ショタ科学者無事帰還
我々は掃除機とぞうきんを手に取ってお互いの顔を見合わせて息を整える。
大家さんに迷惑をかけたといいう
うしろめたさと20%程度の反抗心を抑えつつ
大家さんに頼まれた掃除の箇所を分担して磨いていく。
頼まれた箇所は我々が使わせてもらっている部屋と大家さんが長年使っていないという倉庫とアパートの壁一面だ。
「よし、一号よ壁から終わらせるぞ」
「御村…いい加減に名前で呼べ」
「一号はそっちの端から真ん中までやるんだ。
俺はこっちの端から真ん中まで…つまるところ競い合いだ!どちらが丁寧かつ高速で壁磨きができるかどうか…この俺は負けないがな!」
「私が勝負事で負ける訳ない!」
「ちょ!まだ何も言ってないのに始めやがって…
流石一号…抜け目がないなぁ!」
我々は10分足らずで壁の一面を磨き終え
勝敗がつかぬまま我々が使っている部屋の掃除に行動を移った。
「さっさと終わらせて夢とロマンが眠る倉庫掃除に入るぞ!!」
「倉庫に夢とロマンを抱くのはどうなんだ!仮にもリーダーなんだからもう少しマシなことを言ったらどうなの?」
「フッフッ…男がロマンを抱いて何が悪い!」
「はぁ…男ってこんなヤツばっかなの?」
俺はこの瞬間を待ちにまった。
倉庫の重いドアが開いていくこの瞬間を…
開かれたドアからはホコリと異臭がするものの
そこまで汚くはない…
「この倉庫なら…実験がしたい放題なのでは!?」
「はいはい、掃除始めますよ〜」
さあ行こう…夢とロマンが眠る倉庫へ!!
そこにお宝と我々の未来がきっとある!
「フムフム…タイムマシンを作ったらここに置くとすると狭くもならず済む…いけるいける!!」
「御村…手が止まってるぞ
せめてホウキを手に持とうか」
六鹿に怒られながらも我々は着々と掃除を進めていった。
倉庫に眠っていたのは誰かが使っていただろう工具器具と見たこともない金属がついてある懐中時計だった。
「一号よ…この時計を見てなにか思うことはないか?こう…懐かしいとかそういう思い出のものを見つけた時のような…」
「ただの懐中時計に見えるけど…掃除が終わったら大家さんに聞けばいいんじゃない?」
「確かに…この懐中時計を俺はどこかで見たんだが何も思い出せない。こう喉にひっかかるようなどこか忘れてはいけないモノのような…」
「ほら!ぼさっとせず今は掃除を終わらせることを第一にして終わったら好きなだけ考えればいいでしょ?」
「それもそうだな」
俺はこの懐中時計が気になって仕方がなかった。
掃除を終え我々は大家さんに一通り終わった掃除のこと、それから懐中時計について尋ねた。
「もう掃除終わらせたの!?一週間かかると思って任せたけどまさか半日で終わるなんて凄いわ!」
「驚いているところ申し訳ないのですがこの懐中時計について見覚えはありませんか?」
「懐中時計?」
大家さんが懐中時計を手に取ると
頭の中に色々なものが入っていく。
これは…俺と六鹿と見たことない人を合わせて6人が我々が掃除した倉庫の中に集まっている。
一人は白衣を着てタバコを吸いながら何かを俺に話していてそこで記憶?のようなものが途絶える。
「御村は具合が悪いの?なにか今とても辛い顔をしてたから…」
「案ずるなこの天才の俺が病気の一つや二つになったところで俺の天才は消えないからな!」
「ホンットにいつもの御村で安心したわ」
いつものどこか棘のある捨て台詞を捨てると大好きなプリンを買いに出掛けていってしまった。
それにしても俺が見たアレは一体…なんなんだったんだ…
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俺は六鹿の帰りを部屋にて待っていた。
すると、六鹿は片手にプリン、もう片方の手にはコーヒー牛乳がどっさりと入っているのにも関わらず笑顔で帰ってくるのを目の当たりにして俺は『超人なんじゃないのか?』とツッコミそうになるのをグッとこらえながらブリンが入っている方の袋を持って部屋へと運んだ。
「お前はどれだけプリンを食べる気だ…
こんなにも買ってきて!!また大家さんがおすそ分けを持ってきたらどうする気だ!」
エコバッグの中には見ただけで数十個は入っているであろうプリンの宝庫だった。
こんなにも食べたら普通は飽きるだろと思いつつ六鹿の方を睨む
「私が何を買おうが何を食べようが勝手だろ!
