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従者が猫すぎて入学式が崩壊しました  作者: おかかむすび
第二章.クラスメイト編

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24話.種明かし

 久しぶりに、シュナクとランドが出席した日の帰り道。

 相変わらず、協働戦術学は内容が濃かったなと朝のことを思い出し、ティエラは振り返った。


 自分の一歩後ろにはソルがいて、どこか別のところを見ていたらしい彼は、こちらに気づいて視線をよこした。


「どうかした?」

「今日の一限目、協働戦術学で私たちのチームが勝ったけど、あれはなんでだったのかなあって」


 ティエラはリーダーの証である札を、確かにソルへ渡した。その後すぐにオジェたちがやってきて、慌ててその場から逃げ出した。


 お札は、逃亡側の誰かが持っていないまま5秒が経つと失格になってしまうというルールもあった以上、ソルがどこかに隠した、という線も考えられない。


「もしかして、私が実は渡し損ねてたとか!」


 ティエラは人差し指をソルに向けた。

 ソルに渡したつもりでいたが、実はあの時渡したのはリーダーのお札ではなく、ハンカチだったのかもしれない。


 もしそうだったなら、最後の最後でお札を持っていたのは自分ということになる。ソルが捕まっても、負けにはならない。


「ティエラからはちゃんと、リーダーの証をもらったよ」

「……だよねえ」


 自分でも流石に苦しい考えだと思っていたが、やっぱり渡し間違いをしたわけではなかった。

 がっくりと両肩を落とし、ティエラは前を向いて歩く速度を戻した。


「クラッド先生の勘違いだったのかなあ」


 姿勢を戻したティエラは、自分の中で一番現実的だと思っていることを口にした。


 もしそうだったなら、相手チームに申し訳ない。

 ティエラも二度目の協働戦術学の時に上手くできず、報告書を作成した経験があるが、あれは大変だった。


 どうして上手くできなかったのかを考えているうちに、何もかもがダメだったように思えてきて、頭が爆発しそうだったのを今でもよく覚えている。


 もちろん、ティエラだって報告書を書かなくて済むならそっちの方が嬉しい。

 でも、自分たちが書くべきものを、別の人たちがやっているというのは忍びなかった。


「リーダーの証はね、ラファエル1号に渡したんだ」


 一人で悶々と考えていると、ソルが種明かしをしてくれた。

 すぐには飲み込めなくて、また後ろを振り向くと、いたずらが成功した時のような無邪気さを出しているソルの顔があった。


「ラファエル1号に……あ! 空洞の奥にラファエル1号が入っていった、あの時?」


 またもや人差し指を立てて聞けば、今度は頷きが返ってきた。

 ソルに札を渡すように言われたのは、ラファエル1号と合流してすぐの時だった。思い返せば、ソルは確かに『良いこと思いついた』と言っていた。


 その良いこととはつまり、ラファエル1号にリーダーの証を託すことだったようだ。


「よくラファエル1号に渡そうって思ったね」


 自分だったら、絶対に出来なかった。ラファエル1号は確かに仲間ではあったが、それでもやはり、木製人形だ。

 生身の人間と比べてしまうと、融通が利かないデメリットが強い。


「タイミングはギリギリだったけどね。もう少しオジェたちが早く来てたら、多分ダメだったと思う」


 ソルはラファエル1号にこの空洞の中で息を潜めているよう、新しい命令を出してあったという。


 そして、オジェたちに見つかって逃げる時、簡易的にだが入り口を認識できないよう、認識阻害の魔法もかけていったようだ。


「そんなことまでしてたの?」

「ちゃんとしたものは掛けられなかったから、あの時ティエラが僕を掴んで慌てて逃げだしてくれなかったら、違和感に気づかれてたんじゃないかな」


 あの短時間に、ティエラが思っている以上のことをソルが行っていたことを知り、感嘆の声が出た。


 ティエラはあの時、ソルがリーダーの証を持っていると思っていた。だからこそ、本気で逃げ出した。

 そして、相手もそれを見たからこそ、ソルが持っているのだとこちらに意識が強く向いた。


 結果、相手はラファエル1号がいないことには目もくれず、ソルを引っ張って逃げるティエラを追いかけてきたのではないかと、ソルは推測を語った。


「その後は、シュナク王子と合流できて……って感じになったわけだね」


 そういうことだったのかと、ティエラは今回の勝敗にようやく納得がいった。

 クラッドの勘違いということでもなかったので、改めて今日の勝利を喜ぶことにする。やったと、胸の前で右手の拳を握り締めた。


 ただ一つ、ティエラには確認しておきたいことがあった。


「ねえ、ソル。……ソルも、炎が苦手?」


 今度は前を向いたまま、ソルに聞く。

 何故かはわからないが、彼の顔を見たら泣いてしまいそうな気がして、ぐっと顔を上げた。


「大きな炎に包まれるのは、怖い」


 彼の答えを聞いて、ティエラの中にあったよく分からない恐怖が小さくなったのを感じた。


「そうだよね。大きな炎に包まれるって感じたら、誰だって怖いよね」


 自分が感じた恐怖は、誰でも感じる本能的なものだったと分かり、ティエラはほっと息を吐いて振り向く。


 ソルは否定も肯定もせず、どこかほっとしたような顔をしていた。


「ねえ、ティエラ。次のお出かけについてなんだけど」

「あ、うん。ランドさんへのプレゼント……じゃなかった、お詫びの品を買いに行く日だね」


 今日の帰りに、シュナクとランドの空いている予定を教えてもらった。

 マントは既にソルへ譲ってもらっているため、このお詫び大作戦は絶対に成功させるんだと、ティエラは意気込んでいた。

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