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実験台(被)観察日記①  作者: 蕎麦とポテトと目覚まし時計
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実験台(被)観察日記①-5

堅苦しい題名かも知れませんが、中身は普通です。ぜひとも読んでみて下さい。

「やあやあやあやあやあやあ、こんにちは」

 部屋に入って間もなく眼鏡をかけた小太りの男はしつこいくらいの挨拶をしてきた。

 その部屋は入り口から一本の廊下で繋がっており、高い天井ついたシャンデリアが、広い部屋を煌々と照らしていた。豪邸とはああいうのを言うのか?扉はひとつしかなく、でかすぎる家を持て余した間取りなのだろう。

「おはようございます」まだ8時半だったので。

「こちらは治安維持委員会の宍戸(ししど)冬基(ふゆき)さんです」季咲が説明をしてくれる。

「君は転校生の、、上坂君だよね。あ、ここ座って。さっき紹介に預かったけど、宍戸です、よろしく。ところでさ、治安維持委員会なんて、戦前みたいじゃない?ハハハ。やっぱりさ、みんな特殊な能力を持ってる訳だし、それを己が欲望のために使用するかも知れないじゃない、そんなことはあっちゃダメなんだよ。治安維持っていっても、監視するわけじゃないよ。じゃあその欲望を抑えてしまおうと、そんな無謀な試みをするんだよ、僕らにかかれば無謀じゃないけどさ。でさ、話はそれるんだけど、人間の三大よ「宍戸さん」

 季咲が、身を椅子から乗り出して話す宍戸を、遮った。

「さっさとしてください。すみません上坂さん、この人話すのが好きなんですよ」

「ふ、ふーん」支離滅裂だったような気もするが。

「細かいねぇ、菊橋さん。さて僕の能力はねえ、性欲を操るっていう極めて危険なものだよ。それを使って君の性欲を少なくするんだよ」

「それって宍戸さん自身は悪用しないんですか?」僕は尋ねた。

「しないさ、興味ないね。精々僕に可能なことは、仕事に集中できなくさせて銀行強盗するぐらいのことさ、なんてね。じゃ、おしゃべりさせてもらうよ、その間に終わるから」宍戸は話を濁した。

「上坂くんはアニメとかよく観る?」

「まあ少し」

「広く浅くなんでも知ったかぶり、がこの人の信条です」季咲は見透かしたことを言った。

「な、なんでそれを‥‥」知っているんだ。

「菊橋さんはやっぱり不思議な娘だよね。うん、不思議だ」宍戸は一人で納得していた。

「なかなか迷惑な信条を持ってるんだね、上坂くんは」

「まあ、そこは触れない方向で」

「間違えることは恥ずかしいことではないよ、間違えを認められればね」

 書いていなかったが、右手の壁には一人の美男が立っていた(キザと呼ぶことにしよう)。見るに彼も治安維持委員会のメンバーらしかったが、そのすました雰囲気からあまり話したくはないような気がした。

「いや話は戻るけど、多くの女性に囲まれる男主人公ているじゃない?ああいうのってさ、主人公は大抵さ、ヒロインたちの色んなとこ見たりさ、体が密着したりするじゃん。そのとき主人公はすごく興奮するのにさ、何事もなくシーンは終わるんだよ。あれっておかしいよねえ?うん絶対おかしい。主人公が全然異性に興味ないとかなら分かるよ、そんなアニメないけどさ、でも興味津々なんだよ!普通の男子なんだよ!!それにキャラクター紹介にもイ〇ポなんて書いてないんだよ、変だよなあ」キザを無視して話は続く。

 宍戸は「さ」が口癖だと分かった。しかし、女性もいるのだが。

「はあ、そういうこと考える人もいるんですね。あと、そんな主人公に引かれる人はいませんよ」

「リアリティーを持つのは難しいよね。それがだよ、僕の能力があれば実現出来ちゃうんだな」

 超能力という時点でリアリティーは皆無でしょう、という言葉は呑み込んだ。

「でもまあ、事実は小説より奇なり、とも云うしね。超能力は身近にあったりするんだよ。アニメとは全く関係ないけどさ」

「誰の言葉でしたっけ、それ」

「三角コーンみたいな名前ですよね」季咲がすかさずボケる。

「バイロンだよ。菊橋さんが言うのはパイロンでしょ」宍戸が落ち着いたツッコミをした。

「ああ、バイロンですか」と言っても全くピンとこなかった。バイロン、聞いたことはあったと思うが。

「元は神殿の柱を意味したらしいです。そこから由来したのでは?」季咲はスマホを持って説明した。

「そうやって物知りになってくんだね」

 宍戸はうんうんと頷いた。彼は季咲に一目置いているらしかった(どこに?)。

「あと僕はね、英語の『ペイ アテンション』(圧倒的にカタカナ発音であった)てのにも不思議を感じるね。『注意を払う』でしょう。日本語とたまたま一緒なんだよ。渦奈(うずな)ちゃんは『熟語なんて腐るほどあるし、一つくらい被ってても変じゃあないでしょ。バカかよ』っていうんだけどね」

 『渦奈』という人物が出てきたので、季咲に目で説明を仰いだ。

「彼女も委員会の一員です。辛口が特徴ですね、お酒じゃなくて毒舌ってことですよ」彼女は僕のことをバカにしている。

「まあ注意するとはいうけどドゥー アテンションとは言わないし」宍戸は付け加えた。

「もうそろそろ終わりました?」季咲は腕時計を見ながらにべもなく言った。

「はいはい、もう終わったよ。早かったでしょ?」

「え、もう終わったんですか?早いですね」

「はい、終わりです。次行きますよ」季咲は答えた。

「苦労すると思うけど頑張ってね。じゃバイバイ」

 宍戸は椅子を回転させて僕に背を向け、キザと話を始めた。会話はうどんのようにスッパリと断ち切られ、僕は後戻りを余儀なくされた。

「次は寮です」




面白いと感じられたならブックマークお願いします!!知り合いのかたにも紹介していただけると幸いです。コメントも積極的に返します。できるだけ早く次の回を書きたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。二週間に一本は行きたいです。

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