013『数日後のランチタイムに惚気(のろけ)話』
◆◆◆場所:『数日後のランチタイムに惚気話』……語り手:『やさ男』
「可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ、可愛いよ。大事なことなんで十回言いました。あの可愛さは反則です。あれが世に聞く『妹萌え』というヤツなんだね! 『ロングヘア(百合)姉妹』の『シスコン(ラブラブ)』っぷりを見てて、『えぇ、ちょっとそれは!』って思ったときもあったけど、ゴメン、私が間違ってた。『妹キャラ』は最高だ! 『近親相姦』的に性欲をかき乱されるんじゃなくって、『武士道』とか『騎士道』的に『守りたい』って、保護欲がかき乱されるね。まるで、『か弱きお姫様を守る騎士』になった気分だよ。人は守るものがあってこそ強くなれるものであって、仁義なき正義なき義理なき戦いに意味はないのだ。『人は誰かのために生きている』と感じたときこそ、『本当に生きている』のであって、そんな『自分に萌えている』んだ! 今の私には、世界の真理が見える。『生きているってそれだけで素晴らしい』ことなんだ!」
《あぁ、今度はどこ行こうかなー。どの服でも似合いそうだなー》と、『ショートヘア(バカ)』がますます、バカです。
えぇ、すっごくバカに拍車がかかってます。まるで、『飼いたかったペット(犬や猫)』を『初めて飼う』ような『親バカ』になってます。――悪いことじゃない分、ツッコミにくくてタチが悪いです。
戦争とは、『水戸黄門』のような『勧善懲悪(正しきものは救われる)』でなく、『正論と正論が戦う』ものであって、『悪なき戦いほど残すものは虚しい』という真理に行き着きました。
まぁ、とりあえず、アレです。この『ショートヘア(姉バカ)』を現実世界に連れ戻さないと。
「おい、『ショートヘア(バカ)』。『電脳(萌え)世界』に潜ってるのはいいけど、そろそろ戻ってこい。そうしないと、『白眼鏡(攻性防壁)』に『やられちまうぞ(焼き切られるぞ)』? 特に締め切り的な意味で」
「ハッ、そうだった。なんか変な例えだったけど、悲惨さは十分伝わった。脳髄が『こんがり焼けた』実験サンプルとして並びそうだ。クソッ、こんなことなら『全身義体化』しておけばよかった! そうすりゃ高速で、『ネット検索』とかできて、課題も一瞬で終わってたに違いない! 最近、流行りまくってる『バラバラ殺人』の最新情報も一瞬で調べられるに違いない!」
ごめん、もう何がなんだかわからん。
『平和ボケ』ってレベルじゃなくなってきた。
なんか収拾つかなくなってきた。実は、僕も『妹萌え(笑い男)ウイルス』にやられているのかもしれない。――だから、さっきから『心理描写』がオカシイんだ、きっと。
「まぁ、そんなことより課題だ課題。今回の『白眼鏡』のレポートだけど、『認識レベルの齟齬について考察せよ』ってあったけど、どういう意味だ?」
マジ、題意がわからん。
なんで、今のタイミングでこんなレポートをやらせるか意味がわからん。
しかも、課題決めのとき『僕とショートヘア』を意図的にペアにしてくるとか。同程度の学力で選んだっていってたけど、それって、『僕とショートヘア』って同レベルってこと? ――つまり、『同じバカ』ってことの同類項。って、うぉっ、これって暗に俺に対してヒドいこと言ってねっ! そりゃ、あの鬼畜に比べたら誰だって、『新米兵士(坊やだからさ)』みたいな『無能力者(ド低脳)』ですけどね! なんか僕の『言語認識レベル』はさっきから混乱しまくりです。
「……なんかスゴイ勢いで目の前のバカにバカにされているような。で、題意か。……うーん。よくわかんないな。だけど、アレじゃない? 私たちなりの『認識レベルを認識しよう』って姿勢が重要なんじゃないかな? きっと、あの『白眼鏡』のことだから、『一定学力同士を集めた場合には、一定の結果を出せるのか』って実験も兼ねてそうだけど」
どっからどこまでも『実験用マウス(モルモット)』な僕たちですね、はい。
何から何まで無駄がない人です、あの軍曹。
「それにしても、お前の発想も、なかなかになってきたな」