第一に私は最初にタイムマシンを作るなんて聞いていなかった!」
「だって言ってたら来なかっただろ?」
「絶対に行かなかった」
「言わなくて大正解だ」
ここで俺と六鹿の関係を少し話そう。
俺と六鹿が会ったのは5歳の頃だった。
ドイツから日本に来たばかりの六鹿はあまり日本語は使えなかったが親が通訳をしてくれていたため俺と六鹿は仲が良くなっていった。
中学三年生の正月に再開した時に六鹿をタイムマシン制作のメンバーとして誘った結果が今に至る。
「あの時は興味半分だったけど今じゃアンタとお話をする会のメンバーな気がするわ」
「アイツがいた時は少し研究所感が出てただろ?」
「まあ…彼が居た時は二人ともなにかに憑依されたみたいにいろんなガラクタを作ってたもんね…」
「何がガラクタだ!お前には危険だから見せてないだけだ!」
「だったらその危険(仮)なガラクタを見せてみなさいよ判断してあげるから」
俺は部屋の奥に眠っている二人で作った最高傑作のお披露目会をすることになった。
六鹿が好きなものは大体わかる。
光ったり音が出たりとパッと見では何かわからないものが好きなのだそこをつけばアイツにいかに我々がタイムマシンを作るのが現実的かを知らしめるチャンスなのだ。
「これが何かわかるか?」
俺はス〇ーウ〇ーズを見て作ったライトセーバー似の武器を見せつけた。
「これライトセーバーじゃない?」
「ならこのスイッチを押してみろ」
「なによ、押せばいいんでしょ」
押した瞬間にライトセーバー御村Ver.は音を立てて変形し剣からペンライトに変わったのだ。
「フッ…これでいつでもライブに行けるぞ!」
「ガラクタぁ!」
「俺のライトセーバーがっ!」
六鹿の怪力により俺のフォースは消滅した。
もうジェダイになれないよ…
「もうフォースが感じれない…」
「ほら、次のガラクタを持ってきなさい」
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俺とアイツの最高傑作のほとんどが怪力によって消滅していった…
長い時間をかけたような気もしなくもない我々の最高傑作は見るも無残な姿でダンボールに詰められていった。
「これならどうだ!」
「なによその大剣は」
「これはだなモンスターが現れたらいつでも狩猟ができるよう刃のところにレアメタルを使っているのだ」
「もったいないだろうがァァ!」
「おのれモンスターめ俺の大剣を壊すにはハンターランクがあと4つは足りないぞ!」
呆気なく破壊された大剣カリバーンはダンボールを最後の狩猟として出かけていった。
なお、戻ってくることは無かった…
「そろそろ真面目に作ったものはないの?」
「あるとも、この円盤とかな」
「なによそれは」
「これはだな例えばこのパンクしている自転車の車輪の代わりに付けるとすると高速のスピードが出る。ちなみにもう実験も終えているが安全性が皆無で使い道が──」
「私なら使えるんじゃ?」
「あ、確かに」
急遽、実験が始まった。
被験者は岩崎六鹿。
使う道具は円盤、パンクしている自転車、ヘルメット
「ヘルメットを被っておけ。下手をしなくても死ぬからな」
「誰が実験したの?」
「俺だが?」
「生きてるじゃないの」
「細かいところはさておき、今からこの道を漕ぐ
自転車では出ないスピードが出たと思ったら漕ぐのをやめろ。ただしペダルから足を離すな。もし、離したらずっと足を浮かせろペダルも円盤のスピードと比例して速くなっていくようになっているからな」
「わかった」
俺は円盤のスイッチを入れる。
この円盤は遠心力と物体の速さの約5倍で動くよう設計してあるのだが欠点がふたつ。
速くなると止まらないことだ。
だから、止める時はもうひとつの道具がいるのだ。
そしてもうひとつが肝心だ…この円盤はアイツが独断で作ったものだ。アイツは脳内がサイコパスだ…
俺が実験に駆り出された時は三日三晩本気で泣いた。
だが、精神力+99にステを全振りしている六鹿なら大丈夫だろう。
「では実験開始!」
「うおぉぉぉぉ!!」
