第70話 ヘルヘイム2
一度自分の部屋に荷物を置き、そのまま皆で指定されたバンケットホールへ向かった。
そこにはヘルヘイムのメンバーらしき人が100人以上いる。
「ここに居るのがヘルヘイムのメンバーです。任務や負傷でこれないメンバーもいますがそれでも150人ほどいます。」
「仲間が加わるたびに毎回こうやって集まりを?」
「はい。私たちは何よりも協調性を大事にしています。ですのでこういった集まりには時間とコストをかなり使っています。」
毎回こんな事をするのは無駄だと思うが烏孝雄には俺と違った考えがあるのだろう。
それよりも軽く見回すだけでも分かる。
現在のヘルヘイムのメンバーには活気が無く、一部の人間はやつれているようにも見える。
これは不定期な犠牲の誓いからの襲撃の影響だと考えられる。
俺たちが加わるだけでどうにかなるような状態か?
「皆さん注目してください。事前に知らせた通り新メンバーを紹介したいと思います。彼らは特殊ルールで防衛側として生き残った実力のある人たちです。きっと私たちの力になってくれます。」
そう言った烏孝雄はチームの欠片の所有者である俺にマイクを渡してきた。
大勢の人間の前で喋るのは慣れてないがこの様子からして聞いているのは一部の人間だけだ。
あまり気負い過ぎず話そう。
「烏さんからスカウトされました、如月暁です。微力ながら皆さんの力になりたいと思います。」
一言添えて俺は隣にいた雪にマイクを渡す。
まさか自分も何か喋ると思っていなかったのか一瞬表情が強張った。
そして俺が自己紹介が終わったら隣にマイクを渡す流れを作ってしまったため皆自己紹介をすることになった。
特に安藤はこのような場になれていなかったようで明らかに声が震えていた。
後で謝ろう。
その後も烏孝雄が一通りの演説をし、その場は解散となった。
俺と冬川と雪は烏孝雄に呼び出されモニタールームへ招待された。
モニタールームにはスパイ映画などで見るようなモニターが数十個壁一面に張り付けられており、ハイスペックPCも数台稼働中だ。
現在モニターにはこのホテル全体の様子が表示されている。
流石に各部屋の様子は映し出されていないが、それ以外死角はない。
「この部屋の鍵と扉はあるメンバーの能力で作り出した特注品です。簡単に壊すことはできないし、鍵をピッキングで開ける事も不可能だと思ってください。そして、この部屋に入れるのは現状私含め4人。その能力者と幹部である氷室相馬と柊玲奈だけ。そもそも他のメンバーはこの部屋の存在すら知りません。」
「そんな部屋をまだ連合に加わっていない俺たちに見せるという事はそれだ現状が良くないという事ですね。」
「話が早くて助かります。如月さんのおっしゃる通りです。現状ではあと1か月耐えることも難しいでしょう。ですので、あなた達にはこの部屋の設備を最大限利用して拠点の防衛をしていただきたい。勿論私たちも最大限サポートします。」
「つまり、指揮権を俺たちに委ねるという事ですか?」
「はい。ですが、まだあなた達はメンバーに信用されていない。ですので、表向きには私が指揮を執ります。」
「俺たちをそこまで評価する理由は?」
「年寄りの勘ですかね。お会いするまでは少しの戦力と考えていたのですが、実際にあなた達3人を見て考えを改めました。あなた達3人ならこの現状を打破できると。」
本当の事を言っているのかいまいち読めない。
言っていることは胡散臭いが声色、表情、発汗、様々な要素を総合的に判断して嘘はついてないと思う。
「分かりました。絶対とは言い切れませんが何とかして見せます。」
烏孝雄の言ってることが嘘でも本当でも指揮権をこちらに譲ってくれるのなら願ったり叶ったりだ。
「ねえ、話し終わった?」
冬川がそわそわしながら聞いてきた。
「終わってはないが何だ?」
「ここのPC改造して良い?」
突拍子のない発言に少し驚いたが冬川なりの考えがあると思い、烏孝雄に許可を取る。
「壊さなければ何しても構いません。ですが、絶対に壊さないでくださいね。」
「勿論!!」
許可が下りたところで冬川は早速PCを分解し始めその後、何やらプログラミングをし始めた。
今話しかけても応答しなさそうなので一旦冬川の事は無視することにする。
「やはり冬川さんは機械系に強いのですね。」
「まあ、詳しくは内緒ですが冬川の情報収集能力やPC周辺の技術は信用してもらって大丈夫です。」
元雷鳴の情報担当である冬川以上のハッカーは多分この世界にはいないだろう。
「とりあえず、時間が無いでしょうし具体的な話をしましょう。」
「そうですね。では、ここで一つ機密情報をお渡しします。実は、犠牲の誓いが次に攻めてくるのは5日後と言う情報が入ってきました。」
「その情報は信用できるんですか?」
「はい、ここから先は特に他言無用でお願いします。」
よほど重要な情報なのか俺達しか入れないはずの部屋なのにも関わらず烏孝雄は小声で話し始めた。
「実は、私たちの仲間の一人が犠牲の誓いにスパイとして潜り込んでいます。」
面白ければ評価、ブックマークをお願いします。




