6 作戦会議
「――イーストセントルイスは、もう霧都市だ」
セントルイスの発言に、その場にいた全員の顔が固まった。
重たい沈黙が、しばらくそこを満たす。
「で、でもさ――」スプリングフィールドが言った。
「イーストセントルイスって、そんなに小さかったっけ?」
スプリングフィールドは続けた。
「だって、あっちにはあんなに建物があるじゃん。あんたも生きてたんだし、きっと生き残ってるって思ってたんだけど――」
対岸を指差すスプリングフィールドに、セントルイスは言った。
「確かに、イーストは大きかった――しかし、治安があれだった」セントルイスは続ける。
「あの対岸だけは、観光客のために整備されている。だがそこを離れると、かなり――やばい」
やばい――その3文字で、5人はどういう状況か理解した。
セントルイスは続ける。
「俺は霧がきた直後、イーストの様子を見た――だが、遅かった」
セントルイスは、このことを悔やんでいるといった言い方だった。
「今は橋にバリケードと、あと結界を張ってる――だが、いつ破られるかはわからない」
確かに、橋の向こうには――人とは言えない存在が、ゆうゆうと闊歩していた。
瞳の色こそわからなかったが、それが霧都市だとは理解できた。
「しかし、俺はあることに気がついた。ミズーリ側の霧都市が――川を渡ってまで――イースト側へと向かっていた」
「つまり?」
「俺の推理はこうだ。イーストが――霧都市を、率いてる」
セントルイスの考えに、デラウェアは鋭い指摘を飛ばした。
「イーストが率いてる? 霧都市に、そんな知性があるとは思えない――」
「それは間違いよ、デラウェア」
ミシガンが遮った。
「元になった人格体が強いほど、霧都市化後の理性も残る」
ミシガンは、セントルイスに尋ねた。
「――セントルイス、イーストセントルイスの強さはわかる? 霧都市になる前でお願い」
セントルイスは、当然さといった表情で答えた。
「ああ――イーストは、人々を呼び寄せる固有魔法を持っていた。能力名は――”鉄道結節点”」
「ああ、名前はいい――けど、これでピースは揃ったわ」
ミシガンは、立ち上がった。
「セントルイスが言ってることは、おそらく正しい。イーストセントルイスが、その鉄道なんとかっていう固有魔法を使い――名もなき霧都市を集めている」
それからミシガンは、「ホワイトボードがないわね……」と言い出した。
「仕方ない、まずは列車に帰りましょう。作戦会議はそこで」
▽ ▽ ▽
それから6人は、プラットフォームに戻っていった。
「俺も……乗っていいのか?」
列車の前で、セントルイスが尋ねた。
「ずっとってわけにはいかないけど――まぁ、今はね」
デラウェアに許可をもらったセントルイスは、さっそく列車に乗り込んだ。
ホールでは、アイオワがコーヒーを用意していた。
セントルイスの存在に気づき、「もう一つ持ってきます」と厨房へ戻った。
「これは……?」
フランクリンが尋ねると、デラウェアが言った。
「この列車、ホールが二両あるの――テーブルがある方と、テーブルがない方ね」
皆がテーブルに座ったところで、ミシガンは――巨大なホワイトボードを、ノックするように叩いた。
「はいはい、注目」
ミシガンの声に、その場にいた全員がホワイトボードを見た。
「作戦を立てるって言ったけど、情報がたりないから――まずは、セントルイスへの質問タイムね」
ミシガンの言葉に、セントルイスの背筋が伸びた。
「まず1つ目――あなた、固有魔法持ってる?」
「当然さ」セントルイスは答えた。
「名前は”グッド・ゲートウェイ”――知ってる人格体が、今どんな状況かわかる能力だ」
「ふーん。じゃあ、今のイーストセントルイスが――どんな状態かわかる?」
セントルイスはため息をついた。
「――俺も試したんだが――無理だったな。どうやら、霧都市には使えないようだ」
「……そう。使ってほしい人が何人かいるんだけど……まぁ、それは後で」
それからミシガンは、最後の質問を始めた。
「最後に――名もなき霧都市は、あなたに興味を持っていた?」
「いや、全然。俺を素通りして、ミシシッピ川を渡っていたよ」
そこまで聞いたところで、ミシガンはパチンと手を叩いた。
「これで作戦は固まったわ」
ミシガンはそういうと、ホワイトボードに雑な図を書き始めた。
「今作戦名をつけるなら――”集まったところを叩け作戦”ね」
それからミシガンは、詳細を語りはじめた。
彼女いわく、彼らがセントルイスを襲わなかったことからして、列車も素通りする可能性が高い。
だから名もなき霧都市がミシシッピ川をわたるのを待ち――いい塩梅になったところで、リーダーであろうイーストセントルイスを叩く作戦だ。
「――なるほど」
ミシガンが話し終えたところで、セントルイスが言った。
「走り回って敵を倒すより、集まったところを叩くほうが効率いいってことか」
「そう。人々を呼び寄せる能力なら、リーダーを叩けば統率が消えるわ」
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