「まぁね……。そりゃ、毎日毎日、課題提出、再提出をエンドレスしてれば、次第と見えるようになってくるもんだよ」
《ふっ、もう何回出しかなんて数えてない》と、『ショートヘア(職人)』が、自虐的な微笑みを浮かべて、遠くを見てます。
『人間とは慣れる生き物』って言われるだけあって、どんな無能も有能になるのかもしれない。
――たしかに、あの量をやってれば、頭よくなって当たり前だと思う。
「まぁ、なんとなく。勘みたいなもんだけどね」
「見えるようにねぇ……」
僕と同じコトを言う。
それこそ、僕の眼のように。
『白眼鏡』が僕に対して【殺人視考】と言うように。
『ショートヘア』にも、何かが視えてるってのか? ――前以上に。
「そそ。『レベルアップ』するってことなのかな。それこそ、『認識のレベル』が上がっちゃうってカンジで。物事をずっとやってると、『見えなかったものが、次第に見えるようになってくる』ってヤツ。つまり、『熟練度』のレベルアップ!」
《使えなかった魔法を覚えちゃうんだよ》と、『ショートヘア(ゲーム脳)』が、張り切ってます。
「いんじゃね? レベルアップしたっていうお前の演説を聞かせてくれよ」
正直、ちょっと興味があったりする。
ただのバカが、知恵をつけたらどんなに化けるのかってのは、かなり興味がある。
――まぁ、『ショートヘア』が『バカ』なのは、別の意味があったりするんだけど、『スルー推奨』ってことで。
「例えばさ、『絵を描いてみたい』ので描いてみた。けど、『うわっ、作画崩壊!』、『ちょっ、パース狂ってる』とか思って、せっかく描いたのに途中で投げ出したりしない? あれってさ。変な表現だけど、描いてるうちに『どんどんレベルアップ』してるってカンジなんじゃないかな。『眼の認識レベル』がどんどん上がっちゃって、今まで気づかなかった歪さに気づいちゃう。――だけど、『描くレベル』はそれほど上がってないから、その『レベルの不一致』でやる気なくなって『うがぁぁぁぁーーーーっ!』って投げ出しちゃうって、カンジで」
「……」
あれ、僕はショートヘアを買いかぶってた?
なんか、すっごい抽象的な説明されたんですけど。
とりあえず、もう一回チャレンジだ。
「もう少し、詳しく頼む」
「うーん、わからない? ――そうだね。分かりやすく例えるなら、『眼のレベルだけラスボス前』。でも、『描くレベルは、ゲーム最初の初心者状態』ってカンジかな。普段、全然描かないのに、テレビや漫画や映画とかの『スゴいクオリティ』で、『眼のレベル』だけ、どんどん上がって『グルメ』になっちゃう。――だけど、全然描かないんで、『描くレベル』は『貧弱貧弱ッ!』なままで。それで、二つのレベル差がどんどん拡がっていく。それなんて『レベル格差』ってヤツ? ――たぶん、そんなカンジだよ」
「……」
なんだろう。言いたいことはわかる。
たぶん、大体こんなカンジかなってことは伝わってくるんだけど……。
――なんか腑に落ちないところがある。
「うーん。まだ上手く伝わってないか。どっか変だなー。どっかおかしいなー。あっ、これって別に『絵を描く』ってことだけじゃなくって、他にもいろんなことに言えると思うんだよね。――例えばさ、音楽聴き慣れてくると、『イントロ』聞いただけで、曲名分かったしない? さらに進むと、『音割れ』が分かったり、高音と低音のバランスの不具合が気になるようになったりとかさ。『物書き』だったら、文章の構成と文体とかセリフの詳細が見えてきて、行き過ぎちゃうと、『見るモノ全てが文章表現』に見えてくるってカンジ。ほら、ぶっちゃげ『弾幕シューティング』やってると、なんか弾の『避けるルート』が視えてくるみたいな。それなんて『弾幕中毒』ってカンジだけどね。医療現場なんかじゃ、お医者さんが舌見るだけで、なんの病気か当てちゃったりとかとか。――やればやるほど、気にすれば気にするほど、どんどん感覚が鋭くなっちゃって、今まで気づかなかったことに気づいちゃう。見えなかったものが視えるようになってくる。――そして、その度に、『感じるレベル』と『実際にできるレベル』の格差を感じちゃう。この格差がスゴいと、それを乗り越えようって職人になったり、変なコトが分かりすぎて、おかしくなっちゃうんじゃないかなー。――だから、きっと。そういった人たちって、私たちが見てる世界とは全然別のモノが視えてるんだと思うよ。逆に言えば、認識レベルが低くいのに、身体的レベルが行き過ぎちゃうと、本人の意図に反して、力加減ができなくて、モノを壊しちゃったりとか、『うわっ、卵の殻割りすぎた!』とか、『ボール蹴りすぎた!』とかとか。そんなカンジかな」
