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大薮新平 異世界にふしぎな踊り子として召喚され  作者: BAWさん
1章 トリスタ森林王国内乱編(全33話)
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11. 大薮新平 夫人を誑かす

「まぁ、大変でしたのね。いつまでも私達のところにいてよろしいのよ」


 化粧の濃いマダムが、でっぷりした肢体で新平にしなだれかかってくる。新平はヘビに睨まれたカエルよろしく硬直している。デニスは対面でニヤニヤ笑い、ラディリアは姿勢よく座りながら、冷めた目でその光景を見ている。


(近いって。化粧が臭いって。触ってくるな変態!)

「そーですね(棒)たいへんありがたくて涙がでそーです」

「うふふふ……」


 女性の名はオベリア婦人。町長ダディスの甥夫婦の家だ。

 この家では町長に次ぐ実力者。町長の親戚で商会のまとめ役。町一番の金持ちの豪商だそうな。


(町長の縁戚が要職について、一族で暴利を貪ってるパターンか)


 最初は渋っていたラディリアも、この家が行っている不正の数々をデニスから耳打ちされ、周囲に無いレンガ作りの家に、遠目から見たオベリア婦人のいかにもな外見。そして、太い指に高価な指輪があるの確認すると仕方なく頷いた。ちょっとこの人、周囲の住民と身なりが違い過ぎる。

 ちなみに、何故デニスがそんな事を知ってるのか聞いたらウインクで返された。気色悪かった。


 デニスが内々の取引と言って、背嚢から金細工を取り出し数個を手の中に押し付けると、ニコニコしながら中に入れてもらえたので『自分達は商人の徒弟と護衛で強盗に襲われ仲間を亡くし、急ぎ主人に合流する為に町を出たいが封鎖されたうえ、兵達にいらぬ警戒をされて困っている云々……』等と長い嘘八百を言い立てた。門の時と同じように、新平は後ろで魅了の踊り【親愛なる魅惑のタンゴ】を踊りながら合いの手を入れて話しかけていたのだが、困った事に沸いてくる台詞が「麗しいマダム」「なめらかな肌、美しい瞳、艶やかな美声、僕達はなんて幸運」と今迄一度も喋った事の無い歯の浮く世辞の連発だった。こんなの効くのかよと思いきや。婦人の目の色がどんどん変わっていき、最後にはデニスの声を遮って新平に抱きつき


「あたくしに全て! 全て良い様にしてあげるから! 全てよ。何時までもここに居ていいのよ!」


 と絶大な効果を表した。とりあえず成功。これで避難所は確保できた。

 居間に通され、かなり高価らしい中世風のソファーに座って一息付くと、何故か新平の横に婦人が座ってくっついて来る。


「うふふ。可愛いのね」


 膝を撫でられて怖気が超走った。怖い。喰われる。喰われそう。たすけて。


「あたくしが町長に仲立ちして、通れるようにしてあげますからね」

「いやいや。それはお構いなく。実は昨夜のうちに一人が主人の元へ走ってましてね。連絡が取れ次第証文を持って戻ってきてくれる事になっているのですよ。しかし、宿が全部彼らに押さえられてしまって、うちらも扱う物が物だけに、痛くない腹を探られるのも困りまして。宿を出て主人が戻って来てくれるまで、どこで雨露を凌げばいいかと、ほとほと困っていたのですよ。いや、こちらの様に商いを理解して下さる御婦人に出会えて私達は誠に幸運でございまして……」

「あら、そうなの。それは、残・念。色々頑張ってご褒美を貰おうかしらと思っていたのに。うふふっ……ねえ」

「は、はひっ……」


 デニスの嘘八百話も聞き流し、婦人はご満悦で新平の顎を指先でなぞり、反応の楽しんでいる。ここまで効くとは思ってなかったので、デニスの顔も引くついてる。ラディリアは冷めた目で新平達を見ながらおとなしく両手で茶を呑んでいる。

