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割とハードな異世界モノ目指して頑張ります。
「ぎぃイヤァあ゛ぁァァーー!!」
突然ですまないが俺は森の中で奇声を発しながら翔ている。全力で走っている。
あとすこしで森をぬける。森をぬけると草原が広がっておりそこまでモンスターを誘導するのが俺の役目だ。だかもうダメかもしれない。疲れた。足が限界だ。後ろを振り向く。スライムやゴブリン、その他もろもろ。恐竜みたいな奴もいる。冷や汗が手や腕、額から滲み出てくる。殺される!
クソッ
あと少し。あと少しなんだ!耐えてくれ俺の両足!!ゴールは目前なんだ!!目の前なんだぁぁ!!!
グシャ!
「ほへッ……」
バタン
背中に鈍い痛みを感じた。情けない声も出た。それと同時に体の力がぬけ……。意識が、遠く…な……る。
★★★
それは突然だった。
一学期最終日、終業式でチョビ髭校長の長い話が(おそらく)中盤に差し掛かった頃の出来事だった。
「___そして夏休み!じつにいい。素晴らしい!学校生活だけでは絶対に学習することができない『学び』を知る最高の機会でキッカケだ______。」
うちの学校の校長は変わり者だ。絶対におかしい。大学受験を控えた先輩方がいる中でこんな話しをするのだから。
「___私が高校生だった頃はたくさんの冒険をした!知らない街、知らない人…知らないことだらけでときめきが______」
本当に頭がイカれてると思う。見ろ。隣で整列している先輩方の表情を。皆、校長を睨みつけている。
その反面、後輩達の顔は生き生きしている。そんな純粋な後輩達に先輩方のあの顔を見せてはならないと壁役的な我ら2年生。
校長よ、もっと考えて喋ってくれ。
それが我ら2年生ほぼ全員の心の叫びだ。
「そして、最後に3年生」
校長は自分のチョビ髭に手を添えると真剣な顔で先輩方の方を向く。先輩方も表情がキリッとしたものへと変わっていた。
「君たちは2年と半年。まー、約3年間ずっと……」
そんな時だった。急に体育館の天上に黒い霧が発生したのは。
「な、なんだよ、アレ!」
1人の男子生徒が思わず声を出してしまったのは仕方がなかっただろう。しかし、その瞬間その男子生徒の体は宙に浮き上がりその黒い霧に吸い込まれてしまった。
『キャー!!』 『うわー!!』
もう体育館中パニックで、声を上げてしまった人達がドンドン吸い込まれていく。かく言う俺も吸い込まれて宙を浮いていたりする。
「うおぉぉぉーーー!!」
☆
意識が覚醒する。意識は覚醒したが体が思うように動かない。ここはどこだ?。重い体を起こして周りを見渡す。どうやらどこかの建物の中のようだ。だが間違えなく学校じゃない。床は大理石(だと思う)だし天井も高い。そもそもこの部屋自体かなりでかい。なんたって約500人の人間が横たわっていてもまだまだ余裕があるのだから。
俺の他にも目覚めた人が何人もいるようだ。しかし久々に大声を出したせいか声が出ない。
「どうかお願い____す。____を倒して下さい。あなた方しかもう頼れ______」
「……」
「お願いします!」
「わかり、ました」
「校長?!」
「青野先生、大丈夫ですよ。こちらにも考えがあります」
校長だ。校長だけじゃない。おそらく先生達は皆もう目が覚めてあそこに集まって誰かと話しをしているようだ。先生達は皆暗い顔をしている。
話し合いが終わったのか、校長達と話していた誰かがこちらを向く。
誰かさんはどこかの民族衣装を着た、女性のようだ。立派なスイカが実って…、目があった。誰かさんはニッコリ微笑むと、どこから取り出したのか指揮棒のようなモノを持っていた。
「それでは失礼します。『スリープ』それと…『ウョビウユム』!」
と、唱える。何だろう。呪文だろうか?。『スリープ』はなんとなくわかるが『ウョなんとか』ってのはなんなんだぁ…zzZ
★
再び意識が覚醒する。今度は体も怠くなくむしろ清々しく目覚めた。
何だろうか。おかしな夢を見ていた気がするのだが……、思い出せん。
「おお、起きたか?おはよう。体調は大丈夫か?お前達。」
担任の加藤先生?服装がだいぶいつもと違うが……。
「おはようございます、加藤先生。てか、先生その格好はなに、ファッション?アハハハ!」
先生の問いに1番に答えたのは俺と同じクラスの山井 和樹 (やまい かずき)。いつもヘラヘラしてるがこれでもクラス委員だったりする。しかも何気に頼れるいいぽっちゃり系男子でもある。(彼女持ち)※爆発しろ!
