20.大薮新平 仲間達との再会
大薮新平は踊ると魔法が掛かるという、ふしぎなスキルを得て異世界に召喚された。家族を守る為に母神セラルーベの復活を進めることになった新平は、本来の使徒オーシャブッチ軍との戦いを決意。石化封印されていた大司祭ソゴスを解放し、大神殿側の協力を得たのだった。
「しっ……使徒殿が! 使徒殿がお戻りなられました!」
リーダを背負い、【天翔地走】でアンジェリカ王女一行の滞在している高級宿前へ瞬間移動する。俺には大神殿のあんな奥地から、半日掛けて歩いて来る時間はない。
突然現れた俺達を見て、宿前に立っていた護衛騎士が驚いた声を張り上げながら中に駆け込んでいく。周囲が暗い。ああ、もう夜だったのか。こんな時間に来て大丈夫だったかな。ずっと建物の中だったから分からなかった。
戻って来た護衛騎士に案内され三階に上る階段の途中、ラディリア達の足音と声が振ってくる。
「チンペー!」「ジンベイ!」
見上げた俺にラディリアとイリスカが階上から飛び掛ってきた。咄嗟に下にいたリーダが、俺の尻を押して転げ落ちないように支える。
(いや、それちょっ、逃げれない!)
「ぎゅえっ!」
結果、俺は鎧装備の女二人に押し潰されて前面に打撲を負う破目になった。
「す、すまない。つい……」
「ついで殺す気かオイ」
「え、ええと。身体は大丈夫かしら」
引き攣った笑みで謝罪する女騎士二人。姫さん達の部屋で俺はソファーで横になりながら、恨めしい顔を二人に向けている。もう会えないかもという相手に再会した喜び故の事故らしかったが、痛くて動けなくてはうらめしい気分の方が勝つ。なんでこいつ等、自分達の装備と相手の体力を考えずに飛び掛ってくるかな。幼児じゃないんだから飛び付いてくんなよ。下手すりゃリーダ巻き込んで階段転げ落ちてたぞ。
「また、こうして会えると思っていました! お早いお戻りでなによりです!」
「……」
俺の手を取って嬉々とするアンジェリカ王女十一歳。無垢な笑顔がまぶしくて俺はソファーに顔を埋める。悪いが俺としては戻った理由が理由なので、一緒に喜ぶ気にはなれない。ごめんな。俺は日本に帰る気マンマンだったんだよ。
「……リーダ、説明任した」
「はい、引き受けます」
苦笑いしながらリーダが相手を変わり、大神殿で起きたことを説明し始めた。
◇
「……では、本当にチーベェさまの召喚は事故だったということですか?」
信じられないという表情で呆然とする姫さん。敬虔なヴィスタ信者としては受け入れ難い事なんだろうか。俺、散々間違いだって言ってたと思うんだけど。
「やっぱ原因は似た様な名前ってだけだったぞ。信徒の姫さんに云うのは悪いけど、ここの神さん、いい加減過ぎるだろ!」
「……そう、ですか」
「おい、姫様に当たるな」
「言う相手を間違っていないかしら」
姫さんが沈んだ表情になると見るや、速攻でラディリアとイリスカが前に出て言い返してくる。この近衛騎士達、過保護過ぎる。
「いえ、いいのです。その様な理由とあれば、チーベェさまがヴィスタの司祭であるわたくしを責めるのも無理からぬことです。この様な事故に巻き込んでしまいましたこと、信徒の一人として申し訳なく思います」
姫さんが殊勝に返したので、ラディリア達は余計に目を△にして睨んでくる。小さなお姫様に頭を下げられてはこっちも居心地が悪い。こりゃ確かに俺が言葉を選び間違えたようだ。
雰囲気が悪くなったこと気付いたアンジェリカ姫が話を変える。
「そ、それで、チーベェさまはこれから如何なさるお積もりなのですか」
「オーシャブッチを倒すよ、仕方ない。殺さなきゃいけないかと悩んでたけど、考えてみればセラルーベが復活さえすればいいんだから、アイツ自身はどうでも良いんだ。殴って縛りつけて、踊れなくして大司祭達に引き渡す。そういう話で大神殿側と話をつけた」