 新平は必死に自分から関心を逸らそうと話題を変える。


「ご、ご主人は?」

「主人はレオスクへ買い付けに出ているの、しばらく戻らないわ。だから、今晩は私がたっぷりと持て成してあ、げ、る、か、ら」

「ひいっ、そそそうですか。心配ですね。戦争中ですものね」

「そうね。道中煩く飛び回ってる天馬達に検閲といって襲われないか心配。嫌よね。早く女王達を倒してまっとうな国になって欲しいのに」

「……ほう……ご婦人は現状が我が国の正道でないとおっしゃるか」

 

 ラディリアが茶を呑む手を止めて問う。笑ってるのに目が怖い。


「あら、まともじゃないから反旗があがったのでしょう。こちらの傭兵さんは天馬騎士志願の方なのかしら、私達はあの人達が大嫌いなの。国境を守るという名目で顔を売り、ふしだらな衣装で飛び回ってはチヤホヤされて、更にはそれを鼻に掛けていい気になる始末。見苦しいったら無いですわ」

「鼻に……掛けていると……?」


 ラディリアが低く唸る。フラン達と仲良さそうだったし天馬騎士を馬鹿にされると腹が立つのだろう。


「ええ、ただ天馬に乗れるってだけで特権を振りかざしてとても迷惑だわ。いつも高みから人を見下して、天馬に乗れない女は女にあらずと云う態度には、もうんざりするわね。おかげでこの国の貴族連中が婚姻を求めるのは誰も彼も天馬乗り、天馬乗り。あんな卑猥な格好で飛び回る恥知らず達の何がそんなのいいのやら」

「いや、そうですなぁ。ご婦人の言う事もごもっともで、あれはこの国の害悪ですなぁ」


 ラディリアの裾を引きながら追従するデニスの額に汗が垂れる。普通だったら面白い光景なのだが自分も今はそれどころじゃない。


「婢しい出自でたいした器量も無い癖に、元天馬乗りというだけで領地に輿入りすると皆が大騒ぎするのよ。皆どうかしてるわよね。だいたい戦は男衆の仕事よ。耳目を集めたいなら大道芸人にでもなればいいのだわ」

「そ、そうですね。あはは……ひいっ?」


 俺を睨むなラディリア。喧嘩する訳にはいかないんだ。仕方ないだろが。


「その点、ラオリーデ公爵様や御子息のセドリッツ様は、真っ当な奥方様を迎えてありがたい事だわ。レオネール伯爵婦人の様な事がおきたらと思うとぞっとするわね。ねえ、貴方もそう思わない?」

「あははは! ま、マダム素敵な匂いですね! これは何の香水なのでひょー?」

「あら、恥ずかしいわ、これはね……」


 必死に褒めて話しをずらす。豚婦人がうっとりと説明してる間に、デニスがラディリアの首根っこを捕まえて必死に耳打ちしてる。ラディリアは不満そうなのだが、ここは抑えて貰わねば苦労してる意味が無くなる。なんかこの婦人、天馬騎士に色々個人的な恨みがあるようにも思えるが愚痴を聞くだけなら良いだろう。ラディリアよ堪えてくれ。


