第67話 平和な日常(終)
それから約3分で体育館に到着した。
だが、そこには誰の姿もない。
「椿の能力か?」
「だろうね。人の居場所を特定する能力。暁の居場所を特定したとこで身体能力に差があるから問題ないけど・・・」
「何か、不安そうだな。」
「暁も気づいてるでしょ。もっと厄介なのが八乙女さんの能力である少し先の未来を見る能力。このゲームに限った話じゃないよ。もしかしたら・・・」
「俺の能力の事や俺たちの関係もバレてる可能性があると言いたいんだろ。」
「まあね。」
「そのことについては、出会った時から警戒している。まあ、俺たちの関係や能力について、バレてないかもしれないし、バレていても現状何もアクションを起こさないという事は問題ないだろ。それよりも今は計画を遂行することが最優先だ。」
残り時間12分。
最後の計画を実行するために10分は残しておきたい。
冬川の事だからそれらの事も織り込み済みなはずだ。
「現在、ターゲットは2階東階段を上ってる。壁を上って3階で待ち伏せしよう。」
壁を上り、3階の階段で待ち伏せしていると急に視界が真っ黒になった。
視力だけじゃない、聴力、嗅覚、が無くなっている。
これは安藤季里奈の他人の五感を奪う能力で間違いないだろう。
聴力がないせいで冬川からの指示が聞こえない。
だが、この状況は想定済みだ。
これでも、元世界最強の殺し屋と呼ばれていた。
5感が無くなった程度ではほとんど支障はない。
研ぎ澄まされた第6感。
殺し屋にとって5感よりも重要なもの。
俺はその感に頼って思うがままに進み手を伸ばす。
触覚も奪われているため触った感覚はないが、次第に視力が回復していき、俺の手は安藤季里奈の手を握っていた。
「!!」
安藤はあまり男に触れられたことがないの顔を赤くし、縮こまっている。
「あっ、悪い」
安藤の反応に俺も驚き、変な声を上げてしまった。
すぐに手を放し、近くにいる八乙女と椿を捕まえる。
「すごいですね、私たち3人の能力を合わせても捕まってしまいました。」
「ね、季里奈ちゃんが五感を奪って、それでも捕まえるなんて。」
「・・・」
八乙女と椿は俺を褒めてくれている。安藤も無言で俺を褒めているのを感じる。
「3人の連携もすごかった。」
「ありがとうございます。」
「あとは、愛奈と星川君だけか」
「では、私たちは屋上へ行きますね。敵ではありますが応援しています」
そう言って3人は屋上に向かった。
「やっと計画の最終段階だね。歩君は作戦通り愛奈ちゃんと行動しているよ。場所は計画通り屋上ね」
俺は歩いて屋上へ向かう。
残り時間は10分。
時間に余裕がないと思ったが、予定通り10分の時間を確保することが出来た。
これも冬川が調整したのだろう。
そして、俺たちの計画の最終段階。
俺が屋上へ到着した時には残り時間5分。
計画を遂行するにはちょうど良い時間だ。
屋上にはこのゲームで俺が捕まえたメンバーが冬川が用意した牢屋の中に入っている。
そして、2人だけ牢屋の中に入っていない人物がいる。
それが歩と愛奈。
「もう逃げ場はない。おとなしく降参しろ」
俺がそう言うと計画を知らない愛奈は俺の方へ近づいてきた。
それを歩が止める。
「暁、お前俺の能力を忘れたわけじゃないだろうな。」
「歩の能力?まさか!!」
歩は愛奈を抱きかかえて屋上から飛び降りた。
いや、飛び降りたのではなく空中で浮遊している。
正直全力でジャンプすれば捕まえることが出来るが、そんなことをすれば計画が台無しだ。
俺達の計画はこれが最終段階。
絶体絶命な場面で歩が愛奈を助ける。
冬川曰く女は助けてもらったら恋に落ちるとのことだ。
これで告白成功率はぐんと上がった。
そして、約3分経過し全員の端末に通知が鳴る。
ゲーム終了
勝者:逃げ側(生き残り:星月歩、一色愛奈)
こうして俺たちの計画は幕を閉じた。
で、歩の告白の結果はと言うと・・・
普通に振られたらしい。
理由は他に思っている人がいるとのことだ。
つまり、俺たちが何をしようが結果は変わらなかったという事になる。
「暁~、俺には一生彼女が出来ないのかもしれない」
「ドンマイ」
流石に2回目は次の恋を探せなんて言えない。
だから俺は歩の頭を優しくなでる。
傍から見たら誤解されそうな絵面だが幸い周囲に人の気配はない。
もしかしたら冬川は見ているかもしれないが。
「暁、俺次の恋を見つけることにするよ」
「それが良い」
俺が遠慮して言えなかった答えに自分から辿り着いた。
失恋を経験したことでメンタルが強くなったのかもしれない。
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平和な日常というのは素晴らしい。
そう思うと何かが起きる。
いつもそうだ。
ここ最近俺が平和を意識すると必ず血が流れる。
数か月前は急に神が出現し神殺人殺というデスゲームが開催された。
第一ステージが終わり、第2ステージで平和な日常が訪れたと思いきや特殊ルールが始まった。
そして今に至る。
この俺たちが居る私立姫百合女学院に来訪者がやってきた。
それも、一般人ではない。
また血が流れる予感がする。
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