「山井は大丈夫そうだな。俺が着てる服については後で話すとして、他は大丈夫か?」
なぜ、先生はこんなに俺らの体調を気にしているのだろうか?いつもの先生とは違う。おかしい。先生の方こそ大丈夫なのだろうか。
特に頭とか。
「…先生。おはようございます。それと、ここどこですか?あと、いつもとキャラ違いすぎて先生キモいんですけどー」
彼女は村山 春香。同じクラス。うちの数少ない女子を束ねるリーダー。口癖はキモいとかウザいとか《ピーー》など。外見はチャラチャラしている。彼女のオヤジさんはアッチ系の人でかなりヤバい。1度、授業参観の時に会ったことがあるが視線で人を殺せるのではないかと思うほどの厳つい人だった。
「村山は相変わらず毒舌だな〜。元気ならいいんだけどね」
「先生…私も元気です。あ、あと。おはようござい……ます」
彼女は梅田 ゆい(うめだ ゆい)。対人恐怖症て人の目を見て話せない。うちのクラスで1番成績がいい。ちなみに同学年160人中150位。皆、笑ってやるな。俺のクラスは特別クラスで生徒10人しかいないんだ。必然的に彼女がクラストップになる。それに実際はもっと頭がいい。
「んー。先生〜。頭痛い〜」
「なに!本当か?……イヤ、嘘だろ。こんな時にまで嘘吐くな!前田!!」
「あらー、バレバレか〜。」
この独特な喋り方のやつは前田 相太。嘘つきで忘れ物の常習犯で確信犯で愉快犯。2年生になり(加藤先生と会い)Mに目覚めた。
「先生!おはようございます。私も体調に問題ないでーす」
「おう、そうかなりよりだ」
彼女は……。名前忘れた。とりあえず村山春香の取り巻きAさん。とにかく周りに合わせる。自分の意見をほとんど言わない。コバンザメみたいな奴。
「おい!糞先公!ここどk「君うるさいよ。静かにできないのかい?これだから低能は」_ンだと、テメェ。オメェも十分低能じゃねぇか?ア゛?!」
「ははっ。笑わせてくれる。このハゲが」
「ンだと、ゴラァ!!」
「こらこら、喧嘩するな。元気なのはわかったから……黙れ」
「「うっ……。はい」」
先生の睨みつける攻撃!
効果は抜群だ!!
チンピラとエセ紳士の攻撃欲がガクッと下がった!!
チンピラこと藤沢 卓也は喧嘩早い。一年の頃は野球部の期待の星と呼ばれていたが暴力事件を起こし野球部から追放された。おそらくクラスで1番運動神経がいい。
エセ紳士こと岡島 輝也は演劇部の副部長。今はエセ紳士を演じているが週一でキャラが変わるとっつきにくい奴。女装して学校に登校して来たこともある。朝の点呼まで気がつかなかった。一生の不覚である。
「あー、先生おはようございます。俺は元気っすよ(石作りの壁……。板で固定されてる扉……?それに先生が着ている服…イヤ、防具だ。それに___だし……で_____)」
先生の睨みつけるで静まった教室のムードで口を開くこの男は村田 太吉。記憶力は悪いがIQが異常に高い。記憶力とIQは比例しないと体現したような奴で普段は無口。彼曰くIQにも種類があり自分は閃き力が高いとのこと。それ以外は点でダメらしい。
「工藤と大金は?」
先生は俺の方をむく。俺は工藤 太一。親がラーメン屋で俺はその店を継ごうと思っている。そのため学校の勉強は殆どしていない。
「まー、どこも悪いところはないです」
無難に返事をしておく。
「自分も大丈夫です。それにしても、さっきの黒い雲には驚きましたな。驚愕ですぞ」
このムカつく話し方の奴は大金 重三郎。オタクだ。魔法少女系が好みだとか。ちなみに俺の一番の親友でもある。
「そうか。みんな元気でよかった。さて、何から話そうか……。」
ここにいるメンバーは先生を含めて11人。
つまり2年特別クラスのメンバーだ。このメンバーは1年の学年末でワースト10になった者達で構成されたクラスで、各自のペースで勉強を教えてくれる。各自のペースといっても2年生の学年末テストで1教科でも35点以下を取ると留年させられる恐ろしいシステムでもあるのだか。
「現状…、現状だな。よし!みんな、心して聞いてくれ。質問は最後にまとめて聞く。スー、ハー」
どうやら重大発表があるようだ。なんだろう。ちょび髭校長のヒゲは実はつけヒゲでしたー笑、的なことだろうか?そんなことなら校長の口から聞きたかった。
「俺たちがいるここは異世界だ。俺たちは異世界転移したんだ」
え?
