実験台(被)観察日記①-3
ペースも遅いですし、読者もほとんどいませんが、頑張って行きたいと思います。
面白いと思われたらブックマークしていただけると幸いです。
目を覚ますと、そこは車の中だった。リムジンだろうか、実際に乗ったことはないが、テレビで見たことはあった。室内灯があるので車内は明るいが、どういう仕組みか窓の外には何も見えない。横には彼女が座っており、クラッカーを食べている。
「起きましたか、意外と落ち着いてますね」
僕の方を見ないまま、彼女はそう言った。
状況が呑み込めていないからか、不思議とそんなに騒ぎ立てるような気分でもない。
「そういえば、名前を聞いてなかったかな」
「はあ、そうですが、自分から名乗って下さいよ」
「え、知ってるでしょ?」
「知ってますよ」
彼女はそれだけ言って、クラッカーをまた一枚口に運んだ。
しょうがないのか。「僕の名前は上坂英樹だよ。そっちは?」
「‥‥‥‥」
彼女はまだ口を動かしている。食べている時は話しかけるな、ということだろうか。あ、飲み込んだ。
「上坂英樹さん。普通の名前ですね。私の名前は、菊橋季咲です。気軽に季咲って呼び捨てでいいですよ」
「意外にもフレンドリーなんだな。僕はコミュ力ないよ」事実だ。
「‥‥さて、話は戻りますが、とにかくこの世界には色んな人がいるわけですよ。しかし、超能力なんてものを持っている人が、常人たちと一緒に暮らしていけるなんておもいますか?」けんもほろろにあしらわれてしまった。
「いや、思えない」
「ですよね、なのでその異常を通常化しようというような学園なんですよ。要は変な奴等ばっかりてことですね」
「ふーん、そうなんだ」とは言ってもにわかには信じ難い。
「で、今はその異常な学校に向かっているの?」何時間寝ていたかは分からないが、もし日付が変わっていないというならば、着いたときには真っ暗になっていないだろうか。
「いえ、違いますよ」
「え!!じゃあどこに行くんだよ!?」
「しつこいですが、誘拐じゃありませんよ。心配しないでください。あなたのお家はそんなにお金持ちでもないでしょう?」
確かに、本当に三億円を渡したというなら、また誘拐するのもおかしい。渡していないなら誘拐されるほど僕は裕福でもない。
「ちょっとした寄り道です。すぐに行きますよ。だってリムジンですよ、こちらとしてはお金に困ってないんです。それにターゲットをリムジンで送迎なんて」
愉快な誘拐ですね。と小さな声が聞こえたような気がしたが、何も言わない方が良いだろう。
「ま、そうか、一安心だよ。ところで、今は何時だい?」
「七時ですね、朝の」
「学校までは何時間なの」
「学園までは二時間程度ですかね」とわざとらしく訂正してくる。
しかし、二時間。となると着くのは九時ぐらいか。そんな時間が許されるのは、昨日が金曜日だったからだろうか。
「学園てのはどこに?」
「質問ばかりですね。ですが、残念ながらもその質問には答えかねます」
不思議なことを言う。生徒に知られてまずい場所に在るのか。彼女の言ってきたことは、どれも確信はできないものばかりだ。
「そういう学校なんですよ。出るときも入るときも、いつの間にかなんです」
「あれ?今学校って言「全寮制で、」
心なしか、声を少し大きくして季咲は続けた。
「全寮制で、寮は学園の敷地内に在って、放課後と休日は外出が許可されています」
「刑務所みたいだね」
「刑務所に休日ってあるんですかね?それに面会室はありません」
あってたまるか。
「なので、基本的には学園内が生活範囲となりますね」
「変わった人たちと生活しなきゃならないってこと?」
「あなたもそうですから」
「君も?」
「どうでしょうか。私も変な人たちと一緒の寮ですが」
「ふうん」しかし、これはなんと言うか‥‥
「ご都合主義、ですか」
彼女の超能力とやらは、テレパシーなのだろうか。
「仕方ないですよ。いろいろありますし」
?どういうことだろうか。
「いろいろはいろいろです」と母親のようなまとめかたをする。
「同じ学校だろ。言えばいいのに」
「嫌です、言えません」と、はっきりと断られてしまった。
「何かしら理由でもあるのか?」
「ないです」これまたはっきりと言う。
「……ふーん」
「と言ったところで、今まで走っていた車は止まった。寄り道とやらに着いたらしい。」
「いや!?どういうことだよ!ナレーションをするな!」
「ええー、細かいこと気にしないでくださいよ。別に良くないですかー?」
細かくないし良くないだろ。
「で、どこだよ」
「ファストフード店ですよ。店頭で買う派なんです。何か欲しいものでもあります?」
クラッカーを食べ終えた季咲はドアを開けた。朝陽が車の中に射し込んだ。
「適当に朝食を頼むよ」
「分かりました。それではここら辺で小休止」
ドアが閉まった
面白いと感じられたならブックマークお願いします!!
知り合いのかたにも紹介していただけると幸いです。コメントも積極的に返します。できるだけ早く次の回を書きたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。