18 トレドのジャンクション
それからデ・カーゴに乗り込んだ二人は、早速行き先を決めることにした。
「どこ行く?」
「シカゴ」
シカゴの質問に、デトロイトは即答した。
シカゴは、軽くため息を付いた。
「……もう飽きてる。別のとこが良い」
デトロイトは少し考えると、「じゃ、トレドで」と言った。
▽ ▽ ▽
デトロイトからトレドまで、だいたい車で1時間。
高速を南に行くだけの、単純なルートである。
こんなに近いのは、五大湖沿岸ならではのことだ。
もしこれがネブラスカとかだったら、絶対にありえない距離である。
「トレドには行きたくないんだがな」
ドライブ中、デトロイトが言った。
「なぜだ?」
シカゴが尋ねると、デトロイトは「トレド戦争」と即答した。
「1835年、ミシガンとオハイオが――トレドを巡って争ったんだ。民兵まで動員してな」
まっ、最終的にはDCがなんとかしたがな――デトロイトは、そう付け足した。
「死者は?」
「ゼロ」
デトロイトがそういうと、シカゴはケラケラと笑った。
それから、「……じゃあ、なんで”トレドに行きたい”って言ったんだ?」と尋ねた。
「本当はクリーブランドに行きたかったんだ――でも、最短距離を通るとなると、やっぱりトレドを通る必要がある」
シカゴはまた笑い、「じゃあ、最初から”クリーブランド”っていいなよ」と言った。
▽ ▽ ▽
トレドについたときには、もう日がくれていた。
二人はジャンクションで車を止め、そのまま車中泊することにした。
午前2時ごろ、シカゴは突然目が覚めた。
いや、正確には――ビルから落ちる夢を見て、地面に激突するところで目が冷めた。
直ぐ側にはデトロイトがいて、依然として起きている。
「えっ、起きたの?」
デトロイトが尋ねると、シカゴは「……ちょっと、悪夢を見てな」と答えた。
「お前こそ、なんで今まで起きてたんだ?」
シカゴが尋ねると、デトロイトは一瞬黙った。
「……君のいびきが、うるさかった」
(――嘘だ)
シカゴは察した。
シカゴは自分のいびきを聞いたことはないし、本当にうるさいかも知らないが――もし本当にうるさかったら、デトロイトはもっと苛ついた声で言ったはずだ。
それに――デトロイトの声は、どこか震えていた。
「……まっ」
シカゴはレバーを引き、車のドアを開けた。
「外の空気でもすおうぜ」
▽ ▽ ▽
それから二人は、ジャンクションの端っこを歩いた。
人間が消えてから、もう1年は経ってるというのに――ジャンクションには、まだ街灯が灯っていた。
「……おかしいな」シカゴが言った。
「なにが?」
デトロイトが尋ねると、シカゴは淡々と答えた。
「昔、ネットで見たんだ――人類が消えたら、1日持たずに電気が消えるって」
デトロイトは、頷いた。
言いたいことは理解できた――が、先にシカゴが先回りした。
「それなのに、ここは街灯がついている――やっぱり、おかしい」
シカゴの疑問に、デトロイトは「霧のせいじゃない?」と答えた。
「やっぱそうだよな」
それからシカゴは、自分の考えを語り始めた。
「この霧はただの災害じゃねえ。おそらく――何かしら、思想がある」
デトロイトは、弱点をつかれたかのように――その場ですくみ上がった。
それから、シカゴに尋ねた。
「……思想?」
「そうだ。普通の災害なら、インフラだって落とすはずだ」シカゴは続ける。
「それでも、ここに街灯がついているってことは――それぐらいしか、候補はないだろ?」
デトロイトは、あの”優しい声”について打ち明けようかと考えた。
しかし、結局いわなかった。
「――まっ」
黙るデトロイトに、シカゴが言った。
「帰って寝ようぜ」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「面白い!」「続きを読みたい!」と思ったなら、ブックマークへの登録・星5の評価をお願いします。




