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国王陛下の恋のお悩み【連載版】  作者: 新田 葉月
一章 ラーシェ編
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第十二話 8 剣技大会[1]

 最近は天気の崩れが激しかったのですが、そんな不安を吹き飛ばすような晴天が広がっています。


 今日行われる剣技大会にもよい影響がありそうですね。といっても天気が良いことが剣技にとって良いことなのかはわたしには分かりかねるのですが。

 国内で年に一度開かれる全騎士団統一の剣技大会。見事十本指に入った騎士さんは栄誉ある称号を賜ります。

 そんな大会ですので国内からの注目が高く、見渡す限り人、人、人。

 普段はあまりこういった行事に参加しないのですがイリアに誘われたのでのこのこやってきました。イリアからのお誘いなんて珍しいです。しかも、人混みが嫌いなイリアがわざわざこんな所に! もうこれは騎士団長様、フィリス・マグナム様との進展があったとしか考えられません。剣技を見つつ問いつめてやります。差し入れまで用意している所を見るとなかなか良い関係なのではないでしょうか。楽しみですね。ふふふ。


「リディー何笑っているの? 怪しいわよ」

 失礼な。でもまぁ、精々油断しているがいいのです。様々な手練手管を用いて聞き出してやるんですからね!

「何でもないよ」

 なおもじっとりとした視線を注がれますが、ふふ。こんな所でボロを出す私ではありませんよ。


 イリアが、既に席を取っていたので席の確保には困ることなく、私たちは試合を観戦します。フィリス様の試合はまだなようですね。知っている方はいないかときょろきょろ辺りを見回します。

「あっ!」

 いました。アルフさんです。ちょうど始まる様子。頑張れーと心の中で応援します。まぁ、アルフさんも10本指には入っていた方なのでほぼ勝利は確定されたようなもの。案の定、あっさりと倒しました。

 これで、アルフさんの人気が高まりそうですね。とても良い方なのに、浮いたお話を聞かないので残念に思っていたんです。このアルフさんの実力をみればきっと素敵な女性が現れるはず! わたし、うれしいです。


「あれぇ、美しい女性が隣なんてラッキーじゃーん」


 わたしがアルフさんの勝利に喜んでいると、その余韻を打ち消すような無粋な声がかかりました。

 声をかけてきたのはおそらく下級貴族の方か平民の方でしょう。動作に品がないですし、公爵令嬢わたし伯爵令嬢イリアにかける声にしては軽すぎます。わたし達を知らないほどの身分なのでしょう。まぁ、わたし達は今私服で、侍女服の時ほど分かりやすい格好をしていませんが、それでも上質な生地の服を着ていることくらいわかるでしょうに。

「……リディー。行きましょうか」

「へぇ? リディーちゃんって言うんだ。待ってよ。せっかくだから話してこーよ」

 馴れ馴れしくリディーちゃんなんて呼ばないで下さい! と言いたいところですが、事が荒立つのは避けたいので無言で立ち上がりました。忍耐は大切なのです。

「待ってってば」

「ひゃ」

 しかし、男性はそのわたしの気遣いを無駄にするがごとく、わたしの手をつかんで引き止めます。思わず小さく悲鳴が漏れます。

 視界の隅でイリアが動きました。次の瞬間には男性の首もとには短剣が。


「ひっ」

 

 男性にイリアの氷点下の視線が降り注ぎます。

「ねぇ、貴方がその汚い手でふれたその子、公爵令嬢ですの。……処罰は追って連絡しますわ。ザーサード様?」

 い、イリア格好いいです!! しかも、きちんと貴族の名前を覚えているなんて、流石です。イリアは本当に、才色兼備という言葉が似合います。見た目に反し、剣の扱いにも長けているのです。でもその短剣は仕舞いましょうね。危ないですし。

「出て行きなさい」

 短剣をしまうと冷たい声音でイリアが言います。女王様チックな物言い、とてもイリアに合っていますね。怯えつつ出て行った男性を確認してから腰を下ろしました。

「ありがとう」

「いいえ。連れてきた私の責任ね。ごめんなさい」

「気にしないで。格好いいイリアがみれて得した気分!」

 そうにっこりと笑うと少し目元を緩ませてくれました。うん。格好良くて可愛くて、イリア本当に大好きです。


 馴染みの騎士さんの試合が始まったので気を取り直して観戦します。

「だ、大丈夫!?」

 あれ、聞き覚えのある声が。……アルフさんです。ぱっと振り返ると、鎧を着たままのアルフさんがいました。軽く息切れしています。えっと、わたしに声をかけて下さったようですね。

「アルフさん、こんにちは。試合お疲れ様です。大丈夫とは?」

「はっ、は……。いや、リディアナちゃん達が絡まれているのが見えたからさ、大丈夫みたいだね」

 おお、それをみて試合直後なのに走ってきて下さったのですね! 騎士の鏡です。

「ありがとうございます! イリアが助けてくれたんです」

 お礼を言って、はい、とタオルを渡しました。どなたかに差し入れしようとたくさん持ってきたのです。

「ありがとう」

アルフさんはイリアとも挨拶を交わし、先ほどの男性がいた位置に腰掛けます。

「それにしても遠いのによく分かりましたね」

「それは、俺がリディアナちゃんを捜してたから……じゃなくて、ほら、二人とも目立つ容姿だからね」 

 確かに、イリアは美貌もですが、黒髪は珍しくては目立ちますし、わたしもラーシェ国ではあまりみない髪色ですしね。ラーシェ国には茶に近い金髪と、茶髪が多いです。

「アルフさんは、この後の試合は?」

「もう午前の部は終わったよ。あとは午後」

 ということはもう予選は通過なさったのですね。次からは予選を勝ち抜いた強豪との試合になるのですか。

「頑張って下さいね」

「リディアナちゃんに応援してもらえると疲れも吹き飛ぶな」

 疲れているでしょうにリップサービスまで。良い方ですね。普段言わないようなやや気障な言葉を口にしたアルフさんはほんのりと頬を染めました。


 「……ほう」

 煌めく金髪、思慮深げな碧眼を持った美貌の持ち主がアルフさんの背後に突然現れ、肩に手をかけました。


「そんなに体力があるのなら、私につき合ってくれないか?」

 麗しいお声のその御方は―――


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