第60話 隠し要素10
今までの限界であった1分を超えたあたりから意識が遠のいていくのが分かる。
気を抜いた瞬間にこの空間は崩壊する。
その時、俺たちは確実にボスとファントムに殺される。
「くっ!」
一瞬意識を失いかけその場に膝から崩れ落ちる。
現在残桜世界を発動して約1分10秒経過した。
残り50秒。
俺の体は限界を迎えて、今は精神力で乗り切っている。
冬川は俺が倒れないように体を支えてくれている。
残り30秒を経過したところで今までの比にならないほど意識が遠のいた。
俺は反射的に持っていたナイフを自分の腕に突き刺し痛みで意識を覚醒させる。
「危なかった」
残り20秒。
俺はその後も自分の体をナイフで刺し、難を凌ぐ。
それでも、やはりと言うべきかナイフを持つ握力すら無くなってしまった。
俺は冬川に「頼む」と言ってナイフを手渡す。
冬川は涙で顔がぐしゃぐしゃになりながらナイフを拾い俺の腕や腹を刺す。
冬川が刺す場所は後遺症にならないような場所でありながら、痛みは大きい。
さすが元雷鳴だ。
残り5秒
後は冬川に任せて俺は・・・
その瞬間、俺の視界は真っ暗になり意識がだんだんと遠のいていくのが分かる。
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「痛っ」
次に目を覚ました時には痛みで最悪の目覚めだった。
だが、痛みを感じるという事は自分が生きている証でもある。
戦闘で負った傷や意識を保つために自分で刺した傷は綺麗に縫合されている。
周囲を見渡して推測するにここは雷鳴の拠点の医務室のようだ。
その証拠に俺は今ベッドで寝ていて周囲にも数個ベッドがある。
他にも多量の薬に包帯などの応急処置に適した器具が置いてある。
痛みで何も考えられずに数分間ボーっとしているとコツコツと廊下から足音が聞こえてきた。
その足音は迷いなくこちら(医務室)に近づいてくる。
体は動かせないが一応警戒はしておく。
まあ、来訪者は予想できるが。
その来訪者はノックもせず医務室の扉を開けた。
来訪者は俺と目が合った瞬間に勢いよく俺にダイブしてきた。
「暁ーー!!」
重量はたいしたことないが勢いがあったこともありせっかく綺麗に縫われた縫合部が裂けそうになる。
「おはよう。冬川」
俺の言葉で安心したのか冬川の目から涙があふれ出す。
「良かったー。このまま目を覚まさないかと思ったよ」
俺に抱き着いたまま冬川はそんなことを言った。
冬川の泣いてる姿は身長と体系が小学生並みだからなのか、かなりしっくりくる。
だが、そんなことを言ったらこの今にも死にそうな体に腹パンされかねない。
自分の生存のためにも黙っておくとしよう。
数分泣いて落ち着いたのか冬川の目は涙の跡で赤く腫れあがっているが、もう泣いていない。
ただ、俺に抱き着いたままなのは変わらない。
傍から見ると俺は犯罪者のような感じがして気が気ではない。
「で、俺はどのくらい寝ていたんだ?」
「今日で9日目かな。この特殊ルール終了までは残り3日」
予想よりもダメージが大きかったらしく、かなりの時間寝ていたらしい。
9日間も起きなければ確かにこのまま死ぬと思っても無理はない。
けど、このダメージを受けて9日間で目を覚ますのはかなり特殊な方だとは思う。
一般人なら間違いなく死んでいるし、訓練を受けた者でも植物状態になっていてもおかしくない。
まあ、俺もここから一歩も動けないけどな。
「あと3日か。それまでにはこの傷を治したいな。」
「別に焦る必要ないんじゃない?あっちには雪ちゃんがいるし」
冬川も雪の事は評価しているらしい。
確かに、あっちには雪が居るから問題ないと思うが、出来ることなら特殊ルール終了したと同時に合流したいところだ。
とはいえ、今は何もできないしやる気も起きない。
何かをしようとすると体が拒否反応を起こす。
その拒否反応に逆らおうと思えば逆らえるが、その場合死んでしまう気がする。
「そういえば、よく俺が寝てる間襲撃に合わなかったな。仮にも冬川は核プレイヤーだろ」
現在行われている特殊ルールには核プレイヤーが存在する。
核プレイヤーはチーム又は連合からランダムに選ばれ常に現在地などの情報が他のプレイヤーに開示される。
厄介なのは核プレイヤーを殺したチームはその時点で第3ステージに進めるという事だ。それに第3ステージが始まると同時に星が配布されるというおまけつき。
自分の実力に自信のあるチーム又は個人はこの核プレイヤーを狙いに来てもおかしくない。
冬川は情報収集に関しては俺を上回るが、戦闘面に関してはお世辞にも強いとはいいがたい。
まあ、銃の扱いはかなり上手い方ではあるが。
そんな冬川が一人でどうやって生存できたのだろうか。
「それはね、」
自信満々な顔つきで焦らしてくる冬川だが俺はそんな冬川の頬を摘み軽くひねる。
「痛い!」
「焦らすからだ。」
「もー、ユーモアが足りないな」
そう言った冬川だが、どこか嬉しそうな表情を隠しきれていない。
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