現実は良くても悪くても受け止めなければならない
「早く戻ってきて?どういうことだ!?」
世紀の大発見を目の当たりにしたというのにアイツは!仕方がなく俺は駆け足でアパートに戻る。
すると、人形姫…もといメンバー三号が踊り場から出てくる。
「あら御村くん。さっきぶりね」
「ああ。さっきぶりだな、何かあったか?」
「そうね、今からさっき御村くんと会ったスーパーにお使いを頼まれたぐらいね」
「気をつけてな」
「ええ。もちろん安全第一ですとも」
彼女はバイクにまたがり颯爽と行ってしまった…
俺は部屋の玄関を開けると少し部屋が荒らされていた
「どうなっているんだ…六鹿はどこにいるんだ」
部屋中を探しても六鹿はおらずあったのは六鹿のスマホとカバンだけだった。
「エージェントの仕業か!?」
俺は部屋をあとにし六鹿がいそうな場所を駆け回った。
六鹿らしき髪型や服装の人と出会うたびに足を止めるも六鹿とは違う人ばかりに出会う。
もう、捜さなくてもいいんじゃないかと思うほどだった。
疲れきった俺は3号と会ったスーパーにたどり着いた
特に意味もなく六鹿が居るという気もせず
ただ寄っただけだったがそこに朝分かれたぶりの正俊がいた。正俊を呼ぼうとすると正俊が巨乳の金髪美女に連れられて行ってしまった…
なんだあのけしからん胸は!?
六鹿が見たら発狂だぞ…居なくて良かった本当に良かった…
その後、少し正俊一行を追うと物陰からその一行を見守る少女の姿が見えた。
それは双眼鏡を強く握りしめて歯をぎりりと鳴らす六鹿だった…正直、この見つけ方は最悪だ。
「六鹿!!探したんだぞ!」
「…」
「六鹿…?どうしたんだいつもみたいに言い返したりしないのか?」
「うるさいわよ!私はどうせ胸もないし色気も…」
六鹿に触れると六鹿の体は濡れていた。
「なんだ、その辺の水たまりにでもはまったのか?全く鈍臭いやつだな」
「違うわよ!」
泣きじゃくる六鹿をおぶろうとした時だった
六鹿に触れた手を見ると真っ赤に染まっていた。
俺は思わず六鹿から離れてしまった。
怖くなったのだ。
「なん…で?六鹿が血まみれなんだ…」
六鹿が思いっきり地面に落ちた。
「痛っ……」
もしかして…と不安な気持ちになるのを必死に押さえひとまず六鹿を近くの病院に連れて行った。
病院につくとメンバー3号と大家さんが病院にいた
2人は何か話していたが俺はそれどころではなく必死に六鹿を運び、医者達に連れていかれる六鹿を見送っていた。
大家さんが俺に気づき険しい表情で俺に話しかけた。
「御村くん!?どうしたのその服!血だらけじゃない!」
「これは俺の血じゃなくて六鹿の血なんで…」
「え?」
俺は頭を抑えた。痛みが走ったのだ。
懐中時計を触った時のような景色がが俺の頭の中をよぎる。
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大家さんと3号は顔を見合わせていた。
なにか楽しげに話していたが3号はそんな大家さんと別れた瞬間だった。六鹿が現れて3号に何か話していた。すると一瞬3号の目に涙が溢れ、六鹿が3号の胸ぐらを掴み地面に叩きつけると何かを呟き次の瞬間3号は六鹿に刺されていた…
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今のは一体…なんだったんだ!?
