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霧に支配されたアメリカで、州擬人化たちは都市解放の旅に出る ~フィフティ・トレイル~《シカゴ編開始》  作者: 輝城蒼空
デ・カーゴの旅編

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18/21

18 トレドのジャンクション

 それからデ・カーゴに乗り込んだ二人は、早速行き先を決めることにした。


「どこ行く?」

「シカゴ」


 シカゴの質問に、デトロイトは即答した。

 シカゴは、軽くため息を付いた。


「……もう飽きてる。別のとこが良い」


 デトロイトは少し考えると、「じゃ、トレドで」と言った。


 ▽ ▽ ▽


 デトロイトからトレドまで、だいたい車で1時間。

 高速を南に行くだけの、単純なルートである。


 こんなに近いのは、五大湖沿岸(ラストベルト)ならではのことだ。

 もしこれがネブラスカとかだったら、絶対にありえない距離である。


「トレドには行きたくないんだがな」


 ドライブ中、デトロイトが言った。


「なぜだ?」


 シカゴが尋ねると、デトロイトは「トレド戦争」と即答した。


「1835年、ミシガンとオハイオが――トレドを巡って争ったんだ。民兵まで動員してな」


 まっ、最終的にはDCがなんとかしたがな――デトロイトは、そう付け足した。


「死者は?」

「ゼロ」


 デトロイトがそういうと、シカゴはケラケラと笑った。

 それから、「……じゃあ、なんで”トレドに行きたい”って言ったんだ?」と尋ねた。


「本当はクリーブランドに行きたかったんだ――でも、最短距離を通るとなると、やっぱりトレドを通る必要がある」


 シカゴはまた笑い、「じゃあ、最初から”クリーブランド”っていいなよ」と言った。


 ▽ ▽ ▽


 トレドについたときには、もう日がくれていた。

 二人はジャンクションで車を止め、そのまま車中泊することにした。


 午前2時ごろ、シカゴは突然目が覚めた。

 いや、正確には――ビルから落ちる夢を見て、地面に激突するところで目が冷めた。


 直ぐ側にはデトロイトがいて、依然として起きている。


「えっ、起きたの?」


 デトロイトが尋ねると、シカゴは「……ちょっと、悪夢を見てな」と答えた。


「お前こそ、なんで今まで起きてたんだ?」


 シカゴが尋ねると、デトロイトは一瞬黙った。


「……君のいびきが、うるさかった」


(――嘘だ)


 シカゴは察した。

 シカゴは自分のいびきを聞いたことはないし、本当にうるさいかも知らないが――もし本当にうるさかったら、デトロイトはもっと苛ついた声で言ったはずだ。


 それに――デトロイトの声は、どこか震えていた。


「……まっ」


 シカゴはレバーを引き、車のドアを開けた。


「外の空気でもすおうぜ」


 ▽ ▽ ▽


 それから二人は、ジャンクションの端っこを歩いた。

 人間が消えてから、もう1年は経ってるというのに――ジャンクションには、まだ街灯が灯っていた。


「……おかしいな」シカゴが言った。

「なにが?」


 デトロイトが尋ねると、シカゴは淡々と答えた。


「昔、ネットで見たんだ――人類が消えたら、1日持たずに電気が消えるって」


 デトロイトは、頷いた。

 言いたいことは理解できた――が、先にシカゴが先回りした。


「それなのに、ここは街灯がついている――やっぱり、おかしい」


 シカゴの疑問に、デトロイトは「霧のせいじゃない?」と答えた。


「やっぱそうだよな」


 それからシカゴは、自分の考えを語り始めた。


「この霧はただの災害じゃねえ。おそらく――何かしら、思想がある」


 デトロイトは、弱点をつかれたかのように――その場ですくみ上がった。

 それから、シカゴに尋ねた。


「……思想?」

「そうだ。普通の災害なら、インフラだって落とすはずだ」シカゴは続ける。

「それでも、ここに街灯がついているってことは――それぐらいしか、候補はないだろ?」


 デトロイトは、あの”優しい声”について打ち明けようかと考えた。

 しかし、結局いわなかった。


「――まっ」


 黙るデトロイトに、シカゴが言った。


「帰って寝ようぜ」



ここまでお読みいただきありがとうございます。

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