「さあ、ではお昼はご馳走を振舞わなくてはね。期待して待ってらしてね」


 上機嫌の婦人が食材の買い出しに出かける。留守番を託され残った自分達三人はぐっったりと椅子に崩れ落ちる。


「やー、思った以上に凄い女だったな」

「つ……疲れた……もう嫌だ。怖いあのおばちゃん」

「……」


  気疲れでぐったりした。ラディリアは口をへの字にして黙り込んでいる。分かり易い人だ。


「……この家を選んだのは間違いだったのではないか」

「そうだ失敗だ! ここには泊まりたくない! 早く逃げよう! 今すぐ逃げよう!」


 必死に訴える。このまま今晩泊まったら、昇りたくも無い階段を昇ってしまう気がする。もし今、鏡を見たら首に縄が掛かってるのを幻視しそうで怖い。


「えー。安全な寝床を確保したんだし、ここでじっくりと作戦立てようぜー」

「拒否! 否! お断りだ!」

「……私もここに滞在するのは遠慮したいな。あの御婦人は信用できない。説得されているように見えて、事が起きれば直ぐに私達を売り渡すかもしれない」

「そーかー? 魔法が効いてるんだぜ。少年にぞっこんだし、とても敵に回りそうに無えよ。お前さん腹立つ事を言われて、反感持ってるだけだろ。天馬騎士がコケにされたのが気に入らねえんだろうが、多少違いがあれど市井の女達なんてここらじゃあんなもんだぜ」

「なっ……」

「周りの諸国じゃ女は家を守れって風潮なのは変わってねえし、この国みたいに女が政事にも戦にも出るなんて珍しいしな。ここでだって田舎に行けば、天馬騎士になるなんて云いだす子供は親に殴られるもんだ。貴族連中には見目が良くて、政治に疎い天馬騎士達が好かれるんだ。それがあぶれた女達から恨まれるなんて今更だろ」

「………わかった。ここを拠点として構わない。」


 ラディリアはむっとしたまま黙り込んでしまう。 ……まあどんな国でも一枚岩ではないという事で。


「でも、俺は嫌だってば。逃げようって」

「さて、これからどうすっか? とりあえず、宿は確保できたんだ。」

「無視すんなよ! じゃ、じゃあ昼をご馳走になったら違う宿を捜しがてら町の偵察にいかないか? で、いい家があったらそっちへ行こうよ」


 食う物を食ってから逃げようとするあたり自分でもセコイとは思うが、今迄碌な食事がとれていない。騙して食事を貰うのは心苦しいが、普通の食事にありつける機会は逃したくないのだ。


「ここで、いいじゃねえかよ。食事は良い物を食わせてくれそうだし、夜は少年を生贄にすれはぐっすり休めるぜ」

「生贄ってなんだよ! 俺は休めねえよ!」

「食事は後で謝礼を置いておけばいいだろう。逆にあそこまで親身にされると、この家を退去した後に彼女が心配してあちこちに聞いて回り、兵士達に勘付かれてしまわないか心配だ」

「まあそこらへんは上手く誤魔化すさ」

「……ちょっ無視すんなよ。おい!」

「チンペー殿、それ程嫌そうではなかったではないか」

「何処見てたんだよ。思いっきり嫌がってただろ! 嫌だよ。怖えよ!」

「今晩楽しみだよな~ひひひ」

「勘弁してくれよ! 貞操の危機だよ!」

「なんだお前、まだなのか。いい機会じゃねえか」

「かかか関係ないじゃろうが!」

「……案としては、婦人に馬車を手配してもらって、変装して検問を抜けるというところだが」


 なんだよ。まともな案も出るじゃないか!


「そう、それ! ナイス! 賛成! 万歳! すぐ手配を頼もう」

「変装かー…お前等誤魔化すの下手そうだから心配だが、それぐらいしかねえか。確かに長居して下手に親切心だされて町長に連絡されても困るしな。ならバレる前に急ぎ馬車とか手配してもらって脱出してえな」

「な、なんだよ。二人共ちゃんと考えてるんじゃないか。脅かすなよ」

「馬車の手配はどうする?」

「あの豚に任せればいいんじゃねえか。全部任せろって言ってたんだから、たぶん金も出してくれるぜ」

「豚って……でもあの人に頼むと、内密に手配してねとか言っても、外聞気にせず色んな人に声掛けて一番豪奢な馬車とか手配しそうじゃないか? 口止めしても気を利かしたのよとか言ってさ」