縛って踊れなくしてしまえば、使徒なんて喚くだけのおっさんだ。簀巻きにして牢屋にでも転がしておけば良い。
「処遇が甘くないか」
「そう…………」
ラディリアとイリスカは不満そうだ。こいつらはあのおっさんに酷い目に合わされそうになったので恨み辛みがあるんだろう。
「では、直ぐに出立の準備をしなければなりませんか」
「いや、今度は大神殿が全面的に協力して兵を出してくれることになったんだ。姫さん達は付いて来なくていいよ」
「「?」」
三人共びっくりした顔になった。いや、驚かれても困る。
「今度は完全に軍隊同士での戦いになる。姫さん達を巻き込む訳にはいかないよ」
姫さん達一行は俺が皇都に向かう為に編制された偽装巡礼団なのだ。人員も護衛騎士が中心。ここに辿り着いた時点で彼女達の任務は終っている。今度やるのは使徒軍と使徒軍の戦い。完全に戦争だ。同行させる訳にはいかない。向こうは4万。こっちもそれに対抗する為に専門の兵士達を揃えて立ち向かうことになる。他国の姫様とその護衛達を連れて行く理由が無い。
「最初は俺とリーダだけで行こうと考えてたんだよ。だけど大神殿側が協力してくれることになって、それだけでは済まなくなったんだ。大神殿は既に兵を貸してオーシャブッチを後援する立場になってる。俺がこっそり行って奴を拉致なんかしたら大騒ぎになる。それだと同行している大神殿の失態にもなるらしい。俺に個人で動かれては困ると云われちまった」
大神殿側としては、自分達の関係ないところで結末を迎えられると体面上困るのだ。故に要求されたのが。
「対峙する場合は、あくまでも使徒対使徒でやり込めて、奴を捕らえて欲しいってのが大神殿の意向なんだよ」
「……随分勝手な意向ではないのか」
ラディリアの意見はもっともだ。
「そうだ。俺に命令されたって形で大神殿が俺にも兵を貸す。表向き大神殿は、双方の使徒に命令されて、仕方なく兵を貸したという被害者面でいるってんだから勝手な話だな」
皆が不満そうな表情になる。まあ当然だ。
「でもその話で呑んだ。俺が勝手にオーシャブッチを倒すのはいいとしても、セラルーベが復活すると大陸中が大騒ぎになっちまう。何が起きたんだと皆が騒げば一番困るのが大神殿だ。でも俺が帰る為には、大神殿奥の神臨の間を通らないといけないから、大神殿と喧嘩して邪魔される訳にはいかないんだよ。連中と敵対するのはうまくないんだ」
最悪は喧嘩していてもこっそり神臨の間に忍び込むことは出来るだろう。しかし事態がどう転ぶか最後まで分からない以上、味方は多い方が良い。敵は少ない方が良い。俺がセラルーベを復活させて「後は知らん、さあ日本に帰るぞセラルーベと交渉だ」と神臨の間に行こうとしたら「ちょっと待て、事情説明しろ、どうなってんだ」と大神殿に必ず引き止められる。強引にいけば争いになる。それでは困る。
こっちの利点もあるのだ。オーシャブッチを倒した後の向こうの軍の後始末。ドーマ王国への事後対応。攻め込まれているワウル共和国への説明。後々発生する面倒事の後始末を連中は全て引き受けると言ってくれた。これで俺はオーシャブッチを倒すことと、セラルーベの復活にだけ専念できる。そして事態が終った後には、全てを大神殿に押し付けて速攻で日本に帰ることが出来る。
「そう、ですか……」
「……」
「大軍がぶつかるとなれば、双方に大勢の犠牲者が出るわ。それは良いのね」
イリスカが俺に確認する様に言ってくる。長い付き合いなので俺の性格を知ってるな。俺が一番躊躇していたところを指摘してきた。
「……仕方ない。とは言いたくないけど覚悟は決めたよ」
大神殿が望み、俺も了解した以上、今度は大規模な戦いになる。ならべく互いの犠牲は少なくなるよう手は考えるが、それでも犠牲者がゼロには出来ないだろう。俺が首謀者となって戦争を起こし犠牲者がでる。吐きそうな話だ。
