実験台(被)観察日記①-4
文体も変で読み苦しい所もあるかも知れませんが頑張って書きました。面白いと思われたらブックマークしていただけると幸いです。
「フレッシュサラダで良かったですかね。足ります?」
季咲は何十分も人を待たせた挙げ句、買ってきたものはサラダだけだと言った。袋のなかを見ると、確かに小さい容器が一つあるだけだった。
「足りるけどもね、ファストフード店に入ってサラダだけっておかしくないかな」
「十分も経ってます?中で食べてきたんですけど。上坂さんって、いっぱい食べたいし、お腹もすくってだけで、たくさん食べる必要性はないんですよね。朝食なんて軽くていいじゃないですか、私のお金ですもん」
お前は中で食べて来たのかよ。
「あれ?なんでそんなこと知ってるんだ?」
「私たちの学園には色んな人がいるんですよ。人のことを調べ上げる能力とか」と季咲はさらっと言った。
「それってプライバシーの権利はどうなるんだ?」
「流石にそこは配慮してるでしょう。多分」
やはり能力の悪用もあるのだろうか。
「いえいえないですよ。縛り過ぎないことが大切なんですよ。皆さん家に包丁があっても、振り回さないでしょう?すぐばれますよ」
「ふーん、そういうもんなのかね」
「そうですよ。超能力の悪用なんて、大人への反抗くらいしか動機ないでしょう」
まあ、間違いが起きないようにするための東名学園なのだろうが。
「でも、思春期の男子なら、好きなあの娘のことが気になったりするんでしょうかね」
お前は何歳だよ、という言葉が喉まで出かかった。
「理解出来ませんよ」どこか不満があるようにぽつりと呟く。
「他に話すことはないの?」ペースもあるし。
「そうですね。じゃあ適当に学園生活について話しますか」
「はあ」わざわざ説明することなのだろうか。
「寮、と言ってもここから相当変わっていまして、生徒が暮らすのは一戸建ての家です。慎ましやかですが、一軒あたりに四五人は住めます」
「確かに変だね」
「で、上坂さんには私と同じ屋根の下になります。もう一人いるんですけど、紹介はそのときでいいですかね」
「え!?性別違うのに?」まさかそんなことがあるか?
「はい。社会に出たときに、異性に慣れている必要がありますし、間違いは起きないようになってます。もっともあなたにそんな勇気ないでしょうが」季咲は淡々と進める。
「超能力というやつかい」
「分かってるじゃないですか」
異性よりも常人に慣れた方がいいんじゃあないか。
「で、生活費は月に十万円支給されます。アルバイト可です」
前の学校は応相談だったな。
「『前の学校は』ってもう適応したんですか?好都合ですが」
あ……
「まあいいです」季咲は続けた。
「学園生活の方は自由なものですよ、まったく。午前中の四時間で、平均的な学校の一日分の終わらせます。なので、そこそこ速く進みますが、午後はフリーなので、ついていけないようなら自習ですね」
「放課後って午後からなのかよ。けど、昼間は人目につくし、外出は躊躇われるよな」
「皆さん外に出られるのは大抵四時くらいからですね」
想定内といった風に、季咲は答えた。
「ふうん。そういえば、いつの間にかの出入りって言ってたけど?」
「生徒なら自然と到着しますよ。出るときは、敷地内から出ると、市街地があります。そこら辺をうろうろしてたら、直ぐに目的地ですよ。それがないなら適当に放り出されますが」
やはり不思議な学校だ。東名学園。
「まあ、普通の学校で変人を育てるなんて、お話になりませんよ、二重の意味で」と、意味深げに彼女は笑った。
「あと、私たち生徒は、一週間に一回脳波の計測をされます。また、個別で少しずつ違ったことを色々されます。私の場合は、よく分からんのでビタミン剤注射ですが、上坂さんはレントゲンとかじゃないですかね。『超能力』なんてものが本当にあるのか、科学者さんたちはどうしても知りたいらしいです。どーでもいいですけど」
これはまたまた露骨な……
「タイトル回収?それと、超能力者は同じような人種と生活することで何かしら変わるのか、を調べるためにお互いに動向を日記に書きます。頻度は適当でいいですよ」季咲は開き直って最後まで駆け抜けた。
「ふうん、楽あれば苦ありってことかい」
「苦というより、面倒なだけですけどね」季咲は深く座り直した。
話が終わってしまった。人と会話をするのは苦手だ。普通の男女なんて、何を話すのだろうか。
「普通は男女とか意識しないんじゃないですか?そんなのだから、彼女出来ないんですよ」彼女の能力はテレパシーかも知れない。
「本当に口が悪いな」僕は話をそらした。
「顔はいいんですけどね」と季咲は自画自賛した。
「いやいや、あなたが言ったんでしょうが」
確かに第一印象はそうだったような気がしないでもない。すごく可愛いとすごく美人の中間をとったような顔だ。
「でも、自分でも少なからず良いと思ってるんだろ?」
「少なからずって……いや、ちょっぴりですよ。すこーしだけですね」と意外にも早くに認めた、それもジェスチャーをしながら。
「ハハーン、誉められ慣れてないんだな」
おそらくいつも人をおちょくる側をおちょくるのは楽しいものだなあ。
しかし、季咲は慌てる素振りも全く見せず「なんか、上坂さんて変ですよ」と冷ややかに言うのだった。
「もうちょっと女の子らしく振る舞わないのか?照れるとかさ」と言うと、
「『らしく』って言葉は個性を殺すんですよ」と、妙に達観したようなセリフを返される。
「会ってから間もないけど、なんかお前のことが良く解った気がするよ」
「そうですか。それはそうと、ほら、最初の目的地ですよ」
そう言われてみると、いつの間にかエンジンの音は聞こえなくなっていた。
「ここで、色々と手続きをふんでもらいます。安全を守るためには、規則もやはり必要なのです」
季咲はドアを開けた。
僕は暗い車内に突如射し込んだ陽射しに目を細めたが、次第に慣れてくると、そこには豪邸が建っているではないか。車は、立派に構えられた門の前に停まっていた。
「入ってください」季咲はいつの間にか、門を入って5メートル程の扉の前に立っていた。
季咲は両開き扉の右側を開ける。
まだ実感が湧かないまま、僕は一歩を踏み出した。
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