09. 大薮新平 敵地に宿泊す
異世界に召喚された大薮新平。そこは獣がうろつき治安も悪く、しかも内乱が起きている国だった。知り合った少女達と捕らわれの姫様を救出した新平。しかし城から逃亡中に追っ手の翼竜に発見される。踊ると相手に魔法が掛かるという、謎のスキルを得ていた新平は【親愛なる魅惑のタンゴ】で翼竜を追い払ったのだった。
馬を失ってしまったので徒歩で街道を進む。
更なる追っ手が迫って来るかもしれない。踊りの効果が切れて我に返った翼竜が戻って来る恐れもある。急がなければならない。
三人では死んだ馬を処分する事もできないので、街道横の茂みに引き摺って死体を隠した。怪我は治っても体力は回復した訳じゃない。一刻も先へと逸る気持ちを抑えながらも歩き、夜中にリムザの街にたどり着いた。もう真っ暗だ。
なるべく急いで関所を越え、安全な女王派の土地へ逃げ込みたいところだが、とりあえず今晩はここで宿を探すしかない。新しい馬を買い、旅の準備も揃え直したいがそれは明日だ。
思った通りに門兵に誰何された。何せデニスはいいとしても新平は旅人の平服の上に兵士の皮鎧を着込み、ラディリアに至っては病人の貫頭衣一枚に何故か剣を佩いている。しかも夜中に徒歩で到着だ。怪しいどころじゃない。
打合せ通りにデニスに交渉を任せ、横で【親愛なる魅惑のタンゴ】を踊ってみる。こっちは何としても街に入れないと困るのだ。
……効いた……効いてしまった……効果も判明した。
これは魅了だ。チャームだ。鼻で笑ってた兵士が踊りが進むうちに新平に熱っぽい視線を向けるようになり、デニスの説明にうんうんと頷き門を通してくれて小銭まで恵んでくれた。
新平はガタイの良い兵士二人に肩に手を回され、兵の待機所に連れ込まれそうになり必死に抵抗、逃げ出した。男に警戒する女性の気持ちが良く分かってしまった。
【親愛なる魅惑のタンゴ】は相手を魅了し、強引に説得する。自分に好意を持たせるという心を操る踊りらしい。
踊っている間、どんどん言葉が浮かんできた。たぶん説得する言葉なんだろう。おもわず合いの手のように口に出す度に、兵士の自分を見る目が変わってくるのが分かった。
どうりでアドリブも嘘も下手な自分が、翼竜を相手にあんなにペラペラ喋れた筈だ。窮地に追い込まれ漫画みたいに何かが覚醒したのか!……とか思ったらとんだ勘違いだ。まあ、覚醒した能力が嘘八百を喋り捲るじゃ、それはそれで問題なんだが。
「いやー凄いやん少年。これを上手く使ったら大儲け出きるぜ。どうだ、俺と組まんか?」
小僧から少年に格上げされたようだ。力無く拒否する。嫌過ぎる能力だ。間男でも始めろというのか。【睡魔の踊り】といい、悪事に使えそうなスキルばかり増えていく。何故だろう。神さんよ俺に何をさせたいのだ。
とりあえず宿だ。デニスの知己らしい宿に入りやっと一息。二部屋なんて余裕は無い。二人部屋に男女三人詰め込みだ。ラディリアは渋ったが自分達は無一文。文句が云えた立場では無い。夜半だし、町に追っ手がいるかもしれないので部屋を分けるのも危ないから仕方が無い。この身なりでは下手に外も出歩けないから外廻りはデニスにお任せだ。それでも部屋で床板に座り、デニスが買って来たパンをかじると一息つけた。
「うあー……疲れたぜー」
「同じだぞー」
「……」
ラディリアは疲れきって声も無くなくベットに座り込んでる。重症でベットで寝てたのに、起きて直ぐ立ち回りし、馬で走った挙句夜中まで歩きずめだ。怪我は治っていても体力が持たないだろう。
頼んでいた湯が来て、体を拭くとの事で廊下に追い出される。
「そういや少年。これ試してみろ。パンを買うついでに買ってきてやったぜ」
