16 霧都市の退屈
ときは、フランクリンたちがインディアナポリスにやってきて、ミシオを駅前広場に設置したあたりまで遡る。
霧に包まれたデトロイト。
シカゴとデトロイトは、廃工場兼デトロイトの家にて――ただ、ぼーっとしていた。
「……暇だな」シカゴが言った。
実際、彼らは本当に暇だった。
なにせこの街の観光はほぼ済んで、話す内容も尽きたからだ。
「じゃあ、戻ればいいじゃん」
デトロイトの正論に、シカゴは珍しく正論で返した。
「帰ったとしても、面白いものがねえんだよ――俺の町だし、だいたい全部見飽きてる」
シカゴの発言に、デトロイトも納得したようだ。
しかし、それで彼らの退屈が収まるかといえば、そうでもなかった。
――その時シカゴは、突飛としかいえない提案をした。
「……じゃあ、ドライブにでもいくか?」
シカゴの発言に、デトロイトはため息をついた。
「……車がないだろ」
デトロイトがそういうと、シカゴはケラケラと笑った。
「……いや、ないなら作ればいいだろ――お前、そういうの得意だって思ってたんだが?」
車の街なんて言われてたしな――シカゴは、そうつけたした。
デトロイトは少し考えたが、彼だって本当に暇だった。
だから――シカゴの言う通り、車を作ることにした。
▽ ▽ ▽
車を作ると決めた二人は、早速「素体」を探しに廃工場を出た。
作るとはいっても、フレームの組立からやるわけではない。
まずは素体となる車を決め、それをデトロイトの固有魔法――”メタルモーター”で改造し、魔力駆動の改造車にする計画だ。
車検の検査員が見たら卒倒するような内容だが――まぁ、その検査員とやらももういないだろう。
だから、彼らはためらいなくそれにとりかかった。
彼らは通りを歩き、様々な車を見た。
本当に様々で、デトロイトは乗り捨てられた車を見て「これはフォード」だの「これはトヨタ」だの言っているが――車に一切興味がないシカゴにとっては、ただの暗号にしか聞こえなかった。
しばらく歩いたところで、シカゴが尋ねた。
「――なぁデトロイト、そこら辺の車じゃダメなのか?」
デトロイトは「そりゃそうだよ」と答えた。
「ボロかったせいで、途中で壊れたらどうするの。立ち往生なんかしたら、それこそしゃれにならない」
――たしかに、それはそうだ。
▽ ▽ ▽
30分ほど市街を歩き――やっとのことで、彼らは「素体」を決めた。
素体になったのは、茶色いワゴン車――デトロイトいわく、「いろんなものが入る」というのが決め手らしい。
他にもいいのはあったのだが、他の車はどれも扉にロックが掛かっていて、結局はそれになった。
しかし、シカゴが何より驚いたのは――
「……トヨタ?」
その車には、堂々と「TOYOTA」のエンブレムが刻まれていたのだ。
「……これ、日本の会社だろ?」
シカゴが尋ねると、デトロイトは――ちょっと黙ってから、ゆっくり頷いた。
「お前、その”トヨタ”ってやつに負けたんじゃなかったんか?」
シカゴが茶化すと、デトロイトは「だから認めたくなかったんだ」と悪態をついた。
「――たしかに、負けたのは認める。でも――このスペックじゃあ、負けるわなって思う」
それからデトロイトは、日本車がいかに素晴らしいかを――改造作業をしながら、延々と説明した。
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