第59話 隠し要素9
周囲を見渡すと戦いの影響で破壊された椅子や机が散乱している。
雷鳴の拠点とはいえ表向きには普通の会社なこともあり机や椅子があるのは当然と言える。
ただ、明らかに被害が大きい場所と小さい場所の差がある。
俺はこのフロアを満遍なく利用し戦闘を行っていたこともありこの被害の差は不自然だ。
まあ、この不自然さの原因はボスの能力である範囲内の時間を巻き戻す能力だろう。
ただ、それにしても被害の大きい場所と小さい場所で差がありすぎる。
俺はこれまでの戦闘を思い出し、ある可能性を考えた。
ファントムをこれまで何度も殺してきたが、すぐにボスにより蘇生されてきた。
厳密には蘇生ではなく、ファントムの時間を殺される前に戻しただけだが、大事なのはその時同時にファントムの周囲約2メートルの時間も戻ることだ。
ファントムを殺した回数は約300回。
勿論、ファントムを蘇生された回数も約300回。
ファントムを殺した場所はこのフロアのランダムなポイント。
ただ、ランダムと言っても300回も試行すれば、連続で殺した場所が重なることや、その周囲で殺す事が多々あった。
分かりやすく言うとこういう事だ。
このフロア全体をA、Bでちょうど半分となるように分けるとしよう。
ファントムを1回目に殺した場所をAとする。
次にファントムを殺した場所をBとする。
このAとBはランダムで起こりうる。
もちろんAAAAとなったりBBBBとなったりする可能性は十分にあり得る。
ここで大事なのはこのAAAAやBBBBの重なり。
例えば俺がAAAAでファントムを殺したとする。
そしたらファントムはすぐに蘇生され、Aの周囲にある物はファントムの蘇生に合わせ時間が巻き戻る。
この時、Bの周囲にある物は時間が巻き戻らない。理由はボスの能力の範囲外だからだ。
Aの連続の後Bでファントムを殺したとしよう。
そしたらファントムはBで蘇生されBの周囲にある物の時間は巻き戻される。
だが、この時AよりもBの方が被害が大きい。
つまりだ、ボスの能力は範囲が有限なのはもちろん戻せる時間もさほど長くないという事が分かる。
ただ、この戻せる時間の最大が分からない。
だから俺はある作戦を実行する。
足元に転がっているボールペンを拾い上げ2つに折る。
そのボールペンをポケットに忍ばせ1分ほどファントムの攻撃を受け流し、1分経過したのを確認しファントムを殺す。
その時、俺はファントムの近くに待機する。
ファントムが蘇生されたと同時に後ろへ下がる。
そしてボールペンを確認する。
ボールペンは折れたままインクを垂らしている。
このことから分かることはボスの時間を巻き戻す能力は1分以上X分以下巻き戻せるという事。
俺は再びボールペンを拾い上げ次は3分間ファントムの攻撃を受け流し、殺した。
先ほどと同様にファントムの近くで待機し、ファントムが蘇生されたと同時に後ろへ下がりボールペンを確認する。
結果、ボールペンは元通りになっていた。
同様の操作を2分で行った結果、ボールペンは破壊されたままだった。
以上の事からボスが戻せる時間の範囲は0秒から2分未満という事だ。
さらに詳細な時間が知りたいが、俺がやっていることがばれそうなのでこれくらいにしておく。
これで、俺の勝利条件が明確になった。
約2分間の残桜世界。
これが出来ればボスを殺すことが出来る。
残桜世界の性質上、俺が設定しなければ相手は何もすることが出来ない。
勿論ボスの能力の予約もだ。
いくら俺が残桜世界を発動する前に能力の予約をしていてもその能力は発動しない。
俺が残桜世界を2分以上保つことが出来たらボスの能力の効果時間を超えることが出来、蘇生不可にすることが出来る。
ただ、今までに一度も残桜世界を2分も保つことが出来なかった。
今の俺の残桜世界の持続時間の平均は大体1分程度。
つまり今までの2倍、残桜世界を持続させなければならない。
まあ、不可能かと言われればそうではない。
あることをすれば可能性はある。
俺は冬川に視線だけで指示を伝える。
伝わるか半信半疑だったが、さすが元雷鳴の情報担当だけあって今の俺が何を求めているかが伝わったようで驚きつつも頷いた。
これで全ての条件が整った。
後は運と自分の忍耐力が勝負を決める。
俺はファントムを殺し、そのままボスの方へ直行しボスを殺した瞬間に残桜世界を発動した。
それと同時に冬川も能力を発動し俺の能力にバフを掛けてくれた。
冬川の能力、他人の能力を強化する能力で俺の能力は強化される。
残桜世界は俺の能力である空間操作の延長上にあるため勿論、残桜世界も強化される。
冬川の能力のおかげでまだ10秒しか経過していないが残桜世界が崩壊する気がしない。
いつもなら10秒ほど経過すると少しづつ苦しくなってくるが今はそれが無い。
「大丈夫そう?」
冬川も残桜世界の効果範囲にいたためこの空間に存在できる。
ただ、冬川には何のルールも設定していない。
だから、このように俺を心配することが出来る。
「ああ、冬川のおかげでまだまだ余力はある」
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