不協和音を指揮すべし者
ディアナは思わずギルドの人らしき人に聞いた。
「すみません…ノーテって人知りませんか?」
すると、相手の人は何だか少々苛立った様子で
「あの子?余りにもサボってるからクビになったよ」
その事にディアナは衝撃を受けた。ディアナはノーテが頑張ってチラシを配っている様子しか見てないからサボるなんて考えられなかったからだ。ディアナは詳細を聞いてみると、
「あの子は戦ってるように見せるのは得意みたいなんだ。はじめのうちは頑張ってると思ってたんだけど一ヶ月近くたっても討伐数0っておかしいでしょ!」
確かに。ディアナの周りの人にも一ヶ月近く今までずっと討伐数0の人は誰一人としていないのだ。だがディアナは何か理由があると考え、ノーテを探しに行くことにした。
見学を終えると早速ノーテを探しに行った。すると、グランドの隅で棒のようなものを素振りしているノーテの姿があった。
「ノーテ…?何してるの?」
ノーテはディアナの声に気づくと笑顔で振り返った。
「あ、ディアナちゃん、久しぶりだね」
「ギルドではクビになったって聞いたし、こんなところでどうしたの?」
すると、ノーテはうつむき、
「クビになったことまで聞いたんだ…理由も聞いた?」
ディアナは無言で頷いた。だが、その後に続けて、
「でも影でこんなに努力してるんだからいつか戦えるようになるよ!」
だが、ノーテはうつ向いたままだ。すると、ノーテはディアナを信頼できると思ったのか、
「ディアナちゃん、私がドラゴンを倒せない理由はいくつかあるんだけど…聞いてくれる?」
「もちろん!」
「まず一つ目ね。私は元々運動が苦手なの。私の家族は代々の音楽家の家庭でね、パパは世界的にも有名な作曲家でママは優秀な歌手なの。そしてお兄ちゃんは4歳の時にバイオリンをマスターするほどで10年に一人の天才児とも言われてたの。その次に産まれたのが私で期待されるのは当然でしょ…でも私には音楽の才能は全くなくって、しかも音楽系の学習中心だから外で遊ぶこともなかった。そのせいで運動もダメになっちゃったんだ。音楽に進めないならってことで偶然身に付けていたこの力でここに入学したんだけどね」
「そうだったんだ…」
ディアナは自分のように家族が喜んで送ってくれるような家庭だけじゃないということを痛感させられた。ノーテは続きを話し出した。
「そして、二つ目は私の武器なの」
そう言うとノーテは天に手をかざすと、大体25cmくらいの棒状の物体が輝きながら現れた。ディアナは精神学科のため、武器の召喚を生で見るのは初めてだったので感嘆しながら見ていた。すると、武器をディアナに見せながら話はじめた。
「これが私の武器。タクトなんだけど…全く使い方がわからないの」
「振ったりしたら魔法とか出るんじゃないの?」
ノーテは首を横にふった。
「色々試してるんだけど…本当にただの棒としてしか扱えないの…物理的に叩いても私の力だとプチドラゴンすら怯んでもくれないし…」
「そっか…でも私だって初めはプチドラゴンすら倒せなかったんだよ!ノーテはきっと大器晩成型なんだよ!だからゆっくりと成長していけばいいよ!」
すると、ようやくノーテの顔に笑みがこぼれた。
「フフッ…ディアナちゃんって優しいね」
「そ、そうかな?やっぱり妹がいるからかな?」
「へぇ~妹さんがいるんだ。ディアナちゃんみたいなお姉ちゃん欲しかったな~」
その台詞に、ディアナは半年前に出会ったツヴァイのことを思い出した。
「そういえば昔助けに来てくれた隊員さんに似たようなこと言われた気がする…」
「きっとそれってギルドの人じゃないかな?一地域ぐらいの規模だったらギルドが出動するらしいし」
「ギルドってスゴいんだね…」
「そういえばディアナちゃんはギルドはどうするの?」
「う~ん…折角ノーテと出会ったんだから一緒のギルドに入りたいな~」
「…でも今までいたあのギルドってボーダーフリーの所だよ…そんなとこをクビになった私でも入れる所なんてあるのかな…」
その事実にディアナは少し固まった。だが、すぐに何かを決意したような表情へと移り変わり、
「よし!私が新しいギルドをつくってみせるッ!!!」