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霧に支配されたアメリカで、州擬人化たちは都市解放の旅に出る ~フィフティ・トレイル~《シカゴ編開始》  作者: 輝城蒼空
ミズーリ編

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4/21

4 廃工場にて

 誰もいない、廃工場。

 その奥で、一人の青年が霧都市を押さえつけていた。


「……黙ってろ、ランシング」


 暴れる霧都市――ランシングは、ある程度人の形を保っていた。

 しかしその筋骨隆々さは人間の規模を超え、さながらモンスターのような巨体になっていた。


「……くそっ」


 前髪の奥から、青年の黄色い瞳が見えた。

 青年は近くから曲がった鉄骨を《《引き寄せる》》と、ランシングを縛り付けるようにそれをおいた。


「……とりあえず、まずは制御装置つけるぞ」


 ▽ ▽ ▽


 その後数日、青年はランシングの改造に奔走していた。

 残された資材を寄せ集めては、ランシングに対し巻き付ける。

 普通なら崩れてしまうところだろうが、彼の固有魔法――”メタルモーター”により、工具無しで溶接したのだ。


 もちろんランシングは、かなりの苦痛を感じただろう。

 だが、青年にとっては些細なことだった。


 これは、「都市だけの世界」のための必要な犠牲――青年は、そう思っていた。


 しばらくして、霧から”優しい声”が聞こえてきた。


「調子はどうかしら?」

「……あぁ」


 青年はその声に反応し、霧が立ち込めた窓の外と会話しだした。


「今はランシングの改造が終わったところだ――腐っても州都様だ、だいぶ理性が残ってる」

「それはよかったわ。それと、取って置きの情報なんだけど――」


 ”声”はそんな前置きをしてから、青年に言った。


「――シカゴ、まだ霧都市になってないんですって」


 青年は、当然だと思った。

 なにせシカゴは、青年の街の二倍以上の人口を擁する都市なのだ。

 それに青年は、彼があっさり霧都市になる絵面が思い浮かばなかった。


「じゃあね」


 青年が考えていると、”声”はどこかへ行ってしまった。


「……また、一人ぼっちか」


 青年はため息をついた。

 ランシングのことを「だいぶ理性が残ってる」とはいったものの、雑談がなりたつほどではない。

 むしろ発声能力をほとんど失っていて、唸り声しか言えないという有り様だった。


 青年はしばらく、窓のそばのパイプ椅子に座っていたが――しばらくして、ゆっくりと立ち上がった。


「――シカゴを、仲間にしよう」


 青年はそう言うと、ランシングを拘束していた鉄骨を浮かばせた。

 それから、部屋の片隅に投げ捨てる。


 ランシングはおきあがり、あたりを見回す仕草をした。


「……ランシング。シカゴは知ってるよな?」


 ランシングは頷いた。


「場所もわかるよな?」


 ランシングは黙っていたが、青年はわかると考えた。


「じゃあ、シカゴに行ってきて、シカゴをここに連れてきてくれ」


 ランシングは、再び頷いた。


 それから青年は、ランシングとともに工場を出た。

 ここからシカゴまで、車で5時間程度。

 でもランシングは歩きだから、ざっと数日はかかるだろう。


「こっから、歩いてシカゴへ行け」


 ランシングは、再び頷いた。

 やはり人格が消えている――青年は、はっきりと確信した。


 その間にも、ランシングは道路を歩き出していた――


 ▽ ▽ ▽


 所変わって、フィフティ・トレイル。

 フランクリンが、デラウェアにナイフを渡されたところである。


「これは……?」

「これは”無限ナイフ”。ベルトに差しとくだけで、無限にナイフが召喚できる」


 デラウェアはそういうと、ベルトに差して実演しだした。


 空中に現れるナイフ。

 デラウェアの顔と、同じ方向を指さしている。

 ダーツの的に顔を向けると、ナイフも的の方を向く。


 目を閉じ、腕を的の方へ伸ばすと――ナイフは一斉に発射され、ダーツの的に突き刺さった。


「どう?」デラウェアはそういうと、フランクリンにナイフを渡した。

「結構直感的に使えるから、あんまり難しくないわよ」


 フランクリンは頷いた。

 そんなこんなで、列車はセントルイスへと向かっていた――

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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