だけど俺はセラルーベの前で『なんでもやってやる』と言い切ってしまった。もう決まったのだ。後はどれだけ覚悟を決められるかという話になる。家族の命が掛かってる以上、何度迷おうが結局戦うという結論に行くのが分かっている。それなら何千、何万人死のうとも俺はやる、と覚悟しなくちゃいけない。……胃が凄く重い。
「そうですか。貴方が覚悟を決めているなら構いませんが……」
「そこ等辺は戦術を進める際に考えましょう。なんとか切り合いに発展しないうちに、公衆の場で向こうの使徒を捕らえれば良い訳です。やり方は必ずあります」
「そうだな。ありがとな」
リーダもフォローしてくれた。軍同士で戦うのが決まったからといって、必ず殺し合いに発展させる必要はない。無血で解決する方法だってきっとある筈だ。諦めちゃいけない。
「だから、今回は姫さん達の出番は無い。連れて行く訳にはいかないよ」
「何故でしょうか」
「……え? いやだって」
聞き返されるとは思わなかった。
「先方の使徒殿がハヌマール王国公認の使徒ならば、チーベェさまは我が王国公認の使徒。そして私はその従者です。チーベェさまが大事を成されるというのに、我々が御傍を離れる訳には参りません」
ああ、そうだ。このお姫さん、自称俺の従者だった。神様から天啓を受けて俺の従者になったつもりでいるんだった。
「えっと……いや、違うんだ。まず、姫さんが俺の従者になれって言われたアレな。あの天啓って話な。ありゃアウヴィスタじゃない。セラルーベの嘘だったんだ」
「え?」
母神セラルーベが『幼き徒と才無き信徒では、汝を導くことが出来なかった』と言ったのを聞き、俺は二人に天啓を出したのがアウヴィスタじゃなくセラルーベだと知った。
もちろん俺は聞き返した。なんでお前は俺に直接連絡せずに、ちっこい姫さんや、キチ〇イ司祭ファーミィなんぞに天啓を降ろしたんだ。オラリアでなんか指名手配されて酷い目にあったじゃねえかと文句を言ったのだ。奴の答えは『交信できたのが其の者達だけで在ったから』だった。
奴は未だ封印されており、満足にこっちの人間と交信が取れない。交信し易い司祭位以上の人間が、大神殿内の神臨の間迄やって来れば別だが、通常扉は閉ざされている。
だが、俺とオーシャブッチが踊り、神の力を地上に顕現した瞬間だけ、神の力が地上に向けられるので交信し易くなるそうだ。その時に交信し易い場所=神殿で、交信し易い人間=司祭等が祈りを捧げてトランス状態になっていた場合にだけ、言葉を届けることに成功したらしい。
アンジェリカ姫の場合は、司祭位叙勲式で大勢の司祭達が祈りを捧げており場が出来上がっていたこと。姫さん自身も司祭杖を受ける際で高揚していたこと。そして、その時間にオーシャブッチのおっさんが踊りを行なって、神様との交信ラインが、偶然繋がった為成功したのだという。その場にいないおっさんで条件が達成したのだ。いくら考えても原因が判らなかった訳だ。
セラルーベとしては俺にオーシャブッチに殺させるように導きたかったのだが、受け手が幼少の姫さんだったので上手く伝わらなかった。『其の使徒と共にアウヴィスタの使徒を害するという使命を果たせ』が『其の者に仕え―――使命を果たさせよ』と歪んで伝わったというのが事の真相である。
「言葉を受ける側としては、神様の違いなんて分かる筈もないよな。現在いる神様はアウヴィスタだけと云われてるんだから、天啓を受けたら相手はアウヴィスタだと思うだろうし」
まさかアウヴィスタに封印されて、復讐しようとしている母神からの交信だとは思うまい。姫さんはあやうく自分が仕える神に背く背信者にされるところだった。詐称詐欺である。
「姫さんは奴に騙されたんだよ。俺が全然思うように動かないから、交信できそうな連中に片っ端から当たって、俺を誘導しようとしてたんだ。姫さんは偶然それに当たっちまったんだ」
だからもう、俺の従者として動く必要はない。もう国に帰っていいのだ。
