるのに。集団で出たり入ったり、出たり入ったりするのは、我慢できん。――つうか、お前らトイレ近すぎだろ。一人でトイレいけないなんて、どこの『幼稚園児』だよ。これが、よくウワサに聞く、『注意欠陥多動性障害(ADHD)』とか『学級崩壊』とか『大学生の学力低下』ってヤツなのかね。授業がツマンネーなら、漫画読んだり、ケータイいじって、口を閉ざして、寝落ちしてろ!」
《つうか、勉強したくないヤツは、学校くんな!》と、『勉学の徒』がお怒りです。
いつも、授業中、『ただいま爆睡中』って看板を掲げてる『看板娘』は、元気です。
「まぁ、たしかに。お前の言ってることも一理あるよ。『偏差値フリー』だからか知らないけど、一般科目で、他学科と一緒に授業やるとヒドいときあるよな……」
《うんうん、その通りだ、ワトソンくん》と、『名探偵』は満足げです。
まぁ、色々あったせいで、この学校に来たわけなんで仕方ない。あんま言っても仕方ない。
「だけど、あれだ。『選り好みをしない(ボーダーがない)』ってことは、誰でも入れるようなもんだから、金には困ってないよな、この大学。金にモノを言わせて、新校舎とか、最新鋭の研究設備とか、レベル高い教授とか囲ってるし。なんだろな、この『私立企業(大学)』ってのは」
「そうそう。ウワサじゃ、『生命工学部』の『ダイオキシンの研究やってる教授(先生)』とかなんて、『国と自分のポケットマネーで、研究施設を建てちゃった』みたいだよ。他にも、『カビや酵母を使ったバイオエタノール精製』とか、『活性酸素の存在を最初に見つけた人』とか聞くね」
「ついでに、ウチの学科にゃ、【殺人容認主義者(白眼鏡)】なんて化け物もいるしな……」
「……たしかに。あの人の考えることは、わかんないね。なんで、この学校にいるんだろう? この前、呼び出されたときに聞いときゃよかったな」
「あぁ、そういえば、お前も呼び出されてたらしいな。なんか協力するように言われなかったか?」
「ん? 別にいつも通り、『都市伝説』を話してりゃいいってさ。で、時々、『白眼鏡』にも話すようにって。それがどうかしたの?」
「いや、別になんでもない」
あれ? 僕が言われたことと、ほとんど変わらない。
僕らがいつも通りに過ごすと、何が『白眼鏡(彼女)』の研究を助けるんだろうか?
これも、『謎解き(ミステリー)』ってヤツなのかね。
「――さてと、そんなことより、『我が妹』を迎えに行こうよ。むしゃくしゃした後だし、カラオケとかで、ちょっと『叫びたい(シャウト)』かも」
いや、それは困る。
お前の歌は下手じゃないし、むしろ、上手いほうだけど、困る。
だって、『マイクなしでマイク以上の声出してる』のって、スゴくね? この前、『ロングヘア』も一緒に行ったときなんて、隣の部屋の客からスゴい目で見られたし。それも、ドア越しで、ガン飛ばされて。
「どうしたの?」
《さっさとしないと置いてくよ》と、『歌姫』が急かしてくれます。
「あぁ、別になんでもねぇよ」
言えるはずがないです。
もし、歌のでかさを指摘したら、えらいことになりそうです。
――具体的に言えば、『防音設備』のしょぼさについて、抗議演説が始まりそうですし。
「おいおい、待てって。お前、なんか、はしゃぎ過ぎだっての!」
僕は彼女を追いかけた。
図書館の階段を追いかけた。
そして、図書館に着いて知ったんだ。
――そこのどこにも『セミロング(彼女)』は、いなかった。
まぁ、『家出少女』だし、家が恋しくなったのかもしれないと、僕は結論を出す。
――それにしても、『一人っ子』が、とても残念そうだった。
◆◆◆場所:『夕暮れの既視感の中で』……語り手:『セミロング』
「……これからどうしよぅ。なんとなく学校の『無料巡回バス』で、ここまで来ちゃったけど……。お金がないの忘れてた。あぁ、もう、どうしよう。『後悔先に立たず』だょ、こんなことなら――」
