2 自己紹介
次に少女――フランクリンが目を覚ましたとき、そこは列車のソファの上だった。
近くにはテキサスとスプリングフィールドがいて、スプリングフィールドは金髪の少女と話し合っている。
「だからねデラウェア、この子を列車に――」
「いつも言ってるでしょ? 私たちは慈善事業じゃないって」
少女――デラウェアはそう言い、ため息をついた。
「基本的に、人格体は自分の都市に残ってもらうわよ。食料にも限りがあるんでね」
デラウェアは断るが、スプリングフィールドは感情論で押し切ろうとする。
フランクリンは、自分の処遇を考えているのだと察し――立ち上がり、二人に話しかけることにした。
「ねぇ――」
フランクリンが話しかけると、二人は同時に彼女の方を向いた。
「……あら、起きたの? すまないけど――」
デラウェアが言うのを、スプリングフィールドが遮った。
「あ、起きたんだ! 名前は?」
スプリングフィールドに聞かれ、彼女は少し戸惑った――が、すぐに名前を思い出した。
「……フランクリン」
「普通の女の子の名前じゃない――人格体だな」テキサスが言った。
「でも、フランクリンってとこ、あったっけ?」
スプリングフィールドが尋ねると、テキサスが言った。
「俺が知る限りはないな――どっかにはありそうだが」
テキサスはそういうと、デラウェアに目線を送った。
デラウェアは一瞬黙ってから、ゆっくりと口を開いた。
「――ないことはないだろうけど、おそらく全部小都市だろうね」
スプリングフィールドが首を傾げた。
「小都市……霧に耐えられるレベル?」
「さぁ? でも、発生日から1年以上経ってるし――普通なら、耐えれないと思う。それに地図を見る限り、この近くに”フランクリン”って街は存在しなかった」
沈黙が流れた。
スプリングフィールドが、小さく声を上げる。
「でもこの子、普通に話してるよ?」
デラウェアはフランクリンをじっと見つめた。
それから、少しだけ目を細める。
「……確かに妙だね」
「ここにおいていくのは?」テキサスが言った。
「幸いカンザスシティの双子は生きてたんだし、彼らに任せるのはどうだ」
カンザスシティの双子――カンザスシティを守る、二人の人格体だ。
「だめだよ」スプリングフィールドは止めた。
「あの子たち、あんま強くなかったでしょ?」
「……確かに、正しい」デラウェアが答えた。
「それに、もし霧都市となったら――その被害は、計り知れない」
「じゃあ連れて行こうよ!」
スプリングフィールドが言った。
デラウェアは、一瞬だけ考えた。
「……研究対象として、ね。霧に耐える小都市なんて、聞いたことがない」
そして、フランクリンを見た。
「決めた。フランクリン、あんたはここにいてもいい。ただし――住むなら働いてもらうから」
▽ ▽ ▽
というわけで列車に乗ることが決まったフランクリンに、デラウェアは手を差し出した。
とりあえず受け取り、大きく握手をする。
「改めまして、私はデラウェア――合衆列車の列車長よ」
デラウェアは、思ったより背の低い少女だった。
さっきは近くにテキサスという巨体があったせいだと思えたが、こう見ると本当に背が低いらしい。
フランクリンは女の子の平均値といった身長だが――本当にまっすぐ見れば――フランクリンの目線が、彼女の金色のつむじに向かってしまうといった有り様だった。
それからデラウェアは、テキサスに目で合図した。
「俺はテキサス。なんだかんだあって、この列車に乗ることになった」
「――あたしはスプリングフィールド! 安心して、この列車は絶対に安全だから!」
「おい、俺まだ合図してないぞ」
テキサスはため息をつき、青色のロングヘアをした少女に合図した。
「私はミシガン――この列車の開発者。まぁ、実際は《《もう一人》》いたんだけど……まぁ、よろしく」
ミシガンはそういうと、黄色いスーツをした女性に目で合図した。
「私はアイオワ――この列車の料理長です。美味しいご飯はお任せください。こちらは――」
「ネブラスカだ」
アイオワの後ろから、金髪の少年が出てきた。
しかし、目元は暗い。
「……まぁ、一緒に料理をしてる。戦うことはないだろうが、よろしくな」
ネブラスカはそういうと、またアイオワの後ろに隠れた。
フランクリンは、小さくため息をついた。
(……この列車、変わった人ばかりだ)
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