011『ランチはブルジョに学生会館(快感)で』
◆◆◆場所:『ランチはブルジョに学生会館(快感)で』……語り手:『やさ男』
「というわけで、そこのカラオケボックスでバラバラ殺人が見つかったんだって。毎度のことだけど、顔を剥がされて、心臓とか腎臓とかが臓器が、綺麗に『ごろっと』と転がってたんだって。まぁ、今回はいつもとちょっと違うといえば、死体が二人分ぐらいあったみたいだけど。今更、一つ増えても二つ増えても大差ないよね。どこかの殺人犯が言ってたセリフだけど、『一人殺そうと二人殺そうと関係ない』ってヤツだっけ? 『一人殺せば人殺し』で『二人殺せば連続殺人』で『五人殺せば殺人鬼』になって『千人殺せば英雄』とか、どっかの『殺人鬼崇拝主義(殺戮マニア)』とか『中二病』な人たちが言ってたよ。でも、あれって『量刑』で考えたからかなり厳しいよね。殺せば殺すほど死刑になりやすいんだし。――あれ? だけど、一度死刑って確定するほど殺したら、死刑による抑制効果ってあんまり意味ないような気がするな。だって、『どうせ死ぬんならいっぱい殺っちゃえ☆』って、逆に犯罪を煽るような気もするし……。まぁ、こんな話もちょっと変わった『オタクなDQN』なんかは、《殺人鬼って褒めてやるなよ、ただの人殺しにそんなこと言ってやったら、図に乗るぜ?w》とか盛大に哂ってたけどね。――って、聞いてんのかよ!」
なんか、遠くのほうで『ショートヘア(バカ)』が『バカ』言ってる気がします。
うん、きっと、気のせいだ。
「……。って、痛ぇええええええええっ! 今、なんかで思いっきり殴ったろ! それも、分厚く、硬いもので延髄に、死ねと言わんばかりに、強烈に!」
「だって、人が話してるのに寝てるのが悪いんだろうが! 『人の話は相手の眼を見て聞け』って習わなかったのかよ?」
「ちょっ、お前、この前とまるっきり立場違うじゃねぇか! 俺がそれやったら、思いっきり『痴漢!』って叫んでたじゃネェか」
「愛のムチで泣く泣く教えてやらないといけないときもあるんだ。胸が張り裂けそうでも、虐待の汚名を被ってしまうことになったとしても、教えないといけない時がある。――これを『忠義』という」
どっかの『侍(サムライ?)』みたいな言葉遣いで、説明されました。
これって、『性差問題』じゃね? 『男女雇用均等法(雇用の平等)』と、『男女別々にした電車の車両(男女の区別)』ってのは違うぜ? つうか、最近、『女性差別』より、『男性差別』のほうが多くね? 特に『痴漢の冤罪』はヒド過ぎ! ネタでやられて、『人生を棒に振る』ってカワイソウな人たちを何人テレビで見てきたことか。
――とりあえず、『中庸が一番』、『孔子先生(論語)すげぇ!』って結論で終わっとく。
って、また変な哲学しちまってる! つうか、頭痛い、頭痛い。『ズキズキ』し過ぎて、こんな思考になってんだな。
――もう、痛すぎ!
昨日の夜、『例のこと』で寝れなかったから、『眠気爆発!』だったけど、もうすっかり目が覚めました。
「で、『やさ男』は見てないの? 昨日の夜って言えば、たしか『白眼鏡』に呼ばれてたって思ったけど」
「なぜ、それを知っている!」
「ん? ウワサでだよ」
……もう、無茶苦茶です。
コイツにかかれば、何でもウワサで解決してくれそうな気がするぜ。
「いや、何も見てないよ。何も見てない。フツーに徒歩で『てくてく』帰ってたよ。途中、お前に送ってもらおうかって思ったけど、ケータイの電池切れてたし」
「ん、学校の『公衆電話』使えばよかったじゃん? ほら、学校のバス乗り場にあったじゃん」
……そういえば、そんなモンあったな。
全く、忘れてたぜ! フツーに歩いちまったじゃねぇか!」
「あっ、でも無理だ。俺、お前のケータイ番号覚えてないし」
もう今時、『電話帳』が便利になりすぎて、番号覚えてませんよ。
もう『赤外線通信』でバンバン送り合うんだから、名前しか覚えてません。
「えっ、ウソ? 覚えてないの。ヒドいな。私はちゃんと友だちの番号は全部覚えてるよ! それが『盟友』ってもんだろ。なんなら言ってみようか、まず『やさ男』のは……」
《バカ、よせ、何をする!》と、『ショートヘア』が口を塞がれながらなんか言ってます。
「個人情報勝手に侵害してんじゃねぇの。それよりちょっと聞きたいんだけどな。だいぶ前に『白眼鏡』の講義であったらしい、【殺人に至るメカニズム】についてなんだが、俺出てないからよくわかんねぇんだけど。――ちょっと簡単に説明してくれない?」
《えぇ、めんどくさいなー》と、『ショートヘア』が『ヒレカツ定食』のほうが大事だって具合に食べてます。
