第五話 夕焼けの海
最初時雨さんが店をたたんで実家に帰る日は、一週間後でした。
ですが、時雨さんは実家に少しでも荷物を送るお金を減らすため、一回荷物の一部を自分で持
ってくると言って、次の日の朝早くから出る事を決めてくれたのです。
もしかすると、母が警察に通報して私を見つけ出そうとしているかもしれなかったので、私はバイト用の制服を着て帽子を被り少しだけでも変装して時雨さんの車に乗り込みました。
「梨乃さん。とりあえず後部座席で寝ているふりでもしていてくれますか?」
私は頷いて後部座席で横になりました。
そのまま車は発進し、私と時雨さんはずっと無言でいたんです。
何キロか進むと警察の方が検問していました。
私はそれを見て、思わず目を見開いちゃいまして...
あ、でもその後時雨さんが大丈夫って言ってくれて少し落ち着いたんですけどね。
その検問は飲酒運転をしていないか、というものでして...
あの時は本当にホッとしました。
「後ろの子は、お子さんですか?」
警官がいきなりそんな事を言ってこっちに視線を向けました。
確かに、あの時の私は高校生でしたが時雨さんは二十五歳位なのでその発言はおかしいと思い
「いえ、従妹です。」
と時雨さんは当たり障りのない返事をしてから、先に進みました。
「梨乃さん」
ずっと無言だった時雨さんが声をかけてくれたのは夕方くらいでした。
「はい。どうかしましたか?」
「外、出ませんか?ずっと同じ体勢で疲れてるでしょう?」
そう言って時雨さんは車を止めました。
外に出てみると、目の前には夕焼けに染まった海が広がっていました。
「...綺麗」
とても小さな声で呟いたんですが、聞こえていたようで時雨さんは微笑んでいました。
..その顔にちょっとときめいちゃったのは秘密ですよ?
まぁそのときの私は恥ずかしくなって顔を背けちゃいましたけど。
でもその時は本当に幸せで、時雨さんとならどんな事だってできるような気がしたんです。
現実は、そんなに甘くないって知っていたのに
どうも、作者です。
生きてます。
すみません、早めに更新するとか言いながら..
気づけば一年位ほったらかしにしてしまいました。
これからも出来るだけ頑張りたいと思うので読み続けていただければ嬉しいです。
では、また六話でお会いできることを祈って。