パニックに陥りそうな俺に手を差し伸べたのは病院に運んだはずの六鹿だった。
「六鹿…なのか?」
「何寝ぼけているの?」
「何ってお前…」
「したわよ。今どこにいるの?あと少しで御村が見たいアニメが始まるわよっていう内容を送ったら、下の大家さんがいる階から御村の声が聞こえてきて駆けつけたら何よそれ」
「何を…言っているんだ?」
「さあ?私が知りたいわよ」
「さあ?ってどういうことだ?」
俺の頭の中は色々な思考で溢れていた。
何故血だらけの六鹿が無傷で部屋にいるのか。何故俺は病院にいたはずなのに大家さんの部屋で大家さんと一緒にお茶をしているのか。
今俺の目で見ているのは夢なんじゃないか?とも思ったがそんなことは無かった。頬をつねると痛かったからだ。
「六鹿はどこか怪我していないか?」
「してないけど…」
「そうか。ならばいい」
「なんか今日の御村はいつも以上に変ね」
六鹿の言葉にツッコミを入れることもなく俺は部屋に戻り部屋の中にあるソファに腰を落とす。
机の上に目線をやると懐中時計が置いてあった。
俺が六鹿を探していた時はなかったのに何故か今、机の上に懐中時計があった。
「六鹿。懐中時計はずっと机の上にあったのか?」
「あった。アンタがこの懐中時計は普通じゃない!見てみろ!って言うから私と正俊くんと一緒に見てたんだけど──」
「正俊は大学のエンジニアの友達のところへ行ったのではないのか!?」
「エンジニアの友達?なにそれ」
俺はその瞬間、思考が止まった。
朝の出来事がなくなっているからだ。
「ならば!正俊はどこへ行ったんだ?」
「正俊くんなら普通に大学に行ったわよ。一緒に見送ったじゃない。寝ぼけてたの?」
「なん…だと!?」
俺は知らないところへ迷い込んだ気分だった。
知っているはずの出来事がなくなり俺の知らない出来事が起きている。まるで縁起説のようだ。
「今日の予定はなんだ?」
「正俊くんが帰ってくるまでは待機だから、私の買い物に付き合うんでしょ?」
「そうか…買いも…何!?買い物だと?」
「そう。急に買い物に付き合うとか言うから熱があるんじゃないかと思って体温計で測ったけど熱がなかったからびっくりしたわ」
「まあ、いい。どこまで買いに行くんだ?」
「近くのスーパーでアンタが飲むアクエリアスと正俊くんに頼まれていた工具を買いに行くのよ」
「工具?」
「そう、なんかタイムマシンの設計図がもう少しで完成するから工具を用意してって出かける前に言われたの」
「タイムマシンの設計図だと!?」
俺はさっきから騙されているのか?
正俊と六鹿がグルになって俺を騙そうと…しかし騙したところでメリットはなんだ?六鹿はメリットや自分に得がないと人を騙さないのは昔から見てきているからわかる。なら正俊はどうなんだ。正俊なら俺を騙してなにか得が…ないな。アイツは正直なショタ化学者だ。人を騙すことができるほど器用じゃない…なら一体なんのために?
「ほら買い物に行くわよ」
「ああ」
しかし、なにか引っかかる…
俺と六鹿は歩いてスーパーまで行き店内で俺は六鹿と話しながら六鹿が持っている買うものリストのものをカゴに入れていった。
そして30分足らずで部屋へと戻ってこれた。
「結構重かったわね…特に工具が…」
「ああ。こんなに重いのならメンバー3号を呼べばよかったな」
「メンバー3号?」
「忘れたのか?」
「そんな人いなかったはずだけど…」
「何を言っているんだ。大家さんの娘で──」
「大家さんに娘はいないわよ?」
「何?」
「居るのは娘じゃなくて“息子"よ?」
「何を馬鹿なことを言っているんだ…」
俺は部屋を飛び出し大家さんがいる階まで走り出した。ちょぅど大家さんが買い物から帰ってきていた。
「ハア…ハア…」
「どうしたの御村くん?そんなに息を切らして何かあった?」
「大家さんは娘がいるんですよね?」
「え?私は一人息子しかいないけど?」
俺は大家さんと別れ部屋に戻って俺が知っているはずのことと知らないことを書き出していた。
「何これ?」
「気にせず料理を作っていてくれ」
「あ…うん」
六鹿を適当に流して俺は再び書き出していく。