鑑定紙というらしい。胸に当てて呪文を唱えると本人の名前、職業や能力を示してくれるので、一般的には身分証等につけるものらしい。
拉致された魔道士から何をされたのかわからないから、自分の状況を確認した方がいいとの事だ。結構高いものだと恩着せがましく言われたが、特に頼んでもいないし魔道士云々は嘘なのでなんとも答えに窮する。よくわからないがとりあえず礼は言って廊下に出る。
これは新平の珍しい能力を自分の金儲けに使えるか確かめたい、というデニスの下心だったと後日に教えられたが、当時の新平に気づける筈もなかった。
やることも無いので座り込み言われた通りに試してみる。紙を地肌に当てて言われた文言を唱える。用紙がなにかむずむず動いたので気持ち悪かったが、治まってから離すと何か文字が書いてあった。
人種、職業、Lv、スキル名……
「……え?」
なんだこれは。まるでゲームじゃないか。
思わず廻りを見回す。
もしかしてここは、何かのゲームの中なのか? 異世界とかではなくてって別物? 漫画みたいにゲームの中に閉じ込められたとかいうやつだったのか?
自分の手足を触る。全然違和感が無い。静脈だって見える。これが作り物なんて精巧すぎる。廊下の壁を触る。違和感が無い。木目をほじって細部もきちんとしているのを確認する。匂いもある。細か過ぎる。これがゲームとしては無理があり過ぎないか。
狭い廊下で、でんぐり返し。……もちろん板間が軋むだけで何も起きない。
ふと気づいて足の裾をまくりあげる。中三の時に膝の皿を割って手術した後が……無かった。
「!?」
ぎょっとして飛び上がり、階段から下に落ちそうになった。ちょっと待て。この身体、本当は俺の身体じゃないのか? 子供の時に負った腹の傷痕も……無い。慌てて確認するが今迄負った古傷はひとつも無い。
(嘘だろおい)
体温も感触も、手足を動かしてみても違和感が無い。とても自分の身体じゃないとは思えない。しかし古傷は無い。可能性としてはえーと、えーと…
①この世界で作られた新しい身体に心が乗り移ってる。
②この世界に来た時に体が新たに作られた。
③やっぱりこれは夢。
……駄目だ。仮にどれか判ったとしても、その先をどうすれば良いのかが思いつかないので意味が無い。
普通、この手の物語の主人公なら、ここで色々推理して今後の指針になるんだろうけど、何も思いつかない頭の悪さが情けない。分かったのはこの身体は日本にいた時の自分の身体じゃないって事だけだ。
(あ、なら膝の半月板を損傷してないから、膝崩れ心配なく全力で走れるな。それは嬉しいかも)
とりあえず古傷が無いので、健康状態に問題が無い事は想像できる。
この手のゲームが好きだった姉ちゃんだったら色々思いついたろうが――いや、大前提で運痴の姉ちゃんじゃ、最初の丘で生き残れていないだろう。俺で良かったんだ。
姉が狼達に襲われる状況を想像して身震いする。自分のゲーム知識はほぼ姉の物だ。体育会系の自分はあまりゲームをしなかった。中学で膝を手術して動けなくなってから、暇になったので姉の苦手なSRGやアクションゲームを一緒に(代理)操作していて覚えた知識だ。
会話シーンを姉が、戦闘になると自分が操作するという協力操作だった。何故か会話の部分だけを何度も繰り返してニコニコしては戦闘が始まると自分に丸投げし『早く次の面に行って』と頼むあのやり方は、今思い返せば奇妙な遊び方だった気がする。
でもその時に延々と説明されたゲーム世界の設定や人物相関図の知識おかげで、今自分は色々予想が立てられている。人生何が上手く働くか判らないものだ。
