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国王陛下の恋のお悩み【連載版】  作者: 新田 葉月
一章 ラーシェ編
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第十七話 三度目の正直4

 そう考えてみれば、確かにため息を吐く陛下は恋する乙女の様……。


 くっ……盲点でした。自分の狭すぎる視野に情けない限りです。


 わたしはがしりと陛下の手を掴みました。

「陛下! 頑張りましょうね!」

「は? あ、あぁ……」

 なんとなく語尾が疑問の音を帯びていた気がしますが些細な事です。


 お任せ下さい陛下! 陛下の恋、必ず実らせて差し上げますからね!


※※


 まずはリサーチです。陛下の想い人を特定しなくてはなりません。わたしは人の感情に聡いイリアに相談してみることにしました。


「ねぇ。そういうわけだからイリア。陛下の想い人を知らない?」

「あんた馬鹿でしょう」

 うっ、いきなりの冷たい言葉です。この前、行かないで……と可愛らしく泣いていたイリアはどこに行ってしまったのでしょう。


「なにが馬鹿なの!?」

 わたしは立ち上がってバンっと机を叩きました。わたしは真面目なの! と宣言します。

「全部よ馬鹿。取りあえず座りなさい馬鹿。みんな見てるわ馬鹿」


 語尾のように馬鹿って言わないでよ! ですが、言葉通り、食事中にいきなり立ち上がったわたしに視線が集まっています。慌てて座りました。どうやら興奮していたようです。

 深呼吸。すー、はー、すー、はー。よし大丈夫です。


「具体的にはどれが?」

「あのねぇ」

 イリアは呆れたような顔をして何かを言い掛けましたが、ため息をついてやめました。

「自分で言わないといけないわよね……」

 その口振りは……

「イリア、陛下の想い人を知ってるの!?」

 ええ、とイリアは頷きます。

「教えて!」

「嫌よ」

 うっ。一刀両断されてしまいました。そうですよね。プライベートな事ですもの……。しかし、わたしは諦めません。

「じゃあ、ヒント! ヒントを教えて!」

「……まぁ、それくらいならいいかしら。質問したら答えるわよ。三つまでね」

 ふむ。三つ……。慎重にいかなくてはいけませんね。

「わたしの知っている人?」

「ええ。王宮にいる人は殆ど知っているわ」

 なるほど。なら、一安心ですね。知らない人だったら大変でしたから。

「うーん。陛下に釣り合う人? 身分とか、容姿とか、年齢とか」

「良い質問ね。どれも問題はないわ」

 むっ。それは良いですね! そこまで大丈夫なら、告白してしまえばいいのに……。殆どの女性は陛下に告白されたら二つ返事で頷くと思いますが。

 しかし、うん。なかなか絞れてきました。陛下に釣り合う身分といったら、伯爵以上。そして、大体同じ年くらい。それに付け加え、美貌の持ち主……。頭の中にいくつかの候補が上がってきましたよ。

「じゃあ、最後。身体的な特徴は? 背が高いとか、逆に低いとか」

「背は普通よ。特徴は……そうね。ラーシェ国では珍しい髪色ね」

 ……あれ。そうなると……。

「一人、しかいないけど……」

 イリアは目を開きます。

「そうよ。……気がついたの?」

「うん。ずばり―――」

 わたしはしっかりと、指を上げました。


「イリアだね! いたっ」


「本当に馬鹿ね」

 ぼ、暴力はんたーい。イリアに頭を叩かれました。

 だって、イリアなら陛下が悩む理由も分かったのです。親友の想い人ならば陛下も悩みますよね。

 むっと頬を膨らませます。

「……まぁ、でも惜しいと言えば惜しいのかしら……? 距離的に」

 ん。最後の台詞はよく聞こえませんでしたが、惜しいのですね? ということはイリアと同じ黒髪のクールビューティーなタイプということでしょうか。しかし、ラーシェ国には……。


「……は!」


 気がついてしまいました。そうです。わたしの知る人でも一人、いるではないですか。陛下が悩んでも仕方ないと思える方が!

 ガタンとテーブルを動かしました。

「もしかして……」

 イリアが優雅に頷きます。

「そこからはルシアン様本人に聞いてみればいいわ」

「行ってくる!」

 あぁ。陛下。


 陛下は―――アスルート帝国の宰相、エカチェリーナ様がお好きなのですね!

 

 エカチェリーナ様。ついこの前、ラーシェを訪問した黒髪の美女です。その身に背負った悲しき運命。それを乗り越えてきた精神は尊く、気高いものです。まさに陛下にぴったりの女性です!

 そして使用人にも平等にお優しい、素晴らしい方なのです。


 しかし、エカチェリーナ様には既に婚約者様(邪魔者)がいらっしゃいます。

 アスルート帝国の王太子様。こちらもエカチェリーナ様に劣らず有名な方です。悔しいですが、陛下と同じぐらい綺麗なお顔をなさっています。しかも、二人は仲むつまじいとの噂……。


 それに、敵対はしていないとはいえ、アスルート帝国の王太子の后様に恋慕しているとなると、摩擦が起こってしまう可能性があります。

 陛下がわたしにお教え下さらなかった理由が分かりました。これは陛下一人の気持ちですむ問題ではなく、下手をすると国を巻き込んでしまいます。


 国の為に青春を注ぎ、努力なさった陛下のやっと芽吹いた恋なのに。なんておいたわしい。陛下は想いを殺すしか無かったのでしょう。



 ですが、陛下。

 諦めるのはまだ、早いです。


 有能なエカチェリーナ様がいらっしゃればアスルート帝国との摩擦が起きてもなんとかなるかもしれないではありませんか! 

 陛下の幸せのため、多少の苦労なら平気だというのはわたしだけの意志ではありません。国民みんながそうおもっています。それだけ、陛下は素晴らしい君主であるのですから。


 どうか、 抱え込まないで下さい。


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