「何なんだこれ…俺の知っているものと知らないものがほとんど一致しない…」
一致したのは昨日までの出来事と六鹿と正俊が我がタイムマシンを造るメンバーだということだけで今日の出来事はひとつも一致しないのだ。
「どうなっているんだ…」
俺以外、違う点に気づきている人はいないと考えた。つまり、俺は違う所から来たということになる。しかし俺はタイムマシンを使ったわけでも超能力者でもない。どうやってこっちの世界に来たのかわからないのだ。
「これがパラレルワールドか…」
「厨二病がまた始まったか…」
「厨二病じゃない!だからって、妄想でもないからな!」
「御村…アンタいつから人の心を読む能力を!?」
「バカやってないで料理を作らないと焦げるぞ?」
「あ、やば!」
全く…料理はうまいのになぁ…色々残念だ。
主に頭の方が…かなり
「なあ、六鹿。今日は何日だ?」
「4月の9日?だったかな」
日付は全く同じ。だが、起きたことが俺の知っている今日と同じ点がない。
俺は机の上の懐中時計に目をやる。
俺はこの懐中時計が近くにあると頭が痛くなることしかまだ分かっていない。
六鹿を探していた時、懐中時計は机の上になかった。あったのはアイツのスマホのみ。
考えれば考えるほど謎が増えていく…
「六鹿…タイムリープって信じるか?」
「タイムリープ?」
「ああ。アニメでよくあるタイムリープだ。アイテムとか何かを境に同じ日をもういちど行うアレだ。」
「私は信じたいかな。タイムリープってロマンがあるじゃない?」
「ま、まあ。確かにできたらやり直したい放題だからな“今日"を」
「そうね。あ、その懐中時計でタイムリープできたりしたり?」
六鹿は俺がいじっている懐中時計に指をさしてみせる。
「例えば、それを握って何かしらの条件とかを満たせばタイムリープできたりしないかな?」
言えるはずがなかった…できるかもしれない可能性を…
それでも六鹿は何気にいい所に目をつけたかもしれない…
確かに俺は懐中時計に関わる事に、頭痛と体験したようなものが頭に入ってくる。
だが、それを再び見ることはなく、違う懐中時計を触るとまた違うものが視える。
「仮に俺が違う今日から来たと言ったら笑うか?」
「本当なら今日の夜はその話でもちきりね」
はは…全く笑えない冗談だ。
書き出していた紙を見てあることに気づいた。
俺がいた今日をX世界、今いるこっちの今日をy世界と仮定するとX世界で俺は懐中時計を見ていない。しかし、y世界では朝から机の上にあったと六鹿が言っていた…
ならX世界の懐中時計はどこにあったんだ?
朝の行動を振り返る。
朝から正俊が私服で大学の友達に会いに出かけ、俺は懐中時計を六鹿に見せながら…今日の夜7時にそれを正俊と六鹿に説明するつもりだった。
それから俺はスーパーに行った…何の変哲もないいつも通りの日常だ。
振り返って思い出したのは俺が懐中時計を持ってスーパーの帰りにゲーセンに行ったということ。
「考え事してるところ悪いけどご飯できたよ」
「ああ。すまない、ありがとう」
「謝るのか礼を言うのかどっちかにしなさいよ…」
六鹿の料理を食べながら懐中時計を見てみる。
ここにあった懐中時計は俺が持っていった懐中時計ではなかった。
ならばこの懐中時計はなんなのだろうか…
「考え事もいいけど冷める前に食べてよ?」
「あ、コーンスープが冷えてしまった…」
「仕方が無いなもう」
「いいのか?冷めた方で」
「暖かいもの食べてほしいしね」
「そうか…」
俺は六鹿の心遣いにありがたみを感じながら暖かいコーンスープをすする。
その瞬間、頭痛が走った。
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『…鹿。…鹿!』
男の声が何かを叫んでいる。
『…鹿!大丈夫か?」 』
その声はとても懐かしいようで少し怖い声だ。
まるでこのあとどうなるか自分が知っているみたいに…
『俺はお前がいないと何も…何も────』
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今のは!?
過去…の出来事なのか?