(あー……早く帰りてえなぁ……)
ため息をついて鑑定紙を改めて見る。
見知らぬ横文字なんだが、TVの字幕みたいに日本語が浮き上がって見える。文字まで副音声か。変なの。
【名前】 大薮新平
【人種】 人間
【職業】 踊り子
【Lv】 3
【スキル】睡魔の踊り(七六/一〇〇)
癒しの女神のムスタッシュダンス(二七/三十)
親愛なる魅惑のタンゴ(八/一〇)
やっぱり職業踊り子なんだ。
レベルがある……どうしろというんだ。人を殺すと上がるとか……ぞっとするな。
城内に潜入した時も、相手を殺すなんて考えもしてなかった。たぶん自分には殺し合いなんて無理だろう。獣なら殺せるだろうか……そんな訳ないだろう。だいたい眠らせて逃げてるのにレベルが上がる筈もない。
しかし Lv3という事は何かが原因で上がってる訳だ。踊りが効くと経験値が入るとか。 ……まぁいいや。あまり興味もない。自分はただ帰れればいいのだ。何か使命を受けたとしても覚えてないし、受ける義理もない。
スキルの横に経験値らしき数値が表示されてる。これはなんだろう。【睡魔の踊り】はあと二十四回踊ればレベルが上がるって事なのか?
七六か。そんなに踊ったかな。いや、一回の踊りで経験値ポイントが一とは限らないし。レベルが上がったらどうなるんだろう。より派手な踊りになるとか……どこからともなく光が当たって、音楽が流れ始めるとか……嫌だなぁ。しかし数がおかしいよな。二回しか踊ってない魅惑のタンゴが何故八なんだ?一回の経験値が四なのか?
ふと気づく。
……これ経験値じゃなくって、使用残回数じゃないのか? タンゴは八/一〇で二回踊ったので後八回しか出来ないってことじゃ……ヒゲダンスも三回しか踊ってないので残り二十七回。辻褄は合う。
回数制限がある。
ぞっとした。
危ないどころじゃない。もし気づかないで、敵地で回数が切れたら殺されてたぞ。今気づいたのは幸運という事かもしれない。
「もういいぞ」
「あ、うん。入るよー」
部屋からデニスの声が聞こえたので、ドアを開けて中に入る。
「………」
えらい美人さんが居た。俺が唸ってる間に来たのだろうか。デニスの向かいのベッドに腰掛けている。簡素なワンピースを着てるが、顔立が整いすぎて村娘なんてレベルじゃない。姿勢もいいので、映画の女優さんみたいだ。
「は……あ……こ、コンニチワ」
「どうしたのだチンペー殿」
「チンペーじゃねえ! って、あんたラディリアなのか?」
「何を言ってるのだ」
「小奇麗になったら、おめえさんが美人だったんでうろたえてんだよ」
「……っ! 何を馬鹿な事を」
ラディリアは吐き捨てたが、ちらと向くと呆然と魅入っている新平と目が合い。慌てて顔を背ける。
かなり……というか凄い美人さんだった。
肌は真っ黒で薄汚れた貫頭衣一枚だったのが、顔や身体を拭いて身奇麗にしただけで劇的な変化だった。肌なんか傷一つ無い真っ白だ。
髪までは洗っていないみたいで、乱れたままくすんだ色だが、もしキンキラの金髪だったら洗って櫛を入れると更に映えるだろう。正直ここまでの美人さんを身近で見るのは初めてで、近寄りがたくて腰が逃げる。
(うわ…作り物の蝋人形みてぇ……)
失礼な例えだとは思うが、語彙が貧弱なのでそれしか思いつかない。逆に表情が動くと人間味を感じてほっとする。ラディリアの方も露骨にこんな反応をされたのは初めてだったらしく、どうしたらいいのかわからず、もじもじしている。デニスがケッと吐き捨てた。
(お、俺は今日、この美人の乳を揉んだのか。なんという幸運。ででできればもう一度この格好で……)
「……何だその手は」
気がつくと無意識に両手がわきわきと蠢めいていた。
