実験台(被)観察日記①-7
携帯変えたんで少し遅くなりましたかね?
なぜかスペースが使えないので、ご了承ください。さて、第7話です。もう1万字も超えたのですが、やっぱり伸びません。まずは試しに読んでみてください。
螺旋階段を上った2階の廊下には扉が五つあった。東に三つ、西に一つ、そして突き当たりの北に一つだ。
「ここがあなたの部屋です」季咲は東の三つの内、真ん中の扉を指して言った。
扉にはネームプレートが下がっており、『上ちゃんの部屋』と書いてあった。誰が書いたのかは一目瞭然だが、意外にも達筆である。
「あなたと違って?」季咲が言う。本当に何でも知っているらしい。
その両隣りも個人部屋だった。左が『わたしのへや』で、右が『あたしのへや』。なんで僕だけ三人称なんだ……
「僕は一番最後に入って来たのに、真ん中なんだね。なんで?」僕は訊いた。
「「なんとなく」」2人とも示し合わせたように答えた。
向かいの扉には『Toilet』の文字があった。中を見ると、清潔そのものである。
そして、もう一つの扉。ここが問題だった。
「開かずの扉?」僕はプレートの文字を読んだ。
しかし、これは正確ではなかった。なぜなら、プレートの両端にはその名にそぐわない二つのマークがついており、
『♡開かずの扉☆』
となんとも可愛らしく装飾が施されていたからだ。
「ここは何なの?」
「そこはですね、まさにカオスが具現化され、秩序という概念が完全に崩壊したような場所です。そこでは、Aの次にくる文字が予測できないというのはもちろん、そもそもAから始まるのかも知り得ないのです」
「季咲、何言ってんのか全然分かんないよ!」と言ったのは知華。 どうやらおかしいのは僕ではなかったようだ。
「入らないでいただきたいです」端的なまとめだ。
「ふーん。ハートと星マークって同居するにはバランス悪いと思うよ」ガチャッ
「あっ酷いですよ、不意打ちなんて」
思ってもないことを。
「何もないじゃん」中は閑散としていた。窓は北と西に一つずつ。
「何もないです。来たるべく誰かのために開けておかないと」
「この部屋もやっぱりキレイなんだね」
「知華さん様様ですよ。しかしホコリって不思議だと思いません?何も手を加えずとも増えるんですから」と言いながら、季咲はドアを閉めた。
「カオスとはかけ離れた部屋だったね」窓しかなかったのだから。
「……混沌とは、日常の中に息を潜めているんですよ」
3秒の思考の上にあみ出した答えがそれか。
「微塵の生活感すら感じられなかったけどね」彼女に感化されてか、多少嫌味ったらしくなってしまったのかも知れない。どうしよう!?
「ホコリ一つありませんからね」表情筋をピクリとも変化させることなく季咲は答えた。
「1本取られちゃったね」知華が久方ぶりに口を開いた。第一印象とは違い、消極的なようにも感じられた。
しかし、今のは1本取られちゃったのだろうか?納得がいくよう ないかないような……
最後に、不思議な順番だが、自分の部屋を見た。「四畳半です」
と季咲は説明した。フローリングではあったが、整えられた正方形は部屋主、つまり僕に平穏な日々を与えてくれそうに思えた。西には小窓が一つ慎ましやかについている。
しかしダンボールの数が多過ぎる。5つの箱は、一挙に積み上げられて天井につきそうだった。たしか引越しをしたとき(高校入学のときだ)は3個しか無かったと思うが。
「季咲と小野見さんの部屋は両隣りなんだよね?」一応の確認。
「知華でいーよー!」元気を取り戻したはいいが、もう少し安定させてほしいものだ。
「隣です。押しピンが貫通するということはないですが、なにぶん壁が薄いので気をつけてくださいね」
「分かった」何に?
「ソロプレイとかじゃねーの?」知華がさらりと言った。
「……はぁ」こんなときにはどうすれば、そんな悩みからふとため息が洩れた。
「知華さん、そういうこと言わないでくださいね。宍戸さんに今しがた会ってきたんですから」
「そういう問題じゃない」
「鼻歌とかですよ。イヤホンして、あんまり大きな声で歌ったりしないでくださいね」
「それもちょっとボケてるような気が……。ところで、このダンボールはなんでこんなに多いの」
「ご実家からマンガを持ってきました。少しは部屋が華やかになるのでは?」
「余計なお世話だ!」2箱も絶対要らないだろ。
しかしマンガは1箱分しかなかった。もう1箱は組立式のチェストだった。本は大切だから、という理由での2人からの入学祝だと言っていた。
部屋の整理をしているといつの間にか日は暮れていた。昼食をすっかり忘れていた事を「マジで大食いキャラ意味無いですね」と季咲は評した。
僕の家事当番はA。洗濯と風呂洗いを四月の終わりまですればいいということだった。僕は先に干されてあった洗濯ものを、取り込み畳んで箪笥にしまい、それから風呂掃除をした。
その日は足が地につかない1日だった。季咲が作ったという夕食(予算は500円位のように見えた)を食べて寝る頃には、昼休み、初めて彼女を見たのは何週間も前のことのように感じられた。
永劫使わないと思っていた、前の学校でのグループチャットで、家庭の事情で転校するという旨を伝えた。ただ一人を除いて全員が同情の声を寄せてきたが、僕はどうも思わなかったし他の奴らも同じだったろう。
明日、日曜は特色ある生徒に挨拶をしに行く、と季咲は言っていた。なかなか眠りにつけなかったが、目を瞑っているといつの間にか太陽は東の地平線に顔を出していた。
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