12 部屋
部屋に案内されてからというもの、私と灯夜の間に会話はなかった。
(気まずい……。空気が重い……、何か話した方がいい、よね……?)
私が口を開くと同時に灯夜が話しだした。
「――いきなりごめんな? なんか、用事とかなかった?」
そんな灯夜の問いかけに私は思わず笑ってしまった。
「用事あったらここまで来ないよ~。大丈夫、ホテルに帰ろうとしてただけだから!」
「そっか」
そしてまた少しの静寂の後。灯夜は話しだした。
「――そっちはどう?」
「えっ? どうって何が?」
私はあまりに唐突な、漠然とした質問に聞き返した。
「進学、だったろ?」
「あー、うん。まあ、何とかやっていけてる感じかな? 灯夜は?」
「まあ、俺も同じ感じかな」
近況報告をしているうちに私はあることに気付いた。
(あれ、そういえば、私灯夜の進学先知らない……?)
「ねえ、灯夜どこに行ってるの?」
「どこって?」
私からの質問に灯夜は目を丸くした。
「あの、大学とか、短大とか、専門学校とか……!」
「ああ、俺今この町にいないんだ。南越大学ってとこなんだけど、知ってる?」
「えっ!?」
(南越大って、凛翔大の隣の? っていうか同じ敷地の?)
高鳴る鼓動を抑えつつ、私は灯夜に伝えた。
「私凛翔大だよ?」
「は!? マジで言ってんの?」
「うん、凛翔大学生!」
「どこ住んでんの?」
「大学近くだよ~! 灯夜は?」
「俺も近くだよ、1人暮らし?」
「もちろん!」
「マジかー! こんなことならもっと早くに会っとけば良かった……」
灯夜は頭を抱え、ベッドに倒れこんだ。
「灯夜? そんなに話したいことでもあったの?」
「ああ、ずっと話したかったし会いたかった、千草」
「何……っ!」
何を、と聞こうとした私は、灯夜に腕を引かれ、灯夜の上に倒れこんでしまった。
「あっ、ごめっ……」
「いいから、俺、今すっげぇダサい顔してるから……。このまま、聞いて?」
灯夜の懇願するような声に私は灯夜の胸に顔をうずめる形のまま、ただただ黙って頷くことしか出来なかった。
「俺、未だに中学のこと後悔してる。千草はもう忘れてるかもしれないし、思い出したくもないことだと思うけど」
「うん」
「――あのとき、俺はただ純粋に、嘘じゃなくて、千草のことが好きだった。でも、何かあるだろ? こう、中学男子のさ。からかいたくなる感じ。それで俺は青と紅祁に聞かれたんだ。『お前、村雨さんと仲良いよな』って。そのときから、嫌な予感はしてた。『そ? 普通だろ』って答えてもあいつらは諦めやしない。『あんなののどこが良いんだよ。もっと良いやつ居るだろ?』って、そう言われるたびに、俺の千草への気持ちは強くなっていった。“俺が守らなきゃ”って」
「うん……」
ドキドキと灯夜の鼓動が早まっていた。それに伴って、私の鼓動も早くなっていく。
「それであの日、新年会の日。俺はあいつらに後をつけられてるのも気付かずに、千草の家に行った」
(気付いてなかったんだ……)
「――うん」
「後はあいつらが勝手に言ったことだ。嘘だの、何だの面白おかしく捲くし立てて……。確かに、あいつらにメールとかは見られたこともあるけど、無理やり取られたりとかで、俺から進んで見せたわけじゃない。本当に、悪かった」
「――もう、いいよ。大丈夫、だから」
私は震える声を必死に隠し、灯夜から離れようとした。
「待って」
しかし、起き上がろうとした腕は再度灯夜に引かれ、またも灯夜の上に倒れこんでしまった。
「わっ!」
というか、先程よりも上に上がってしまったため、顔を上げれば目の前に灯夜の顔がある状況になってしまった。
「と、灯夜。離し……」
「好きだ」
「――へ?」
突然の灯夜の告白に私の頭の中は真っ白になった。




