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従者が猫すぎて入学式が崩壊しました  作者: おかかむすび
第二章.クラスメイト編

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22話.鼻が利かない原因

 ソルと監視役を交代して、自分の鼻は何の役にも立たないと悟ったティエラは自分の目と耳を頼りに、周囲の警戒に努めていた。

 自分が出す、草を踏みしめる音さえ煩わしくて、両手を胸の前で握りしめたまま、ずっと固まって周りを見渡し続けている。


 その時、草が踏みしめられる音がした。明らかに、風が木の葉を揺らしたのとは違う、人工的なものだ。

 すぐに音がした方に振り向き、ティエラは魔力を使って淡青色をしたネットを手の中で作り出す。


 音は無遠慮に、こちらへ近づいてくる。確実に姿を捉えたところで、作り上げたネットを投げられるよう、左足を一歩後ろに下げる。


「今だっ!」


 ひと際大きな影が現れたところへ、ティエラは躊躇うことなくネットを投げつけた。ちょっぴりねちょっとする感じに作り上げた、嫌らしいネットだ。


 これで相手はひとたまりもないはずだと、自信満々にネットに掛けた相手を見て、困惑した。


「あれ? 私のネットは?」

「俺を捕まえたいなら、もっと練度が必要だな」


 姿を見せたのは、クラッドだった。そのすぐ後ろには、木製人形がいる。あれは間違いなく、ラファエル1号だ。


 捕縛しにきた相手だと誤認してネットをクラッドに投げつけてしまったが、誤認による妨害を予想していたのかもしれない。いとも簡単に無効化されてしまった。


「待たせて悪かったな。ラファエル1号はちゃんと渡したぞ」

「あ、はい! ありがとうございます!」

「相手チームにもラファエル1号が合流したことは連絡してある。場所については秘匿してるから、後は自由に使え」


 伝えることだけ伝え、クラッドはそこへ溶け込むように姿を消してしまった。きっと、自分が見えるままに去ると、その姿を見た相手チームにとって有利に働くからだろう。


 ホームルームを行う時は、突然居眠りを始めたり、今何を話していたのかを忘れてそのまま流したりと、ティエラを含めたクラスメイトたちに何かと心配されることが多い。


 そんなクラッドだが、協働戦術学に限っては本当に有能になるので、普段の温度差で風邪を引きそうだ。

 ちなみに、他のクラスの間では、クラッドはものすごく人気のある先生らしい。授業中の姿だけを見れば、確かにと頷ける。


 ティエラも、今のクラッドはちょっと格好良かったなと思った。

 そして、居眠りをして椅子から転げ落ちていった時の姿が頭をよぎり、あれは格好悪かったなと思った。


「ティエラ、何かあったの?」

「あ、ラファエル1号が届いたよ!」


 空洞から顔だけ出しているソルの元へ、ラファエル1号と一緒に戻る。これで、取れる行動を増やせるはずだ。


「元気にしてた?」


 ソルののんきな声かけにも、ラファエル1号は律儀に頷く。表情は書かれた時のままなので、ちょっとシュールだ。


「良いこと思いついた。ティエラ、お札貸して?」


 言われるまま、ティエラはリーダーの証であるお札を渡した。軽く手が触れ、ティエラは眉を下げる。


「ソル……どこか、具合が悪い?」


 ソルの手はいつも温かいのに、今触れた時は冷たかった。

 彼は先ほど、鼻が利かないとも言っていた。そのことが、不安を増長させる。


 ラファエル1号を空洞の奥に入れてごそごそしているソルが、急に頭を上げてティエラの口に人差し指を当てた。

 その指先は、やはり冷たい。


「匂いがきつくなった。柑橘系の匂い」


 そっと顔を出し、鋭い目で周りを見渡しながらソルは言った。

 柑橘系の匂いを感じることは出来なかったが、その匂いにはティエラも心当たりがある。


「もしかして、オジェさんの月光柑橘……」

「近い。すぐそこまで来てる」


 瞬間、二人は同時に右を向く。ティエラは微かに空気が揺れるのを、確かに見た。見間違いでなければ、魔力の乱れによって出たブレのように思う。


「ソル!」


 彼の手首を掴み、空気が揺れた方とは真逆の場所に向かって走り出す。そのすぐ後に、ティエラたちが居た場所に魔力で作られた縄が落ちる。

 あれに触れていたら、間違いなく拘束されていた。


「ごめん! 魔力制御が乱れちゃった!」

「完璧じゃなくても、近づくには十分だよ! 俺の作戦の方も、あまり効果がなかったみたいだから……ね!」


 オジェを含めた捕縛チームのメンバーがパッと姿を現し、捕縛を目的とした縄を魔力で作り、投げてくる。

 やはり、先ほど見えた揺らぎは、魔法で姿を背景に溶け込ませていた際に魔力操作が乱れたせいだったのだ。


 姿を隠す魔法は発動は簡単だが、維持が非常に難しい。ティエラはそのことを知っていたからこそ、一瞬のブレを見逃さなかった。


「僕の鼻が利かなかったのは、そういう匂いを風に乗せて流してたんだね?」

「あ、ちゃんと効果あった? それを知れたのは嬉しいな!」


 逃げるティエラたちと、追いながら魔力で作った縄をいくつも投げつけてくるオジェたちの、追いかけっこが始まった。


「……あ、ラファエル1号!」

「ティエラ、今は逃げるよ」


 せっかくクラッドに届けてもらったラファエル1号を、また置いてくることになってしまった。しかし、この状況で戻るわけにも行かず、彼のことは諦めるしかなかった。


 今はもう、シュナクもランドもいない。そして今は、ソルが札を持っている。相手もラファエル1号には目もくれず、三人でこちらを追いかけてくる。


 自分が絶対にソルを守らなくてはいけないと、彼を掴む手に力が入った。

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