漕いだ瞬間に、円盤が青白い光を放った瞬間に自転車は新幹線のスピードで道を進んでいく。
ここまでは成功だが青白い光が紫に変わると円盤が、縦から横に切り替わり一瞬浮く時がある。
浮いた時にペダルを漕ぐと…飛行機の速さと新幹線の速さで空を飛ぶ…ように改造してあるらしいのだが漕ぐなと言ったので大丈夫だろう。
「御村ァァァ!!」
「あ…スピードが落ちてる…」
まさかの事態だった…
六鹿の怪力にペダルが耐えきれず俺の目の前を通った時にペダルが落ちたのを確認すると
俺はもうひとつの道具を取り出す。
「名付けて超強力磁力!金属なら全て引き寄せる!つまり使い所を間違うと100%死ぬ!」
「ネーミングセンスがないなァァァ!!」
俺は超強力磁力を空に向かって撃つ。
すると黒っぽいエネルギーが発生し、引き寄せられていった空き缶が消えた。
「え!?御村ァァァそれ死ぬぅぅ!!」
「超強力磁力とは、ただの名前だ。実際はミニブラックホールをこのお寿司を食べる時によくある醤油サイズの蓋に閉じ込めているだけだ」
自転車のスピードが消えていきミニブラックホールに引き込まれていく。
「そろそろか」
もう一度瓶を打ち込むとミニブラックホールは跡形もなく消え、残ったのは自転車と六鹿だけだった。
「と、止まった…」
「これはアイツが作ったものだ。
「使えるじゃない…ちょっと今は…寝たい」
六鹿は自転車から降りるとベッドに向かっていった。
円盤はスピードと共に吸い込まれてしまい結局残ったのはミニブラックホールだけだった。
そんな時、後から聞き覚えのある男の声が聞こえてくる。
「全く無茶をするなリーダー」
「お前!生きてたのか!!」
「もちろん。何回か連絡いれたんだけど…また充電切れに気づいていないとか?」
「あ…六鹿には内緒だ。気づかれたら普通に死ぬ。生き物としても科学者としても。」
白衣を着ているこの男は
勝山正俊
我々のメンバー第二号でもあり六鹿と同じ時期から俺と実験を繰り返した天才ショタである。
「タイムマシンよりも僕は重力波について調べてたんだけどね」
重力波?またこいつは新たな知識を…。
だが、それがあれば俺は過去や未来に行けるようになるのかもしれない…
「重力波?」
「僕はタイムマシンを動かすには重力波が必要と思ってる。
タイムマシンは光速を超えなくちゃならない、なら時空のゆがみが時間変動によって波のようなものが光速として出るのが重力波だと仮定するならこれを利用すると過去や未来に行けるんじゃないかってね」
「重力波となると面倒になるな。いろんな理論がぶつかり合ってしまうからな」
「そうだね。まあ、過去や未来に行く方がいろんな理論がぶつかると思うんだけどね。でも、リーダーは過去や未来に行ってやり直したいことがあるのかな?」
「初めてあった時にも聞かれたなその質問」
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『僕の名前は勝山正俊、白衣が動いてたら僕だと思っていいよ』
白衣が動いてたらって…それある意味怖いわ…
『歓迎しよう。君はタイムマシンを作りたいのか?』
『もちろん。タイムマシンを作りたい。でもリーダーに質問です。貴方は過去や未来に行ってしたいことはありますか?』
『それは────』
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「まだ内緒だ。まだ、な」
「タイムマシンを作った時には教えてもらいますよ」
「ああ」
重力波…また新たなものが出てきた。
タイムマシンは理論上未来にはいけるが結構すぐに行けるという理論があるが過去に行けるという理論はそう多く存在しないしどれも難しいものだ。
だが、俺はタイムマシンを作らなくてはならない。
懐中時計で見たのは6人…
俺を含め6人でそこから正俊と六鹿を引くと残りは3人か。
アイツらを見つければ…
懐中時計が見せたのが未来か過去かは分からないが俺は残り3人をどこかで見た気がする…気のせいか既に“観た"か、、
23時に投稿予定でしたが遅れました…