21 イリノイのスプリングフィールド
所変わって、フィフティ・トレイル。
インディアナポリスを出発した列車一行は、イリノイの州都へとやってきた。
しかし――
「――スプリングフィールド?」
地図を見た「列車のスプリングフィールド」は、驚きの黄色い声をあげた。
「もしかして、ここがあたしのふるさとかも!」
スプリングフィールドの発言に、ミシガンは微妙な顔をしていた。
「いえ、違うわ」
デラウェアが否定した。
「なんで?」
「イリノイのスプリングフィールドが、今回の案内人だからよ」
あと、イリノイ本人もね――デラウェアは、そうつけたした。
「……呼び分けが大変そうだな」テキサスが言った。
「イリノイのスプリングフィールドと、列車のスプリングフィールド……」
「”トレイルフィールド”とか、どうかしら?」
ミシガンの提案に――列車のスプリングフィールドは、不満だという表情を浮かべた。
「――ちょっと! 勝手に改名しないでってば!」
「でも……スプリングフィールドは、アメリカに30以上もあるわ。個性ある名前の方がいいでしょ?
人間の名前で言うなら――”山田太郎”みたいなもんね。気に入る?」
列車のスプリングフィールドは、ちょっと考えてから――「確かに」と、負けを認めた。
「じゃあ、決定。トレイルフィールドで」
デラウェアが言った。
スプリングフィールドは不満そうだったが、渋々それを受け入れた。
▽ ▽ ▽
それから、列車はイリノイのスプリングフィールドへと到着した。
列車のスプリングフィールド――いや”トレイルフィールド”――は、かなりそわそわしていた。
しかし、ミシガンに急かされ――彼女と一緒に列車を降りた。
駅前広場には、二人の人格体が立っていた。
一人は黒髪に背の高い男性で、もう一人は背の低い金髪の少年――だったが、かなりやつれているように見えた。
「久しぶりね、イリノイ」
デラウェアがいうと、背の高い方――イリノイは少し笑って言った。
「デラウェアじゃないか――久しぶりだな」
イリノイがいうと、もう一人の方が自己紹介した。
「俺はスプリングフィールド――もちろん、イリノイのだ」
彼はそう自己紹介すると、すぐにため息を付いた。
「おっと、客人の前だぞ」
イリノイが忠告するが、彼は聞く耳を持たなかった。
「……まぁ、うちのスプリングフィールドはこんな感じだ」
▽ ▽ ▽
それから、列車のメンバーも自己紹介をした。
具体的には、デラウェア・ミシガン・列車のスプリングフィールド・フランクリン・テキサスといった順番だ。
なお列車のスプリングフィールドが自己紹介した時、イリノイのスプリングフィールドがため息をついてたのはココだけの話だ。
(セントルイスとは違い、彼は何州か聞く余力もなかったようだ)
「……それで」
そして、イリノイが早速本題に入った。
「――今回の目的は?」
イリノイの質問に、デラウェアは「シカゴの奪還」と答えた。
「シカゴか……私も行きたいと思ってたんだがな」
イリノイいわく、自分たちもシカゴに行きたかったのだが、霧都市が多くて無理だったんだとか。
「安心して!」列車のスプリングフィールドが言った。
「あたしたち、絶対に負けないんだから!」
イリノイは、彼女の発言を軽く流し――それから、デラウェアに尋ねた。
「そういえば、シカゴの状態は?」
デラウェアは、だまりこんだ。
「正直に言ってほしい――わからないなら、”わからない”と言ってほしい」
「……いや」
デラウェアの声が、よりいっそう低くなった。
それから――デラウェアは、ゆっくり口を開いた。
「――シカゴは、霧都市になった」
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