「い、いや! 何でもない。何でもないのよ、うん」
語尾がおかしくなる新平。ラディリアは冷めた目で見返し、胸元を隠すように押さえる。デニスは苦笑いする。
考えている事がバレバレな新平であった。
「で、どうかしたのか」
「ああ…そういえば。えーと……変なんだ」
「変なのはお前ぇだろ。こんな時に発情すんなよエロガキ」
「いや、ち、違くて」
慌てて話を変え、自分の身体の傷が消えてる事を説明する。すると二人も自分の身体を確認し始めた。
「そういえば……消えてるな」
「え?」
ラディリアが掌を何度も握り返しながら呟く。
「剣ダコが残っていない。どうりで剣が握りにくいと思った」
再生した左掌の剣ダコが消えてるそうだ。左手は切断されていたので、再生すると新品扱いで剣ダコとか古傷とかは消えたのだろう。
「いや、だとしてもおかしい……怪我をしなかった右手の剣ダコや古傷も消えている」
「へ?」
「あ、本当だ俺も腹の傷どころか、他の古傷も綺麗に消えてら」
デニスまで背中を向けて腹を捲って確認してる。
「え。あれ?」
どういう事だ? ……あの再生の踊りは欠損した手足の他に、あちこち傷ついた箇所も全て修復したって事か。じゃあ、俺の身体はどうなってんだ。何故俺も傷が無いんだ。ああ違う。自分は【癒しの女神のムスタッシュダンス】使った訳じゃないので条件は違うんだ。
何やら混乱してきた。
「まぁ綺麗になったんなら、良かったじゃねえか。おおっ、ここの古傷が消えてたのか、嬉しいねえ。肩を上げてもつっぱらねえや」
「うむ……そうなんだが。剣に力が入らないのだ」
「力?」
「ああ……最初は病み上がりの所為かと思ったのだが、今までと同じ様に剣を振っているのに力が入らない。確かに傷は残らず消えているのだが……どうも以前より力が衰えたようにしか思えない。正直この状態では戦うのは厳しい」
「昨日まで寝込んでたんだっけ? その所為じゃねえか。病み上がりじゃなあ」
「私もそう思っていたのだが違うようだ……どうにも身体が思うように動かなくてな。傷は残ってないのだが……」
手足が復活する。全身の怪我も治ってる。でも力は落ちている……
「もしかして、怪我した部分だけじゃなく、全身を正常な状態に治しちゃったのかもしれない。えーと……つまり鍛えた筋力も本来あるべき平均的な力に戻ってしまった……とか」
全身の古い傷も治ってるという事は、あの踊りが『正常な健康状態に治そう』としたのだろう。鍛えた筋肉ってのは負荷を与えて作ったものだから、『正常な状態』からは外れてしまうのかもしれない。切断された手足が鍛える前の筋肉のつき方で復活したら、切断面で筋力のつき方にズレが生じてしまう。かといって鍛えた筋肉の状態を維持したまま、失った手足が剣タコとかついたまま復活するのはおかしい。それでは治療ではなく時間遡行による再生。復元だ。踊りの名前が『癒し』という名前なのだから、これはやっぱり治療してるのだろう。治療なので復活部分とズレが起きない様に問答無用で全身が治療されてるのかもしれない。
まずいな。それじゃあ、小さな擦り傷でも、この踊りに掛かると全身が作り治されちゃうんじゃないだろうか。過剰治療どころじゃねえ。しかも本来あるべき状態に戻るので、鍛えた箇所は全部戻っちゃう。突っかえながらも説明するとラディリアが俯いて考え込む。
「そうか仕方ないな……あ、いや感謝はしているのだ。あのままでは私は遠からず死んでいたのだろうし、こうして動けるようになって本当に感謝している」
「ほうほう。命の恩人って訳だ。そりゃちょっと乳揉まれたくらいじゃ怒れねえよなあ」