姫さんは少し考え込んでいたが、小首をかしげて聞き返してきた。
「ですが……それはやはり、天啓ということではないでしょうか」
「え?」
「え?」
見ると姫さんの後ろで女騎士達も真面目な表情で頷いている。慌ててリーダの意見を聞こうと振り向けば、困ったような表情で指摘された。
「神から啓示を受けるのが、即ち『天啓』ですから」
あ、そうか。相手がアウヴィスタでもセラルーベでも、言葉を授かればどっちも『天啓』になんのか。
「いやいや、だって姫さんヴィスタ教の司祭なんだろ。敵対しているセラルーベの言うこと聞くのか。おかしくね?」
「……果たして、敵対すると決まっているのでしょうか」
「いや、顔に出てなかったけどめっちゃ怒ってたぞあのセラルーベ。アウヴィスタに封印を受けたって言った時、周りの温度十度は下がったぞ。めっちゃ寒気したもん!」
「……」
「俺はセラルーベが復活すると絶対アウヴィスタと争うと思ってるぞ。大司祭達も黙ってたから同じ考えだったんだろ。合っているんだろ。え、違うの。そんなことあるのか?」
リーダが胸に手を当てて、歌うように述べる。
「我等が慈愛なる母神セラルーベ。その尊き慈しみの心は大地を満たし、野山を育み全ての子へ祝福を与える。そして今、愛娘アウヴィスタによってその道は育まれる……私がルーベ神殿で詠まれている言葉です」
「あいつそんな玉じゃねえよ!」
思い切り吐き捨ててしまった。そういえば、こいつはあのセラルーベを信奉するルーベ神殿の元司祭だった。もしかして自分が仕えていた神殿の神様を、俺が散々こき下ろしているので気分が良くなかったのだろうか。
「今の私はルーベの司祭ではなく、兄様の従者ですので」
もう割り切ってくれているようで助かった。
「兄様、母神セラルーベと愛子アウヴィスタの仲睦ましさは。数々の歌で謡われ、双方の神殿及び市井でも母娘のあるべき見本として周知されていおります」
アンジェリカ姫さんもこくこくと頷く。
「……悪い、ちょっと想像がつかん」
俺は額に指を当てたまま固まった。
どちらの神とも喧嘩した俺からすれば、あの母娘の仲睦まじい姿はとても想像ができない。ビンタし合ってる姿が簡単に思い浮かぶ。似た者親子って相性悪いんじゃないの。神様同士なら仲が良いのだろうか。相対した俺が人間だったから態度が違っただけなのか。
「いやちょっと待て。話を戻そう。どっちに云われても同じ天啓なんだから、姫さんが俺の従者として付いてくるのは問題ないって、姫さんはそう言うのか」
こっくり頷く姫さんを前に、俺は頭を抱える。
「それってアウヴィスタへの反逆にならないの? 奴が封印した母親を蘇らせるのに手を貸すんだぞ」
「……どうでしょう。畏れ多くも我等の導き手たる神々からの啓示を授かったのです。私としましてはこの身を以って使命を全うするよう努めたいと考えているのですが」
「うそぉ……」
「兄様、我等は神々の恩恵により地上の生を許された者です。神々同士の行いに意見を持つなど畏れ多いことだと考えます。慈愛なる神セラルーベと新たな導き手たる神アウヴィスタは母娘神。兄様よりお聞きした其方の世界の神々の様に、争ったりする害したりするということは多聞に伝えられておりません。ですから、信仰する神は異なれど、神々より直接天啓を賜るという名誉を受けた以上は全うすべきと考えるのです」
リーダが俺にも分かるように説明してくれた。彼女は敬虔な元司祭でもあるが、日本人である俺の常識と物の考え方を一番知っている。だから、こうして俺にも分り易い様に説明が出来る。だが。
「うっそだあ……」
どうにも信じられない。
神様が家族だから。仲が良いと伝えられているから喧嘩なんかしないという理屈は俺には納得できない。
セラルーベの奴は確かに『娘神アウヴィスタに謀られ、封じられることに相成った』とか言った。