『「えぇぇーー‼︎⁇」』「……」
「静かに!!覚えてるとは思うが集会中に発生した黒い雲みたいなモノに吸い込まれ異世界転移した。俺たちを召喚したのはこの国のお姫様で、勇者として魔王の復活を阻止してくれとのことだ。校長はコレを委託したのが約一ヶ月前の話しだ」
い、いろいろツッコミたい。
だか、質問は最後だ。
「この世界には魔法が存在していて生徒たちは皆、約1ヶ月間眠っていてもらった。本当はその間に先生達で魔王の復活する要因を潰して夏休み中には元の世界に戻る手はずだったんだが……、ダメだった。復活しちまった。」
先生は力なく言い放った。
沈黙が流れる。こんな先生は初めて見る。
俺は頭が悪い。それでも今の状況がすこぶる悪いことは理解できた。
「それで、どうなったんですか ?」と、山井が沈黙を破り先生に質問する。とても震えた声だった。
それを聞いた先生は眼を見開き、自分の頬を両手で二回叩いた。バンバンという音が石造りで窓のない畳8畳ぐらいの部屋に響く。
「先生がこんなんじゃいけねぇな!!」
先生が声を張り詰めて言った。
あ、いつもの先生だ。なんだか安心できる。
「おう!今この国は魔王軍の襲撃を受けている!」
ダメじゃん、ダメダメじゃん。さっきの安心返せ。
「今この城にいるのは俺たちだけだ」
先生は静かに言った。だが、先ほどと違い先生の顔は自信に満ち溢れている。
梅田ゆいは恐る恐る手をあげる。
「ほ、他の皆さんは、…どうしたんですか?」
どうやら梅田は他の人は死んだのではないかと思っているようだ。だが、先生のあの顔はそんなことはない、と言っている。
「他の奴らは皆隣国まで亡命したよ。」
「ちょっと待ってよ!なんで他の奴らは亡命したのにウチらだけ取り残されてんの?!意味わかんないんですけど!!」
先生に村山春香が噛み付いた。
最もな質問だ。だがしかし、黙っていても先生が説明してくれるだろうに。
「フン。学ばん小娘め!教論の話は最後まで聞け!」
岡島が村山を止した。
「はぁ?!だっておかしいでしょう!この変態野郎が!」
今にも村山がエセ紳士を殴り飛ばしそうな勢いだ。
「はるか辞めなって。今は先生の話を最後まで聞こう、ねっ?」
取り巻きAさんが村山をなだめた。
「お前ら本当に元気いいな!」
先生お前は能天気か!
それから一拍起き、先生は語り出す。
「俺たちが取り残されたのはな、『大人の汚い事情』ってやつだ」
どうやら詳しく話す気は無いようだ。先生が『大人の汚い事情』という言葉を使うときは大抵詳しく説明してくれない。
みんなそれを理解している。だからあからさまに嫌な顔をしたのは仕方がない。
「だが、安心してくれ!俺が責任持ってお前達を連れて行くからな!!」
何を根拠に言っているのかはわからない。だが、この先生なら、どうにかしてくれる。そんな気がした。
気が向いたら更新します