第69話 ヘルヘイム
「では、早速ですが私たちの現状について軽く説明します。私たちヘルヘイムは現在 「犠牲の誓い」と言うチームと敵対関係にあります。」
「犠牲の誓い?」
聞いたことのないチーム名で思わず口に出てしまった。
「あれだよ。私が前に話した3勢力の内の一つ。10チームで形成された連合だけど全員が裏社会の人間だから他の連合と比べても実力が一番高い。」
冬川がすぐに説明してくれた。
「さすがですね、そこまで調べているとは。冬川さんはその道のプロですか?」
冬川の見た目は小学生だがそれでも烏孝雄は自分と対等もしくはそれ以上の立場として接している。
「どうだろうね?」
Yesとは答えなかったが明らかに上機嫌なのが分かる。
「それで、ヘルヘイムは押されていると?」
「その通りです。定期的に拠点を攻められ、少なくない犠牲者を出しています。彼らの狙いは間違いなく私が持つ連合の欠片の破壊。」
「それなら一度、連合を解散すれば犠牲の誓いのターゲットから外れるのでは?」
「確かに実力がある者ならそれでもいいと思います。しかしヘルヘイムは皆実力があるわけではありません。実力がない者、星の獲得数が少ない者を保護するのも我々の目的です。それに、ルール上一度連合を脱退したらその連合に入ることが出来ませんから。」
そう言って烏孝雄は優しく微笑んだ。
「じゃあ、俺たちはヘルヘイム拠点の防衛の手伝いをするという事でいいですか?」
「基本的にはそうですね。しかし、冬川さんは情報収集として動いてもらいたいです。」
烏孝雄は冬川の情報収集能力をかなり評価しているようだ。
「私は良いよ」
「ありがとうございます。では、今日はもう遅いので明日私たちの拠点に案内したいと思います。」
烏孝雄と幹部2人は立ち上がり姫百合女学院を後にした。
「まさかヘルヘイムに入るなんてね。何のメリットもないのに」
雪は少し不満そうだ。
「まだ入るとは言ってないだろ。保留だ。」
「でも、防衛の手伝いをすることになったじゃない。」
「まあ、実践経験も積めるし良い機会じゃないか。訓練の成果を出せるかもしれないぞ。」
それからも色々と文句を言われたが適当に流すことに成功した。
余談だが勇人や歩、晴翔もこの話に納得したらしい。
翌日の早朝、約束通り烏孝雄と幹部2人が私立姫百合女学院へやってきた。
俺と冬川と雪以外は烏孝雄と初対面で挨拶している。
烏孝雄の年齢は見た目から推測するにおそらく60歳以上であるが愛奈や椿なんかのJKと気さくに話せている。
俺や雪、冬川と話す時と違って口調も硬くない。
相手と場面で変えているのだろう。
一方幹部の氷室相馬と柊玲奈の年齢は俺たちと同じで16~18歳だと思うがあまり馴染めていないようだ。
「それでは行きましょうか?」
「孝雄さん、ヘルヘイムの拠点はここから遠いんですか?」
歩と烏孝雄はかなり親しくなったようで会話のぎこちなさを全く感じない。
流石コミュ力お化けとそれに適応した人間だ。
「そうだね、かなり遠いよ。」
「え、じゃあ車とか使うんですか?」
「いや、乗り物は使わない。」
「まさか長距離を歩くんですか?見ての通りそこそこ荷物あるんですけど」
拠点の防衛は1日2日で終わる話でもないため皆着替えや日用品を用意してある。
「大丈夫、相馬の能力を使うから。」
俺たちは氷室相馬の近くに集めらた。
「じゃあ、行くぞ」
氷室相馬がそう言った瞬間、目の前が真っ白に輝いて光が消えたら見覚えのない空間に転送された。
「ここがヘルヘイムの拠点。とりあえず案内するから着いてきてください。」
氷室相馬の能力については一切触れられなかったがおそらくテレポートだろう。
空間を操る俺の能力とかなり似ているが俺の能力は長距離の転移に対応していない。
逆に氷室相馬の能力は俺の能力の様に汎用性はあまり高くないと思う。
詳細は分からないが。
烏孝雄に案内されこの建物の全体像が見えてきた。
この建物はどこかのホテルでかなり大きい。
この大きさなら約300人いる連合でも一人一部屋ある。
なんなら空き部屋が大量に出来そうだ。
「皆様はこのフロアの部屋を使ってください。部屋割りはご自由に。荷物を置いたら一度ヘルヘイムのメンバー全員に紹介するので1階のバンケットホールまでお越しください。」
烏孝雄が立ち去った瞬間に歩と白石が部屋割りをじゃんけんで決めようと言い出した。
このフロアの部屋の数は20程度。
対して俺たちのチームの人数は俺含め12人。
一人一部屋あり、空き部屋も出る。
歩と白石以外は何処の部屋でも良いという雰囲気を出しているが、彼らにとってはどの位置の部屋を取るかも重要らしい。
ルールは1位の人間が全員の部屋割りを決めるというもの。
という事で一応じゃんけんをすることになったのが、俺や冬川は相手が出す手が予備動作で分かるため一般人相手であれば負けることはないが、2人のためにあえて敗北した。
雪も俺の訓練を受けてきた結果、かなり動体視力が上がっていて恐らく負けることは無いだろうが敗北していた。
その結果じゃんけんで勝利したのは偶然にも白石だった。
俺、冬川、雪は自分で敗北を選んだが他の人間はわざと負けたわけではないだろう。
この勝利は紛れもない白石の運だ。
白石が決めた部屋割りは右から愛奈、歩、雪、冬川、白石、勇人、笠原、晴翔、俺、八乙女、椿、安藤、の順番になった。
歩の隣が歩が告白した2人なのと白石の隣がやけに白石が親しげに話し掛ける冬川だという事実は偶然という事にしておこう。
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