表情は変わらなかったが、怒りの雰囲気を感じて俺は震え上がったのだ。アレで怒ってない。恨んでない。喧嘩する気なんかない。と言われても、とても信じられない。
だから奴が復活すると同時に、俺は連中が争うと考えた。封じた側のアウヴィスタが、阻止できなければ『災厄が訪れる』とオーシャブッチに説明したのもその裏付けになった。
そんなことがあるのだろうか。セラルーベが復活してアウヴィスタも怒らず争わず、神様が増えたので大陸の崩壊も止まって皆HAPPYなんてことになるのだろうか。なら俺の心配は全て杞憂なのか。
「……兄様、今は神々のその後ではなく、アンジェリカ王女の同行についてです」
「お、おお。悪い」
また話がズレてしまった。
「……かと言ってもな。今回は大神殿から兵を集めて軍を編制する。そして公の場でオーシャブッチを倒す戦争なんだ。巡礼団の姫さんとその護衛達を連れて行く必要なんかないんだよ。付いて来られても正直困るんだよね」
「いいえ、チーベェさまが戦地に立たれる以上は、我等も御傍におり御身を御守りしたいと思います。どうか同行を御許しください」
「いや、だって……」
「道中、戦地で貴方の護衛も必要だろう。知らぬ兵に囲まれるより我等に任せる方が安全であるぞ」
「ええ、大神殿がどちら側にも居るということは、此方側にも内通者が出る懸念があるわ。身辺の護衛は私達に任せるべきね」
ラディリアとイリスカまで同意してくる。
「えーと、じゃあこうしよう。一度本国の女王様に相談してみたらどうだ」
トリスタ森林王国の神女王様は強烈なシスコンだ。妹が戦場に向かうなんて聞いたら止めるに決っている。
しかし、俺の提案に姫さんは身を乗り出して聞き返してきた。
「女王陛下の了解が得られれば、同行してもよろしいのですね!」
「お、おう」
「あ……」
横でリーダが「駄目」という顔をしている。え、なんで。駄目なのか。
「分かりました! 是非とも女王陛下の許可を頂き、改めてチーベェさまの従者としての責を努めさせていただきます!」
小さな拳を握って立ち上がって意気込む姫さんを俺は呆然と見上げたのだった。
翌日、大神殿で打ち合わせを終えた夜。再び姫さん達の宿を訪れると、喜色満面の笑みでアンジェリカ姫が俺を出迎えてくれた。
「女王陛下から同行の了承が得られました!」
「うそお!?」
一日経たずにだ。そんな速攻で結論でることなのかコレ。あのシスコン女王さん正気か。愛しい妹を戦場に連れてっても平気なのかよ。
やっぱりかと溜息をついたリーダに説明してもらう。
「今回の戦いは云わば慈母神セラルーベ様の御復活を掛けた戦いとなるでしょう。どう転ぼうと後年歴史に残る大戦となるのは間違いありませでん。その戦いに勝利軍側として自国が参加していれば、その功績は計り知れません。大いなる戦勝の威を得ることが出来るのです」
いやだからって。
「もちろん危険はあります。しかし参戦せずとも、その場に居さえするだけ主張ができます。兄様がアンジェリカ王女を危険な目に合わせることは、今迄の行動からも低いと証明されています。勝ち目に掛けた場合の利潤が莫大となれば、トリスタ森林王国としては乗り気になるのは当然でしょう。女王御自身が心配されても、ミモザ宮廷魔道士達を始め、多くの重臣達が推すに違いありません。女王個人の一存で止められるものではないのです」
「うおぅ……」
読み間違えた……。
どうする。いやどうするたって、もう連れて行くしかないのか。戦わせる訳にいかんから後ろに固まっていてもらうしかないけど。それってトリスタ森林王国の思う壺かよ。
「一陣を任せてもらいましょう!」
「先陣は譲らぬぞ!」
「アホか! お前等姫さんの護衛だろうが! 一番後ろで眺めてるだけに決まってんだろ! 全員並んで体育座りだ!」
自分達を辱めたオーシャブッチと戦えると、息を巻くラディリアとイリスカに俺は怒鳴るのだった。
次回タイトル 大薮新平 神獣勧誘