ざっと、三百グラムのヒレカツは、『ショートヘア』の顔よりもデカかったりする。
――つうか、俺の顔よりもデカい。
まぁ、『学生会館』はちょっと割高だけど、味と量が『お値段以上』なのが売りだからその気持ちもわかるけど。
「ハフハム。以上」
「ちょっ、今なんて言った! 絶対食べてただけだろう! 俺には変な『スタンド(スキル)』とか『一を聞いて十を悟る』とかねぇっての!」
《うぅ、ノドに詰まりそうだった》と、『ショートヘア(大食らい)』がかなり真剣に呟いてます。
「まぁ、簡単に言うと、『殺人をコントロールしよう』って話だね。そのための裏づけとなる事例や条件をまとめてるみたい。うーん、口で言っても、『やさ男』にはちょっと、難しいかもしれないんで。箇条書きで表すなら、」
『人が殺す原因』……ストレス・嫌悪・排他・防衛etcの殺人動機。
『人が殺す理由』……家族的・環境的・手段的・目的的・逃避的。
『殺人動機が理性の壁を突破』……法規制や良心を超えた場合に殺る。
『殺人により既存の価値観が崩壊』……日常行動に【選択肢:殺人】が入る。
『価値観が壊れすぎて【自己内矛盾解消(シフト化)】……殺人を当然とする価値観を形成。
『【シフト化殺人犯】による殺人の常習性』……呼吸同様に自然な行動として殺人に及ぶ。
『【シフト化殺人犯】は反射的殺人を行う』……条件が揃えば、当然のように人を殺す。
「――ってカンジだね。『条件と価値観の刷り込み方法』さえ、『明文化(マニュアル化)』できれば、『人を殺しやすい世界』を作ったり、逆に、『人を殺しにくい世界』を作ったりできるってワケ」
おいおい。『空想科学大全(トンデモ理論)』じゃねぇか……。
それって、どこかの『民族社会主義』とか研究してなかったか? たしか、『いかに効率よく人を殺すか』ってのは昔から研究されてきたジャンルで、『銃社会』のように、『力を持った後にどうすれば秩序だった社会を気付けるか?』ってことに繋がって……。
――悪用されたら、『大量殺人』が起きるぜ? そんな驚きよりも、『ショートヘア』が勉強してたことのほうが驚きだけど。
「だから、【殺人容認主義者】って呼ばれてるんだな。『人を殺しても仕方ない条件を見つけ出して、それがそうなるのは当たり前だ』と科学的に理論付けるなんて、あの『白眼鏡』だからできるタマモンだぜ」
「だね。【殺人容認主義者】の正体ここに見たりってカンジだよ。こんなカンジで『バラバラ殺人』にも答えはでるのかな?」
「さぁな。それはわかんねぇよ。だけど、ウワサは、まだまだ勢いが落ちてねぇけど、そのうち終わるんじゃねぇか? 『諸行無常の響きあり』って言うし」
「そそ。『盛者必衰』の如くだよ。さて、それじゃ、ちょっと、お願い聞いてもらおうかな?」
「なんだよ、お願いって? まぁ、講義の補足してもらった借りがあるけどな」
《実に簡単なことだよ、明智君》と、『ショートヘア』がちょっとわからない物真似をしてくれました。
「じゃ、この課題手伝って!」
なんか、辞書が置かれました。
――い、いや、これ辞書じゃない!
辞書のように見えるプリントの山じゃねぇか。どこの受験生だよってぐらいの量です。
気分的には、『六法全書』を暗記してるような錯覚ががが。
「いや、『白眼鏡(ドS)』の課題、マジ終わんないんですけど」
たしかにこりゃ終わらないな。
夏休みの宿題ってレベルじゃねぇもんな。
ぶっちゃげ、これ全部解けたら、『法律学』とか『心理学』の権威になりそうなぐらい実践的なカンジがした。
「なるほど、『ショートヘア(バカ)』の頭が良くなってきたのは、『強制教育』のせいだったのか!」
「うるせぇ、バカって言うヤツがバカなんだ! ちょっとは、デリカシー持って行動しやがれ、この『甲斐性なし』ッ!」
「ふぐあっいぉっ!」
思いっきり殴られました。
えぇ、それも、分厚く、硬いもので延髄に、死ねと言わんばかりに、強烈に。
――なるほど、そのプリントの厚さがこの破壊力を生んでたってワケだな。
お前にとっては『スキンシップ』かもしれんが、マジ死ぬので勘弁してくれ……。
「――あぁ、私はバカだ。だけど、バカを舐めてはいけない。『無知の知』こそ、『全てを疑え』に通じる、『基本中の基本』であって、『秘中の秘』。私こと『シリ/めつ遣い』は、ここに大成したのだ! もう、『白眼鏡』にも負けはしない」
なんかスゴいことを、自信満々に勉強した言葉で言ってくれました。
ちょっと、僕には難しく過ぎてわかりません。
――つうか、頭痛すぎて、意識が薄れて。
これって、眠気がぶり返してきただけだよな?
脳出血の類じゃ……。
――えぇ、意識が途切れました。