「……そしてそこから不審を持たれて捜索されると……ありそうだな。あの手の人は、普通の馬車で早く手配できる方が良いと言っても、見栄を張りたがるからな」

「そんなの気にしたらキリがねえじゃねえか」

「でもありそうじゃない? せめて馬車はこっちで手配した方が良くないか」


 その後、金を出したくないのがバレバレのデニスを説得して、馬車の手配は新平達で行う為に外出する事になった。というのも、帰宅した婦人が外に出ていたという小間使いの小僧を連れて帰ってきたのだ。


「奥様。この方達は?」

「うふふ……わたくしの大事なお客様達よ」

「「「……」」」


 三人揃って青くなった。


 【親愛なる魅惑のタンゴ】に掛かってないので不審そうにこちらを探る小僧くん。冷や汗を流す新平達。隙を見て小僧にも踊りを掛けれないかと画策するのだが、警戒してこちらに近づいてこない。

 デニスが自分達は歓待を受けていると小僧に説明しようとするが、新平から見ても怪しい風体のデニスの言葉を聞く筈もない。目さえ合わせず婦人の言いつけを聞いて動き回るのでろくに説明もできない。婦人は押さえてあるので問題ないという考えもあるが、外出する機会が多い小僧を放っておくのは危険過ぎた。外でバラされる可能性が高い。

 終いには婦人が自分が歓待の料理を作ってるのに、何故小僧なぞに構うのかと不機嫌になりだした。なんとか機嫌を伺い馬車は自分達で手配しに行くからと、小僧に案内してもらう様に説得した。そしてに外に出たら隙を見て【親愛なる魅惑のタンゴ】を掛けてしまおうという計画だ。

 全てをアイコンタクトのみで立案し、婦人を説得した新平達。瞬間、心重ねて。初めて三人の心が一つになった時だった。


                    ◇


「そちらには何もないですが……」

「いや、実は君に折り入って話があるんだ」

「……」

「け、警戒するのは分かる。でもオベリア婦人にも関係ある話なんだよ」


 建物の陰に誘い込み、三人で小僧を囲む。やることは悪党の所業で、ラディリアと新平は内心情け無い。目配せを受けた新平が【親愛なる魅惑のタンゴ】を踊り始める。呆気にとられる小僧を尻目にデニスが説得を始める。


「婦人にも話したんだが、俺達は商人の徒弟と護衛で道中強盗に襲わ……」

「ジャジャーン! そう、俺達は旅の商人とは言いながらも、その実態は!」

「?」「……?」


 横で踊りだした新平が、突然妙な事を叫びだした。阿呆を見る目で訝しむデニスとラディリア。


「その実態はアルクス王子の密命を受けた秘密潜部隊なのだ!」

「え、ええ? 本当に?」


 何を言い出すのだこの馬鹿と止めさせようとしたが、聞いている小僧が目を輝かしているのに気づく。


(……もしかして、こっちの内容の方が良いのかもしれん。まかせよう)

(わ、わかった)


 荒唐無稽な説明が始まった。自分達はアルクス王子の密命を帯びて、王女領に捕らわれている王子の恋人へ文を届ける旅をしてるのだ。実は王子には将来を誓い合った姫がいるが、王女派の領地に軟禁されていて手が出せない。

 王女派内ではいつ彼女は殺されるか分からない。元宰相は政治家気質なので見捨てろと言われてしまった。そこで自分達が王子の為に、彼女を救おうと動いているのだ。オベリア婦人も事情を知って協力をもし出てくれた……という主旨を両手を振り回し大袈裟に踊りながら大声で訴える。

 意外とロマンチックな物語が好きな少年だったようで、小僧は目を輝かしながら、何度もうんうんと頷く。


 建物の住人や通行人が数人、何事かと覗いてくる。


「チンペー殿。こ、声を少し落とせないか……」 


 周囲の目が気になるラディリアが新平に囁くが、踊ってる新平は止まれない。自棄になったデニスも大声で合いの手を入れ始めた。


「なんだあれ」「本当?」「嘘に決まってんだろ」

 

