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国王陛下の恋のお悩み【連載版】  作者: 新田 葉月
一章 ラーシェ編
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第十六話 三度目の正直3

一人称リディアナ視点。


ここから短編の内容に触れますが、短編とは内容がやや違い、そして、大分加筆していますので、お手数ですが、よろしければこちらもお読み下さい

 長いため息が部屋に落ちました。


 わたしのではありません。国王陛下、ルシアン様のものです。

 輝くような金色の髪。思慮深い碧眼。パーツパーツが完璧なバランスで構築されたお顔。

 民に慕われ、貴族達からも憧憬の対象であらせられる陛下が先ほどから長いため息をついてばかりいるのです。

 いったい、どうなさったのでしょうか。なにか、深い悩みがあるようなご様子です。

 帝国との問題は無事決着がついたばかりですし、今年の農作物の実りはとてもよいです。飢饉も起きていませんし、しばらくは国の行事も御座いませんから、お仕事の悩みではないようなのです。


 ならば、なんなのでしょう。

 

 わたしの日頃の些細な悩みは陛下に相談すればたちどころに解決しました。先を見通すような陛下の碧眼は物事を見誤りません。

 そんな、陛下が思わずため息をつくような悩み事。わたしの平凡な頭では到底思いつきません。


 うーんと、思わず唸ります。向けられる笑顔もどこか弱々しく表情にはやや疲れがにじみます。そんな陛下をみると胸がギリギリと痛み出します。



 わたしに相談などしなくても聡明な陛下のことです。時間がたてば、きっとお悩み事も解決するのでしょう。


 けれど……、のんびり待っているような時間がわたしには残っていないのです。

 わたしがここで過ごせる時間はあと僅か。もうそろそろ引き継ぎも済み、1ヶ月ほどで、実家に帰ることになります。


 社交界はよくさぼっ、こほん。仮病を使っておりましたが、そんなツケがここで回ってくるなんて……。婚約者を決めると呼び出されるくらいなら積極的に社交界に出て、理解のある婚約者を作れば良かったと後悔しています。


 わたしが行くまでに、陛下のお悩みは解決するでしょうか。もし、しないのなら、わたしは作り物の笑顔で陛下とさよならをする事になります。

 そんなの嫌です。

 わたしは最後に陛下の心からの笑顔がみたい。心からの笑顔で送り出していただきたいです。


 ですから、不肖リディアナ・コトル。陛下のお悩み解決に協力させていただきます!



※ ※


 といっても、わたしには陛下のお悩みがわかりません。陛下に教えていただけるのなら一番良いのですが……。


「陛下、どうかなさったのですか?」

「……なんでもないよ」


 この通り。

 弱々しく微笑まれるだけで話して下さいません。


 いいえ。分かっています。悩みなんて誰にでも話せるものではありません。国王であらせられる陛下ならなおさら。

 そんな人はいないとは思いますが、弱みにつけ込む方もいらっしゃるのですから。


 陛下は、確かにわたしと二人きりの時以外はいつも通りの様子で気丈に振る舞っていらっしゃいます。周りに心配をかけないよう……。おいたわしや、陛下。涙ぐましい努力です。

 悩みは話して下さいませんが弱みはこのわたしに見せて下さっているのです。


 ならば、わたしは陛下の信頼に応えなくては!


 推察しましょう。国の事ではないのは確かです。となると私的な事でしょうか。親子関係……でもありませんね。それで悩んでいるのはわたしですし。友人関係かと思いこっそり、陛下の親友の騎士団長フィリス・マグナム様との様子を覗きましたが至って良好でした。


 ……くぅ、ならば何なのでしょうか! 簡単には分からないだろうとは思っていましたが……思いの外難しいですね。


 窓の外を見てため息をつかれる陛下。陛下と同じく窓を見つめてみます。


 外にはちょうどイリアとマグナム様がいらっしゃいました。マグナム様が大輪の薔薇を抱え、イリアがそれを断っている様子……。イリアはとても美人で、有能ですから勿論よく好意を寄せられます。ですが、大抵イリアの纏うブリザードに熱く燃える恋心を消されてしまいます。大抵の方が三カ月もつかどうか……。

 そんななかマグナム様は非常に長くイリアを想っていらっしゃいます。もう年単位ですから。

 冷静な顔のした、戦闘狂の気があるイリアと可愛らしい顔ながら、騎士団随一の実力をお持ちのマグナム様。実はお似合いなのではないのでしょうか。わたしは密かに応援したりしています。最近はようやくイリア呼びを許可されたようですし、イリアの呼び方も騎士団様からフィリス様と変わっています。

 

 イリアの氷の心を溶かすのには時間がかかるでしょう。けれど、イリアが恋するとしたらマグナム様だけだと思うのです。

 なかなかに前途多難な恋ですが、是非頑張って欲しいですね。


「……あ」

 小さく声が漏れました。

 そこまで考えた時、天啓の様にマグナム様との会話を思い出したのです。


『前途多難な恋ですね』

『……まぁね。でも僕は諦めないよ。それにルシアンよりは前途多難じゃないしね!』

 

「ああああっ!!」

「り、コトル嬢っ? なにかあったのかい?」


 ああ、なんてこと。陛下のお悩みは恋!


 陛下は恋で悩んでいらしたのです!!


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