「なっ……! それとこれとは話が違っ……」
真っ赤になって胸元を押さえるラディリア。綺麗な姿になったので、その仕草はめちゃくちゃ可愛く見えてしまう。新平と目が合うと何故か慌てて剣を探りだした。
「あれはわざとじゃないって! ちょっ、剣を手に取らないでくれ怖いから!」
「まあ、兵士を見つけても戦わないように逃げる前提で考えるしかねえわな」
「あああ、そうだコレコレ!」
話を変えるべく、慌てて鑑定紙を出して振りかざす。
「おおー、どうだった?」
デニスに鑑定紙を渡して二人で眺める。
「……何だ?」
ラディリアも近づいて来て紙を覗き込む。顔が近い。ちょっと、緊張するからその姿で近づかないで欲しいんだが。
「いや、デニスに貰った鑑定紙とかいうのを使ってみた」
「ほう」
「……やっぱ踊り子なんか」
……どこかの神殿へ行けば転職出来るのかな。
「男なのになー」
「うるさいわ!」
まったく同意見だが、人に言われると腹が立つ。
「睡魔の踊り、 快しの女神のムスタッシュダンス、 親愛なる魅惑のタンゴ……ハ! たんごって何だ? 変な名前ばっかりだな」
これまた大きなお世話と云いたいところだが同感だ。何だろうこのセンスのカケラも無い、いい加減な名前は。
「チンペー殿が名付けたのではないのか?」
「いやまったく。踊りの最後に頭に名前が響くんだよ。それがコレだね」
頭の横で掌を開き、閃く電球的な説明をする。
俺が自分で名付けたら…名付けたら……思いつかない。こんな事、考える訳ないしな……内容的に「ス○ープ」「ベ○イミ」「チ○ーム」じゃ駄目なんかな。
「頭に響く? へえ……」
「踊り子という職業は始めて見たな。しかも男で踊り子とは聞いた事も無い。貴方は何か踊りの修練でもしていたのか」
「いや、さっぱり」
中学時代は陸上をやっていて膝を割って挫折。以降は帰宅部アルバイターだったんだぞ。踊りの経験なんて町内の盆踊りか小学校のフォークダンスくらいだ。
「ではやはりその貴方を拉致した魔道士達の仕業か……」
「……」
何と返答したものか。異国人を拉致して謎の魔法舞踏を覚えさせる魔道士集団が彼女の中では暗躍している。そんな奴等はいない……
「踊りの横にあるこの数は何だ」
「ああ、何だろな」
「たぶん……残り使用回数みたいだ」
「はあ?」
「何と。回数があるのか?」
思った通り二人も驚く。
「多分。そう仮定すると計算が合うんだわ。タンゴは二回踊って残り八回。ダンスは三回で残り二七回」
「……なんとまあ、変な魔法だな」
「……こりゃ知らずに途中で切れてたらまずかったな」
「うむ……危なかった」
「悪い。俺もコレ見て初めて知った」
「まぁ良かった。それくれよ。さ、明日も早いんだ。早く寝ようぜ」
「そだな」
「……」
釈然としないが確かに今は先を急ぐのが優先だ。というか早く休みたい。
ベットは二つ。嬉しい事に身体の大きい新平に一つ。二人は一つベットに一緒に寝てくれるそうだ。硬いベットだが寝床があるだけでも本当にありがたい。
「うあーっ……」
久しぶりのベットだ。硬いし臭いが徹夜で走り回ってくたくただ。吸い込れそうだ。
「小僧。夜中にこっちに来たら。新しい傷が増えるぜ」
「……」
「……おやまぁ」
デニスの軽口にも返事がない。新平は既に眠りに落ちていた。
◇
――そして翌朝。デニスに叩き起こされる。寝足りない新平は恨めしい視線を向けるが、デニスの表情に嫌な気配を感じて目が覚める。ラディリアも起きて横に立っており苦い表情を浮かべている。
「……まさか、また何か」
「ああ、まずい。出入り口を固められてやがる」
町に閉じ込められたようだった。




