第64話 平和な日常2
「そういえば、海外の動向はどうなっているんだ?」
冬川を仲間にして以降、こういった情報収集は全て冬川に一任している。
俺が調べるよりもより正確な情報を入手し、またその情報から様々な考察をしてくれる。
「海外も日本と同じような状況かな。神殺人殺が始まって以降企業や国家機関全て機能してない。けど、一部の国では国家機関が国民を統制しているらしい。」
「具体的には?」
「例えばアメリカやロシアとかの軍事力が上位の国なんかは緊急措置として、能力を悪用する国民の射殺を許可しているらしい。それに、一個人だといくら能力が強くても国家機関には勝てないしね。それでもマフィアとかの犯罪組織には手を焼いているらしい。」
「他国の殺し屋がこっちに来る可能性はあるのか?」
「こっちって言うと暁狙い?」
「そうだ。α1が生きていたという事が海外にまで広まっていたら、その可能性があるはずだ。」
俺が最も危惧している事。
それが他国の殺し屋だ。
日本は世界的に見て殺し屋の数は少ないが質が他国を上回っている。
俺やファースト、そして冬川なんかがいい例だろう。
ただ、それでも他国の圧倒的な数を相手にするとなるとかなり苦しい。
「まあ、どちらにせよその可能性は今のところないよ。」
「根拠は?」
「第2ステージが始まって以降、国境に透明な壁が出現したという報告が上がってる。その壁の硬度は無限という結論を様々な国の科学者が結論付けたらしい。」
つまり、とりあえず第2ステージでは他国の殺し屋を警戒しなくても良いという事か。
そんなこんなで雪の訓練を見届けつつ情報交換を続ける。
雪のトレーニングが終わり、俺はこの学校の廊下を適当に歩く。
行先も目的も決めていない。
ただ、暇だから歩いているだけだ。
すると、後方から歩が走って俺に近づいてきた。
「暁、少しいいか?」
俺は暇なこともあり、歩の話を聞くことにする。
「実は・・・、俺、愛奈ちゃんに告白しようと思っているんだ!!」
予想もしていなかったその発言に俺の心臓が跳ねた。
こんなに驚いたのは久しぶりだ。
そういえば、歩が俺に振られたことを相談してきた時、俺は「次の恋を見つけることだな」と恋愛経験のないながらもアドバイスした。
そのアドバイス通りに歩は次の恋を見つけたようだ。
それにしては早すぎる気もするが。
ただ、アドバイスしたからには多少の責任が生じる分けで、俺はこれからの歩の相談に可能な限りサポートしなければならない。
「で、俺に何してほしんだ?」
「暁って、愛奈ちゃんと仲良いだろ?」
「まあ、良い方だとは思う」
「だから、さりげなく俺の魅力を伝えてほしんだ。そして、暁が今と思ったときに俺が愛奈ちゃんに告白する」
歩の作戦に少し呆れてしまった。
なんか、不正に加担している気分だ。
ただ、数少ない友人の頼みを聞くこともまた友の役目ともいえる。
どのような結果になろうが俺はこの任務を全うする。
「分かった、やるだけやってみる。失敗しても悪く思うなよ」
「勿論。やっぱり暁は頼れるな。勇人に相談しても「知らん」て突っぱねられたし、晴翔にも相談しようとしたけどあいつ顔が良いから逆に愛奈ちゃんを取られそうだし」
つまり、俺は都合の良い男だったという分けか。
「じゃあ、良いタイミングで連絡してよ。出来れば今日中にお願い。俺の勇気が無くなる前に」
そう言い残し歩は走って何処かに行ってしまった。
一人残された俺はその場に立ち尽くす。
もしかしたら、雷鳴を崩壊させるよりも難しい任務かもしれない。
「話は聞かせてもらった。」
何処からともなくそんな声が聞こえた。
その声の主はやはりと言うべきか冬川だ。
前に歩が雪に振られた時も冬川が近くにいた。
偶然か必然化俺の知る限りではないが、一人では困っていたので好都合だ。
「で、何かいい案はあるのか?」
「勿論。でも、一旦場所を変えようか」
誰かが近づいて来る気配を感じ俺たちは普段使わない教室へ足を運ぶ。
向かった先は進路指導室。
本来ならば進路について悩む生徒に対し、教師がアドバイスをしたりする部屋だ。
それを今回は恋愛相談に使っている。
それも、他人の恋愛相談だ。
もっと詳しく言えば他人の告白を成功させるために如何にして不正を行うかの作戦会議である。
俺と冬川は机とイスを対面に並べそこに座る。
傍から見れば俺が教師で冬川が生徒だろうが、今回に限っては俺が生徒で冬川が教師だ。
「一通りの話は聞いたけど、一応具体的に話してほしいな」
心の中で「聞くなよ」という突っ込みを入れ、冬川の質問に答える。
「具体的も何も、歩の告白の成功率を上げるために俺が愛奈に歩の魅力を伝えるのが今回の任務だ」
「なるほど。つまり、今考えるべきは2つだね」
「歩の魅力と伝え方だろ。」
「正解!!じゃあ、まずは歩君の魅力を考えようか」
「「・・・」」
冬川の発言の後沈黙がこの教室に訪れた。
「難しいな」
「だね」
冬川と俺の頭脳を合わせてもなかなか歩の魅力が出てこない。
「運動神経が良いとか」
「いや、暁の方が良いでしょ」
「俺と比べるなよ。」
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