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プロローグ
久々の投稿で緊張です。
『ANGEROSA』の設定を一部借りて書いた作品です。
とにかく楽しんでいただけますように!
よろしくお願いします★
「――よし」
口元を拭い、青年はガラスの小ビンのふたを閉めた。形のいい唇を引き締め、人気のない回廊から夜空を仰ぐ。
「……頼むから」
漆黒の空を切り裂いて、蜜色の満月が誇らしげに浮かんでいる。手を伸ばせば届いてしまいそうなくらい近く、大きく見えた。
「……頼むから、もってくれよ……」
金砂を散りばめたような淡い光が、青年の端整な面差しを暗がりに映し出す。
握りしめた小ビンを、青年は上着のポケットの中に落とした。深呼吸をして赤絨毯の上を歩き出す。
広間への扉が大きく開かれ、煌びやかな世界が目の前に現れる。
音楽と笑い声に満ちたその海の中へ、青年はゆっくりと踏み出した。