《やっぱり、図書館に残ったほうが、よかったのかな》と、肩を縮ませながらに、膝の上に、『黒色のヒップバッグ』を大事そうに載せているセミロング姿の女のコが、駅の階段付近の花壇の段差に座ってる。
と言っても、それは、『帰宅帰りを狙うタクシー』の窓に映った私だったりするんだけど……。
――日が暮れる中、学生や同い年の制服のコたちが出会っては、どこかへ消えていく。
「あれ? この光景って前にもなかったっけ……。『既視感』っていうのかな。それとも、私が学習能力がないだけなのかな……」
もちろん、誰も答えてくれない。
人がいる。
一人じゃない。周りに人はいる。
――だけど、誰も私を知らないし、関心がない。私は、結局、独りぽっち。
「『やさ男(お兄ちゃん)』たち心配しているかな?」
そんなはずないよね。
そんなはずない。昨日まで、私は二人とは他人だったんだもん。
『一緒にご飯食べにいこう』っていうのは、『社交辞令』ってヤツだよね。楽しそうな二人の場所に、勝手に入ってったらダメだよね。私がいたら迷惑だよ。きっと、迷惑に違いない。
……違いないよね。
「でも、『ショートヘア(お姉ちゃん)』が、私のために怒ってくれたのは……」
嬉しかった。
本気で怒ってた。
ほとんど他人で、家に帰れない、こんな私なんかのために、怒ってくれてた……。
そんな人って、普通いないょ すごく、ありがたぃ。ありがたすぎる。
――それに『やさ男(お兄ちゃん)』は、私なんかを泊めてくれた。口は悪かったけど、やさしかった。
すっごく二人は『いい人』だった。これ以上ないぐらいに『いい人』過ぎる。
「――だから、そんな二人に迷惑かけちゃダメだょ」
だから、図書館を飛び出した。
どこにも行くあてなんてないけど、どうしたらいいかわからないけど。わからないけど。
なんだか、声が上擦ってきたけど……。
ホントにわからない。
――わからない、なんで、こんなことになってるかわからない。わからなさ過ぎて、図書館で考えてたことが、頭の中をぐるぐる回りだす。いろんなことを思い出す。身体が震える。
また、いろんなことを考えてしまう。これじゃ、だめだ、だめだ、ダメだよ――。
「ねぇ、キミ、何やってるの?」
突然、声がした。
知らない声だ。私は、俯き気味のまま、目だけを上げる。
そしたら、高級そうな黒塗りの車の窓から、フレンドリーなオジサンが声をかけてきてた。
「もしかして、ナンパ待ち? よかったらオレとご飯食べに行かない?」
「……」
ナンパって、こんな会話ばっかなのかな。二度目だけど、よくわからない……。
ほんと、よくわからない。どうしたいいのか、さっぱりわからない。あと、何回わからないって言えばいいか、わからないぐらいに、わからない。
ぐるぐるぐるぐる回る。
ぶるぶるぶる身体が震える、震えて――。
「――独りでいたくないの」
それは、自分の声だったらしい。
言った後で、気づいたぐらいに無自覚な声。――心の本音だったのかもしれない。
「ホント! そりゃ、よかった。君みたいなカワイイ子だったら大歓迎に決まってる」
オジサンはそういうと、私を車に乗せてくれた。
その後、ちょっと走ってから、『ファミレス』で、ご飯を食べさせてくれた。
食べながら、オジサンは、《この前のヤマでケガしちまって》とか、《オレはそいつに言ってやったんだ》とか、《オレの胸のバッチは、組の階級を示すモンでだな。オレはかなり偉いんだぞ》とか、そんなことばっか喋ってた。
きっと、自分のことを人に話したい人なのかもしれない。
他には、サービスの悪い店員に舌打ちしてたりもして、なんだか厳しい人かもしれない。
――話についてけないので、ついつい黙ってしまう。
なんだか、会話しているようでも、ただ一方的にテレビを見せられているような気分になってしまう。
「ねぇ、『ファッション』とか興味ない? 可愛い格好とかしてみなよ」
私が退屈そうにしてると思ったのか、喜ばせようと思ってくれたのかな?