あの場所はスーパーが立つ前にあった公園だった。
きっとあれは俺の出来事なのか?だとしたら納得はいくがそれでは、今まで見てきたものは全て…
だんだんと頭痛が収まり、机をみてコーンスープをすすろうとするとコーンスープは無く、あったのは入院をしている六鹿の姿だった。
「なっ…!?」
「ん…御村?」
「どうなって…」
「アンタがここまで運んできてくれたんでしょ?」
「ああ。そうだ。俺がここまで───」
「ありがとうね御村。あの日さアタシが、アンタにアニメがやるからコーンスープを作って待ってるね?って送ったんだけどそれから正俊くんを見つけて…」
「コーンスープ!?」
「そう、コーンスープ」
確信した。俺がさっきいたのはもうひとつの世界。y世界だ。こっちが俺のいるX世界。
六鹿が何者かに血が出るほど何かをされた世界…
だが、どうやって俺はX世界からy世界に移動したのか、そこだけがわからない。
「御村。アタシが退院したらさ、コーンスープ作ってあげる。運んでくれたお礼で、ね?」
「あ、ああ。楽しみにしてる。」
「アタシのコーンスープは冷めると美味しくないから早く食べてよ?」
「コーンスープは暖かい時に食べるものだからな」
「そうよね、分かってるじゃない!だから猫舌のアンタにも熱いの作るからね」
六鹿は窓から見える1本の葉桜の桜の木に手を伸ばす。
手を伸ばしたまま六鹿は俺に話しかける。
「御村はタイムマシン作ったら何をするの?」
「世界を変えるんだよ。俺や六鹿、正俊達が何事もなく過ごせる日になるように変えるんだ。」
「だったら私が怪我しないような世界にしてみせてよ?」
「ああ。変えてやる。天才の俺がな!」
「アンタはいつでも強気ね。カッコイイったら変だけどなんかそういうのイイな…」
「六鹿は我がメンバーの1人だ。リーダーがカッコいいのは当たり前だろ?」
「そうね」
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俺は帰る用意をして、部屋に帰ろうとすると六鹿が俺の服の裾を掴む。
「どうした?」
「もう少しだけ話さない?」
「怖いのか?」
「正直、ちょっとだけ」
「安心しろ。俺はどこにも行かないさ…六鹿や正俊を置いてなど絶対にな」
「置いていかないなら…1時間だけ、あと1時間だけアタシと話そうよ」
「仕方が無いな」
俺は椅子に座り、寝たままの六鹿の体勢をベッドのリモコンで起こしてやる。
六鹿は体勢を起こしながら何かスマホに打ち込んでいる。
「これ、2人でこの料理方法をして食べてね」
「すまないな」
六鹿から送られてきたのは唐揚げの作り方だった。それもこと細かく記載されており料理経験がない俺と正俊にでも分かるようになっている。
「六鹿、正俊一行を追うときどんな気持ちだった?
「それが分かってたら良かったんだけどアタシ…正俊くんが取られると思ってただ…」
「エージェントの精神攻撃か…」
「エージェントを見つけたら捕まえておいて。トドメはアタシが──」
「六鹿でも勝てないようなやつを俺が捕まえれる訳ないだろ」
「そっか、それもそうね」
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「ただいま…」
「おかえりリーダー」
帰ってみると正俊がいつもの白衣を着ていた。
見慣れた光景に少し胸をなでおろした。
「大学の金髪で巨乳な友達には会えたか?」
「会えたよ。ってなんで知ってるの!?でも今はそれを後で聞くとして…これタイムマシンの設計図って渡されたんだけど僕、設計図とか読めなくて…で、リーダーが帰ってくるのをリーダーが送ってくれた唐揚げの作り方を見ながら唐揚げを作ってました!」
「それはそれは…」
年上だと分かっていても年下に見えるこの現象…なんなんだ?
とりあえず唐揚げを作ってくれていたので頭を撫でると小動物のように気持ちよさそうに撫でられ抵抗すらしない…こんな、大学生がいたら六鹿のようなお姉さん系の人には人気者だな、、
「これが設計図か?」
「それが設計図でこっちが工具だよ」
「工具!?」
「うん、工具」
「その大学の友達はどこに?」
「倉?倉庫?かよく分からないところにリーダーがここに作るって言ってたからそこでタイムマシンの土台を作ってるはずだけど…」
「ちょっと挨拶してくる」
「行ってらっしゃい!」
相変わらず元気が溢れている大学生だ…
俺はアパートの裏に周り倉庫の中に入る。
すると明かりがついていて奥の方で何かをしている影が見えた。
「あのー…」
「貴方が御村隆一くんね?」
「はい…失礼ですが貴女は?」
「私はね、エンジニア兼メンバー?4号候補として今日一日中正俊きゅんに連れ回されてたの〜デートって言ってもいいのかな?」
本当に…六鹿がいなくてよかったァァァァ!!
「あ、でもこれ名乗ってないよね…私の名前は安田梓っていうの以後よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします安田さん」
「呼び捨てでいいよ?さんは絶対つけちゃダメだからね!?」
「は、はい!」
言葉の剣幕よりも胸がチラついて俺は男だと再認識する。
「胸ばかり見ちゃダメでしょ!でも、大きいとさ不幸が多いんだよね…走る時邪魔だし、電車乗ると他の人のこと考えながら乗らないとダメだし…」
六鹿がいたら修羅場だな…ココ…