 内容的には凄くヤバそうな話なのだが、新平が踊りながら叫んでるので、端から見るとふざけている様にしか見えない。デニスが手拍子しながら合いの手を入れてるのも大道芸を彷彿させる。ラディリアは羞恥で見物人に背を向けたまま固まった。


「さあ行こう! 君の協力が、かの姫と王子を結びつける事になるんだ!」

「はいいいっ!」


 最後に小僧の肩を組み叫ぶ新平に、小僧は歓喜の叫びを返す。説得は成功したようだ。そのまま明後日の方向へ行進して行く二人を、方向が違うとデニスが慌てて追いかけた。


「し、失礼する……」


 ラディリアは赤くなった顔を伏せながら、見物人を掻き分けて三人を追う。

 残った見物人達は、妙な寸劇に巻き込まれたらしい女剣士を同情の目で見送ったのだった。


                    ◇


 馬車の手配を終え、準備でき次第小僧が豚婦人の家に届けると言うので、三名は先に帰宅すべく町を歩いていた。


「だから勝手に台詞が出るんだよ。俺の所為じゃないよ」

「だからってだな、少しは場所を考えろよお前」

「……は、恥ずかしかった」


 話題は先程の新平の奇行についてだ。予想した通り新平が説得すべく浮かんだ台詞がアレだったそうだ。台詞と踊りは一体なので止める事もできず、そのまま熱演してしまったとの事。しかし、打合せもなく話を変えられては、二人から文句もでると言うものだ。


「とにかく、今度からはな……」

「おい……」

「お前等……」


 ふと顔を上げると……目の前に城砦の兵士と同じ格好をした連中が三人……


「…………」


 見詰め合う新平達と兵達。


「い、いたー! お前等だ!」

「やばい!」「どうする?」

 

 咄嗟にラディリアが剣を抜く。デニスはもう逃げる体制だ。新平は判断できず二人を見比べる。三人見事に連携は取れていない。瞬間、心離れて。三人の心は見事にバラバラだ。


「おい、見つけたらしいぞ」

「向こうか!」


 しかし、通りを挟んだ向こうからも声が聞こえてきたので、デニスは迷わず逃げ出した。ラディリアも踵を返して追いかける。慌てて新平も追いかける。


「ちくしょう! 町中も捜してたんかよ!」

「不覚だ。気を散じてしまった」

「って、何処に逃げるんだよ」


 笛が鳴り響く。うわぁお、時代劇の捕り物じゃねえんだぞ。

 焦って当てもなく入り組んだ建物の影を走る。後ろのあちこちから掛け声と足音が近づいてくる。やばい。豚婦人の家迄は、まだかなりの距離がある。


「どうする? どっかで待ち伏せして眠らせるか」

「場所あるか?」


 走りながらでは踊れない。相手が三名なら、ラディリアが壁になっている間に掛けれるかもしれないが、本人が切り合いは不安と言ってたので出来れば避けたい。しかし、そんな事を言ってる場合でも無い。どうする? それとも何処かに隠れるか?


「弓だ!」

「!?」


 ラディリアの声に振り返ってぎょっとする。 兵の一人が弓を取り出して追いかけてくる。踊りの事を知ってるのだ。踊りだしたら射殺する気なのだ。


「向こうからも来るぞ!」

「まずいぞ! 囲まれる!」


 三人共蒼白になった。走る速度が跳ね上がる。通行人を避け建物を曲がると路地裏に入り込む。しかし通りの向こうからも走って来る声が聞こえた。


「しまった!」

「ちくしょうめ!」


 思わず足を止める三名。後ろから足音が迫って来る。

 やばい。

 前後から来る。

 囲まれる。どうする。

 どうする?


 新平達は青い顔を見合わせる。


 あっさり追い詰められた。

次回タイトル:大薮新平 検問突破に挑む

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