崩壊
その夜、二人は寝室で喋っていた。
「パパもママも収穫の許可を出してくれてよかったね」
「でも明日は朝から忙しいから私たちだけでやるのか…いつも手伝ってくれてたから不安だよ…」
シャインがいつになく不安がっているのでディアナは姉らしくシャインの手を握ると
「大丈夫だよ!去年もほとんど私たちだけでやってたでしょ?それに、パパもママも私たちを信頼してくれてるからこうして頼んでるんだよ!」
すると、シャインは笑顔で、そしてディアナの布団に潜り込んで来ました。
「うわっ!いきなりどうしたの?」
「えへへ~♪お姉ちゃんなんだかいつもより頼もしいや。今日同じ布団で寝ていい?」
突然そう言われてディアナは戸惑い、恥ずかしさも込み上げてきたがシャインが期待の眼差しでこちらを見てきているので断ることもできず、
「好きにしたら…」
「わ~い♪お姉ちゃん大好き」
この年でここまでなつくのもどうかと思うが、ディアナも妹のシャインのことは大切に思っているので嫌な気は全くしなかった。そして、ディアナはシャインが寝静まったのを確認すると、
「本当にいつもありがとうね。その明るさにいつも励まされれるんだよ」
そう呟くとディアナも睡眠に入った。
翌朝
ウーーーーーウーーーーー
二人は異様な警報音で目が覚めた。
「な、何?お姉ちゃん…」
同じ布団で寝ていたのが幸いだったかシャインは混乱し、怯えきっていたが、ディアナシャインの無事を肌で感じることができある程度冷静に頭の中を整理することができた。そして、こう呟いた。
「ドラゴンが…来る…ッ!」
ドラゴンはいつ、どこでも神出鬼没のため、空間に歪みが生じた付近の地域では警報が発令されるようになっている。そして、市町村ごとに対魔物ようシェルターが備え付けられており、警報がなったらそこへ避難するようになっている。アグリ地区でのドラゴンの観測は最近では全くなく、少なくともディアナの記憶にあるうちは一度もなかった。故にこのような事態になったときの対処法は学校で習った程度の知識しか持ち合わせていない。
「えっと、確か…シェルターに避難すれば大丈夫なはず…でも場所が分からない…」
すると、シャインは立ち上がり、
「お姉ちゃん!私、地図の場所分かるから探してくる!お姉ちゃんはパパとママに連絡と避難の準備をお願い!」
だが、シャインの足は震え、目には涙をうかべながそう言っている。明らかに強がっているのだ。それはディアナにも十分分かったので
「ありがとう、シャイン。でも無理しなくても大丈夫だよ。一緒に地図を探そう?」
すると、シャインは声を張り上げていつにない気迫で反論した。
「私だって、お姉ちゃんの役に立ちたいの!分担した方がすぐに準備が終わるし!それに家の中だから大丈夫だよ!」
いつにない気迫に押しきられ、ディアナはシャインに地図を探してきてとお願いし、それを聞くとシャインは寝室の外へと向かっていった。その間にディアナは親に連絡し、最低限の水や食料、着替え等を持ち、シャインの帰りを待った。
だが、10分も待っても戻ってこない事に違和感を覚え、荷物を持ちディアナも寝室の外へ出た。
すると…
「家の半分が…なくなってる…」
廊下の少々先の方から向こうが完全にガラクタと化していた。その中に一人探し物をしている少女がいた。勿論シャインのことだが、完全に冷静さを失い闇雲にガラクタの山を探していた。その様子を見たディアナは大きな声で呼び掛けた。
「シャイン!」
すると、シャインは涙目で顔もグズグズになりながらこちらを振り返り、
「お姉ちゃん…私たちの家が…無くなっちゃったよぉ…それに地図も見つからない…ゴメンナサイ…」
ディアナはシャインの元へ駆けていき、抱きしめこう言った。
「バカッ!謝ることなんてないよ!シャインが無事なだけで私はいいんだから!」
「今日収穫予定の野菜も全部荒らされちゃったよ…」
「また作ればいいんだから!とりあえず安全なところまで行こう?」
「どうやって…?」
その言葉に、ディアナは何も言い返せなかった。シェルターの場所が分からない今、二人になすすべが無いのであった。だが、ディアナは希望を捨てず、
「他にも避難してる人が要るかもしれないからその人に着いていったら…」
途中までいいかけ、止めてしまった。何故なら破壊されているのは自分達の家だけでなく、辺り一体が荒れ地になっていたのだ。唖然としているなか、
「キャーーーーーーーッ!」
腕の中でシャインは悲鳴をあげた。シャインはディアナに抱きついたままディアナとは逆方向を見ていた。ディアナも振り向くと、そこには…
巨大なドラゴンがこちらを見ていた。
「嘘…」
この状況にはディアナも立ち竦むしかなかった。だが、ドラゴンはこちらに気づくと咆哮をあげ、こちらに走ってきた。その危機にディアナも正気を取り戻し、
「シャイン!逃げるよ!」
そう言いシャインの手をとり、駆け出そうとするものの、シャインは足がすくんで一切走ることも歩くこともできない状態になっていた。その隙にドラゴンは二人との間合いを詰め、雄叫びをあげた。その衝撃で二人は吹き飛ばされてしまい、繋いでいた手もほどけてしまった。そして、バラバラに吹き飛ばされ、ドラゴンはシャインの方向へと迷わず走っていった。