《あれかな? うーん、それともこれかな》と、『ショートヘア』は自分の疑問を何かに例えて説明してくる。
「まぁ、なんとなくわかった。『よくわからないけど、よくわかった』ってヤツだ」
ああ、ようやくわかった。
僕が今回、感じてた違和感ってのは、『ショートヘア』の『説明力不足』が原因だ。なんつーか『語彙不足』というか、どっかのジャンルに偏っているっていうか。――今回はいつものような演説のキレは感じなかった。だけど、『物事の矛盾に気づく力』ってのには、相変わらずの才能を感じる。
前々から思ってたんだが、『ショートヘア(バカ)』なのは、『おかしなところがあるから納得できない』、『納得できないからわからない』って思考パターンだからじゃないのか? 『フツー』の人だと、常識や慣習に流されて気づかないことも、それこそ『無知の知』で、『あーでもない、こーでもない』ってやってるから変な論理を見つけてしまい、反対演説をしてしまう。
そして、『ソクラテスの弁論術』のように、『これはなんだ、それはなんだ?』ってやってるから、質問されたヤツが根を上げてしまい、『もう、バカは質問するな』って状況になってるんじゃないか?
――これじゃどっちがバカなんだろうか。
こんなバカなぐらいに考え込んでしまう、『性癖』を持つから、『噂や都市伝説』ってのに詳しくなってしまうんじゃないか? 『全てに対して、何故だろう?』って問い続けてるから――。
だから、『白眼鏡』は、『ショートヘア』のことを、【矛盾感知】って呼んだのかもしれない。
となると、僕の【殺人視考】ってのは……。
「――ねぇ、今のようなカンジで、レポートまとめない? さっさと終わらせて、『セミロング』と遊びに行こうよ」
思考を停止された。
何かがわかりそうになってのを、無理やり現実に引き戻された。
――まぁ、自分のあの『性癖』については、あまり考えたくないので、願ってもないけど。
「あぁ、そうだな。さっさとケリつけようぜ。だけど、その前に一つだけ引っかかることがあるんだ。さっきのお前の説明なんだが」
《えっ、どこが納得いかなかった?》と、『ショートヘア』が、テストの答え合わせをしようってノリで聞いてくる。
「いや、内容としてはいいんだが、使ってる語彙とか少ないし、偏った例えばっかの説明じゃなかったか? 勉強したっていうんなら、もっと専門的なことを言うと思ってたんだけどな」
「あー、それね。あれは、わざとだよ」
……マジか!
お前に、そんな芸当ができるとは、レベルアップしてるってのは本当なのかもしれない。
「何、そうだったのか。でも、なんでまた?」
「だって、そうしないと、『やさ男』が理解できなくなるじゃん。難しいことを難しく言ったり、簡単なことを難しく説明するのって、悪い説明じゃない? 『誰にでもわかるように、誰もが知っている言葉を使ってわかりやすく』伝える。それが、良い説明ってもんだと私は学んだのだ」
《だから、敢えて『やさ男』に合わせた》と、『ショートヘア』が、小学生に話すようにやさしく答えてくれました。
「って、俺は、小学生ぐらいの頭にしか見られてないのかよ!」
《いや、三つ子に教えてるつもりだよ》と、『ショートヘア(保母さん)』が、親しみを込めて言ってくれました。
激しくショックです。
めちゃくちゃショックです。
自分より頭が悪いと思ってたヤツにこんなこと言われるとは、ショックでかすぎ!
嗚呼、『人をバカにしてると、バカを見る』ってのは、このことだったのか。
――なんかスゲェ、悔しい。
こんな虚しさを感じるぐらいなら、勉強したほうがマシって気分になっちまうぐらいに悔しい。
これからは、もう少し、勉学に励もうと思います。――マジで。