第82話 時を戻す能力
「前回の俺は八乙女の話を聞いてどう動いた?」
「確か、ほとんど何も対策を取っていませんでした。襲撃の日が来るまで普段と変わらず昼間は姿を消して夜は友人と雑談していました。」
八乙女の能力があればそう急ぐ必要はないと判断しての行動だろう。
「ちなみに八乙女の能力の詳細を教えてくれ。」
「私の能力は時を戻す能力。戻せる時間は最大で3日。一度能力を発動して再び能力が使えるまで戻した時間によって変わりますが、最大である3日時を戻した場合、再び能力を使えるまで2日間。」
俺は時を戻す能力を使う人間を八乙女以外に一人心当たりがあった。
それは雷鳴のボスだった。
奴の場合は効果範囲がオフィスの約半分程度で戻せる時間も恐らく1分程度だ。
それに比べ八乙女の能力は完全に奴の能力の上位互換と言って差し支えないだろう。
星の獲得数は確実に奴の方が多かっただろうから、個人の能力の適性が関係しているのだろうか。
「その説明の場合、無限に時を戻せるんじゃないか?」
八乙女の説明通りだと3日時を戻して2日後に再び3日時を戻すを繰り返せば理論上無限に時を戻せる。
無限と言っても神殺人殺が始まって能力を配布されるまでだが。
「少し前にそれも試してみましたが、それが出来るのは最大5日まででした。5日時を戻したら、次に能力が使えるまでに5日かかりました。」
ここまでの話を分かりやすく日付で表すと例えば1月6日に最大まで能力を使い1月3日までさかのぼる。そうすると1月5日まで能力を使えない。1月5日に再び能力を発動し1月2日までさかのぼる。
この過程をもう一度繰り返すと1月1日になる。この時5日間さかのぼったことになる。5日さかのぼったら能力の使用上次に能力を発動できるまで5日かかるらしい。このことから八乙女の能力では無限に時間を巻き戻すことが出来ない。
「なるほど、能力を誰にも話さなかったのは英断だったな。」
「ありがとうございます。」
「それで、俺に他に伝えておきたいことはあるか?」
「では、一つ良いですか?闇影について教えてください。前回の如月さんは今回の如月さんなら話してくれると言っていました。」
前回の俺はα2と対面するまで八乙女の能力を信じ切っていなかったのだろう。
だが、今回は八乙女の口から闇影という言葉が出た時点で信用に値出来る。
「分かった。それについては後で説明する。とりあえずついていてくれ。」
俺は八乙女を連れモニタールームへ足を運ぶ。
モニタールームはその機密性故にかなり分かるずらい場所にある。
もし部屋の扉を見つけたとしても烏孝雄しか知らない能力者特性の鍵を使用しなければ開くことが出来ない。
「こんな場所が・・・」
モニタールームの中へ八乙女を招待すると中の設備に圧倒されたのか開いた口が塞がらない様子だ。
「何で、柚が?」
先に呼んでおいた雪はすでに到着していた。
「俺が連れてきた。」
「それは見たら分かるわよ。」
少し呆れた雪を無視して俺は八乙女をとりあえずソファーに座らせる。
モニタールームは冬川が色々な機械で散らかしているため足の踏み場に困る状態だ。
始めは雪や烏さんが掃除していたが毎日のように散らかるため2人とも諦めた。
「散らかってて悪いな。踏んでもいいぞ。」
「踏んだらダメだよ!!」
少し遅れて冬川がやってきた。
「一つでも壊れたらこの部屋のシステムの何かが作動しなくなるんだから。」
そんな大事なものなら散らかすな!と心の中で突っ込みを入れる。
雪も同じことを思ったのか互いに目を合わせ静かにため息をついた。
「で、何で八乙女ちゃんが居るの?」
「俺が連れてきた。」
「そっか。」
雪の時と同じ返しをしたが反応はまるで違った。
「冬川、この部屋に漆間と柊が入れないよう電子ロックを掛けてくれ。」
冬川は理由を聞かずにPCのキーボードを叩き電子ロックを掛けた。
冬川の事だからその理由も後々話すことを理解しているのだろう。
そして俺が招待した雪、冬川そして八乙女が揃ったことで本題に入る。
俺は八乙女に自分が闇影の一員だった事と真の能力を話し、冬川と雪に八乙女から聞いたことをすべて話した。
真の能力を話すか少し迷ったが八乙女が確実に敵ではない事と、これから倒す予定であるα2の強さなどを総合的に判断し能力を共有していた方が立ちまわりやすいと判断した。
「まさか柚が能力を偽っていたなんてね。」
「ごめん。雪ちゃんには話そうかと迷ったけど話さなかった。」
八乙女は申し訳なさそうに謝る。
「むしろ話さなかったのは英断よ。柚の能力は他人に知られるのは危険。」
「でもそうか、闇影が襲撃に来るとなるとかなりキツイね。」
「そんなに強いの、闇影って?」
「雪ちゃんにも分かりやすく説明すると、話に出てきたα2は暁より少し弱い程度。いや、暁も殺し屋を引退して1年ほど経過しているだろうからそれを加味して今の暁と互角かな。他の連中も暁の1割程度の実力は持っているはず。」
「そいつらを相手するのは無理ね。この拠点を捨てて逃げましょう。」
雪は闇影の強さを理解したのか既に諦めモードに入った。
「如月さんってそんなに強かったのですか?」
「強いなんてもんじゃないわよ。私たちとヘルヘイム全員が力を合わせて暁に挑んでも3秒も立たずに全滅させられるわ。」
俺の前で俺の自慢をされるとむず痒いな。
「じゃあ、打倒闇影に向けて作戦会議を始めるか。」
面白ければ評価、ブックマークをお願いします。




