9 燃料切れ
「大変――燃料切れよ」
ミシガンのその言葉に、皆の表情が固まった。
しかし、フランクリンだけは状況を理解できなかった。
なぜなら――そもそもこの列車、どうやって動くのか知らなかったからだ。
「……ねぇ、ミシガン」
だから、最初に口を開いた。
「この列車の燃料――って、何?」
「都市の記録ね」
ミシガンは即答したが、フランクリンはなんとも納得がいかなかった。
なにせ都市の記録といえば、都市を倒したあとに出るものじゃないか。
「形見」とまで言われるものを、列車の燃料にするなんて――そんなの、倫理的にどうかしてる。
そんな思考を読み取ったのか、ミシガンがいった。
「確かに、倫理的に危ういのはわかってる――けど、これしか選択肢がなかったの」ミシガンは続けた。
「考えてみて。ガソリンや電気が、霧の中で見つかると思う? そして、それを精製できる技術は私たちにある?」
言われてみればそうだ。
いつでも・どこでも・簡単に調達できる――その点では、記録は何よりも勝っている。
「でも……どうやって手に入れるの?」
フランクリンが尋ねると、スプリングフィールドが答えた。
「簡単簡単、霧都市を倒すだけ!」
「……そうね」
ミシガンは、苦笑いを浮かべた。
「まぁでも、いっときのことよ――人が戻れば、また何事もなかったように戻って来るわ。それに――」
ミシガンは、セントルイスの方をちらっと見て言った。
「幸い、イーストセントルイスはもういないし――まぁ、そう難しいことではないと思うわ」
「そうそう、簡単簡単!」
この列車があれば、私たちは負けないんだから――スプリングフィールドは、そう言って笑った。
「……そうね」
ミシガンはそういうと、他の全員に向かって言った。
「――さっ、今日はここまで。お掃除は、明日からよ」
▽ ▽ ▽
あれから数日。
6人は、早速雑魚霧都市の掃除にとりかかった。
イーストセントルイスの記録を使えば済んだ話かもしれないが、なにせ本家セントルイスが全力で拒否するのである。
だから仕方なく、雑魚掃除で代用することにした。
ミシガンいわく――一欠片の記録さえあれば、列車は少しぐらいは動くとのこと。
しかし、その場合――途中で止まった時、完全に詰んでしまうのだとか。
だからこういう”大きな街”で、大量に記録を確保したほうがいい――ミシガンは、そういうロジックだった。
事件は5日目の朝、5人が朝食を食べ終え――アイオワが、食事の後始末をしていたときのことに起こった。
朝食に現れなかったセントルイスが――半ば小走りになりながら――列車のホールに入ってきたのである。
ゼエゼエと息を切らしており――あのスプリングフィールドですら、「何かあった」と理解できるほどだった。
「どうしたの?」デラウェアが尋ねた。
「シカゴが――」
セントルイスは、震える声で語った。
「……シカゴが、霧都市になった」
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