今度は、服をたくさん売っている店に連れて行ってくれた。
よくわからなかったけど、オジサンが服を選んでくれた。
鏡に映るセミロングのコは、テレビに出てそうなぐらいに美人だった。まるで、自分じゃないみたいに美人だった。
――そう、自分じゃないみたいに。
「なぁ、キミのことをもっと、聞かせてくれないか? 何か困ってるんだろ? 力になるよ」
オジサンが煙草を吸いながら、私に聞いてくる。
今までと違って、断然優しい口調で、私のことを見てくる。このおじさんは出会ってから初めて、私のことを見てくれたような気がした。最初は、ちょっと警戒しちゃったけど、実はいい人なのかもしれない。
一緒にあちこち回ってたら、そんな気分になってきた。
――もしかすると、この人は、私の居場所になってくれるかもしれない。
でも、迷惑かけちゃいけないよね? たとえ、『やさ男(お兄ちゃん)』たちみたいに、やさしくしてくれる人がいたとしても、私と一緒にいるのは迷惑だよね。何度言ったかわからない。自分の中で何度考えたかわからない『堂々巡り(報われない)』の『賽の河原(地獄)』の『石積み状態(後悔)』。
私は、もう黙るしかない。
だって、どう答えたらいいかわからないんだもん……。
「――そうだね。言いにくいこともあるよな。一晩かけてゆっくり聞くよ」
オジサンが優しく言うと、やたらと光る看板が多い通りに連れてってくれた。
その中のオシャレな見た目のお店につくと、《はい、喜んで》と、スーツの店員さんが、オジサンから車の鍵を受け取りながら、私たちを案内してくれた。
――そして、今、私は、ベッドの上に座ってる。
『壁は全部鏡です』ってカンジの部屋の『大きくて豪華なベッド』の上に、『バスタオル姿』のセミロングのコが、『ちょこん』と座って、『黒皮のシザーバック』を大事そうに抱いている。
合わせ鏡で、無限に映った私が、ベッドの上に、捨てられた子犬のように座ってる。
《二人きりで、ゆっくり話そう。ちょっと待ってね》と、オジサンは、とても嬉しそうに、お風呂に消えていった。
「これからどうなっちゃうんだろぅ……」
部屋の中にあるモノは、初めてばかり。部屋自体が初めてばかり。
ここが何をする場所かもイマイチわからない。
――ただ、不安でいっぱいということだけがわかる。独りでいるのがたまらなく、ツラい。
早く、オジサンに帰ってきてもらいたい。そばにいて欲しい。
そうしないと、おかしくなっちゃいそうだ――。
「お待たせ、お待たせ。待たせてゴメンね?」
「ううん、大丈夫だょ……」
オジサンが、バスタオル姿で、私の隣に座る。
やたらと近くに、肌と肌が触れるぐらい近くに。思わず、『ビクッ』と身体がはねてしまう。
「恐がらなくてもいいよ。オジサンがやさしくしてあげるから」
「えっ? 私の話を聞いてくれるんじゃ……」
「あぁ、終わった後にじっくり話を聞いてやるから。大丈夫、オジサンに任せて」
終わった後? これから何があるの?
オジサンが私に何かするの? 一体何を? ……イヤだ、よくわからなぃ。
――疑問が私の思考についてこなぃ。
《近寄らないで》と、私は腕の中の『お兄ちゃん』のお下がりで大事にしてる『黒いシザーバック』を抱きしめながら、後ずさる。
「ほら、そんなに怯えないでくれよ、すぐ終わるから」
「な、何をするの? よくわかんないょ」
私が必死で訴えるが、『ごつん』という、背中を鏡の壁にぶつけた音で、かき消されてしまう。
鏡に映る私の顔は、怯えてるというレベルじゃない。なんだか、とてつもない恐怖で、今にも泣き出しそうなぐらいに可哀想な顔で。
「何言ってんだ? 最初からそのつもりで車に乗ったんだろ?」
そんなつもりって何? 言ってる意味がさっぱり、わからない。
「きゃっ!」
肩を掴まれた。
激しく倒されて、ベッドに固定された。
「イヤ、イヤっ!」
オジサンが、強引に私の身体を触ってくる。
「痛い、やめて、痛いょ!」
わからない、わからない、わからない。
何がなんだか、なんでこんなことになってるか、わからない、わからない。
いやだ、いやだ。わかないわからないわからない。――いや、わかった。
――『既視感』かもしれないし、私が学習能力がないだけかもしれない。
だけど、この眼は、この私を見ている眼は見たことがある。
……この光景は、この状況は、それに、この眼は見たことがある。
私を見ているようで、私を見ていない。私の身体しか見てない、私の心を見ていない。私自身を見ずに、私とは別の何かを見ている眼が。
私なんていてもいなくても関係なく、ただただ私のことなんて考えずに、自分のことしか見ていない眼で、気色の悪いアイツらの眼で。
――アイツらだ。アイツらと同じように私を見てる、コイツは、この男は、私を。ただの肉片が、この肉が、この私を、私を、その眼で、気味の悪い眼で、私を。アイツらと同じ肉片が、肉のカタマリが、私を、脂ぎった脂肪が、私を。私の身体を、私の胸を、肉のカタマリが触れる這い回る。あの眼で、あの眼で見ながら、私を。私を、私を、私を――。壊そうと私を侵そうと、あの眼で見ながら。
なぜか、肉片が何に使うのかわからないカミソリを、私に向けて――。
突然、《ジー》という音が聞こえた。脂の乗った肉が、いつの間にか仕掛けていた『ビデオカメラ』が回ってた。
――だけど、気づけば、その音はもう聞こえない
それに、何も聞こえないし、見えないし、考えられない――。
それは、全てを否定するための『思考停止』のようで。
なんでこうなっているかわからないまま、意識が落ちた。
――もう、なにも、わからない。
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Presented by 一発やる会
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