第一話 目覚めの一杯
大変遅れてすみません!
連載開始しました!
シャーッと音を立ててカーテンを開きます。
上がり始めたばかりの朝日が私に降り注ぎ、半覚醒の頭を覚ましてくれました。良いお天気です。陛下の今日の執務に滞りは無さそうですね。安心しました。
私はリディアナ・コトル。
陛下付きの侍女という名誉な役職に就かせていただいています。
お茶入れ以外全てにおいて不器用っぷりを発揮する私がこんな大事な役職に就かせて頂けているのは偏に我が主、国王陛下であらせられるルシアン様のお陰なのです。
国王陛下のルシアン様。
輝く金髪と思慮深い碧色の瞳に端正なお顔。統率力もあり、政治方面にも明るく、民の事をよく考えた政治をしてくださいます。
眉目秀麗。頭脳明晰。博学多才。品行方正。文武両道。
こんな言葉では足りないくらいそれはそれは素晴らしい御方なのですよ。私はもちろん、国民の大半は陛下の事を尊敬しています。国王陛下だからではなくルシアン様だからこんなにも好かれているのでしょうね。
幼なじみとして育った私としても誇らしい限りです!
冷たい水で顔を引き締めます。
さあ、早く陛下を起こしに行かなくては。その前にまずは今日も陛下に喜んで頂けるようなお茶を入れる準備をしましょう。
朝の目覚めの一杯は少し濃いめにします。
陛下の好きなハーブを入れて朝に相応しいお茶を。その日その日の陛下の体調を考えて微妙にブレンドを変えているのですよ。
お茶の用意を済ませたら陛下の寝室の扉を叩きます。真面目な陛下は起こされることなく自分でお起きになっているのですぐに返答があるはずなのですが……。
いったいどうなさったのでしょう。少し待ちましたが扉は開きません。
ひょっとして寝ているのでしょうか? 昨日は確か早めに就寝なさったはずですが……。好きな本でも読んで夜更かししてしまったのでしょうか?
もう一度控えめに扉を叩きます。やはり返答はありません。
大変です。このままではお茶が冷めてしまいます。それに本日の予定はぎゅうぎゅう詰めです。
ここは心を鬼にして起こさなくては!
「陛下、入りますよ」
一応声をかけてから扉を開けます。光輝く金髪が真っ先に目に入ります。
思慮深い碧色の瞳は長い睫によって隠され見えません。
眠り込む姿は絵画さながら。
陛下が眠る姿を見たのはいつ以来でしょう。いつも私が来る時間にはしっかりと着替えをすませて微笑んでいらっしゃるので忘れてしまいました。
いつもの優美さが少し減り、なんだか幼い子供みたいな寝顔。ふふっ。とても可愛らしいです。
……ですが。これはいただけません!
陛下は机に突っ伏して寝ていました。その下には本が。
「もう……!」
溜息でもつきたい気分です! あの状態で寝てしまっては腰も痛い事でしょう。マッサージの予定を組み込むスペースはあったでしょうか。とりあえず陛下を起こさなくては。
「陛下」
ぽんぽんと背中を叩きますがちっとも起きる気配がありません。
「陛下」
「ん……」
ゆさゆさーっとゆすりますが身じろぎしただけでした。……むぅ。長い間起こしてこなかったので勘が鈍っているようです。確かに私が起こしていた時期もあったはずなのですが……。
くぅっ! このままでは陛下付き侍女の名が廃ります! 昔はどうやって起こしていたんですっけ……?
微かな記憶を手繰り寄せて考えました。