第58話 隠し要素8
残桜世界を維持し続けるにはまだ訓練が足りない。
始めは数秒で残桜世界が崩壊したが、今は大体1分程度維持し続けることが出来る。
だが、十分な時間とはいいがたい。
それに、色々と制限があるのも事実。
とうとう空間維持に限界が来て残桜世界は崩壊した。
周囲に無数に立っていた散りゆく桜の姿もなくなり、先ほどまで戦闘を繰り広げていた雷鳴の拠点が目の前に広がる。
それと、首がないファントムとボスの死体が転がっている。
久しぶりに本気を出したことで疲れが一気に襲ってきた。
ヨネアとの戦闘でも一応は本気を出していたが、ヨネアに対しては怒りもなくリミッターを解除することが出来なかった。
だから、あの時の戦闘はあながち全力とは言えないのかもしれない。
「お、終わったの?」
雷鳴のボスとファントムの死体が目の前に転がっているにも関わらず冬川はそんなことを聞いてきた。
それほどまでに冬川にとって雷鳴という組織は脅威であったことが分かる。
「ああ、間違いなくこの手で殺した。恐らく雷鳴は自然崩壊する。これで、冬川が雷鳴の人間に狙われることもないはずだ。」
雷鳴の幹部、ファントムそしてボス、その全員が死んだのだからもう雷鳴は機能しない。
「ありがとう」
冬川これまでの呪縛から解放されたかのように今まで見せたことのない笑みでお礼を言った。
「それと、聞いていいか分からないんだけど、暁ってアルカディア条約の関係者だったの?」
「ああ、そうだ。冬川も知ってたんだな。」
「雷鳴にいたときに名前だけは聞いたことがある。だけど、詳しい情報は私の耳には届かなかった。」
「良かったな。その情報が耳に入っていたら確実に殺されていたはずだ。」
「ちなみに、聞いたら教えてくれる?」
「知りたいのか?」
「まあ、一応仲間だし」
少し照れ臭そうに言う冬川に対し、俺は「教えない」と言った。
「いや、今のは教えてくれる流れだったじゃん」
「そうか?まあ、いつか話す時が来るからその時まで待っててくれ」
冬川は少し不満そうだが承諾してくれた。
「じゃあ、そろそろ帰るか。」
俺の体力がある程度回復したことにより、この場を後にする。
「・・・!!」
帰ろうとしたその時、突然の殺気を感じ咄嗟に冬川を抱きかかえ能力を使い少し離れた場所に瞬間移動をした。
殺気の方を見ると首を飛ばしたはずの雷鳴のボスとファントムが蘇っている。
首は繋がり傷も完治している。
どういうことだ?
確実に殺したはず。
「暁、気づいてると思うけど確実にボスの能力が関係してる」
さすがは元雷鳴だけあってこのような状況でも冷静な分析をしている。
俺も冬川と同様の分析をした。
確実にボスの能力。
そして、俺は一つある事を思い出した。
この神殺人殺の能力は死後も継続される。
このことは冬川と出会う前に色々実験して確証を得ている。
どういうことかと言うと例えば晴翔の能力、物質の硬度を変える能力を発動し固体状の物体を液体にしたとしよう。
その後、晴翔が死んでも物質は液体状のままという事だ。
恐らくこのルールを利用しボスは数秒後、時間を巻き戻す能力を随時発動している。
言ってしまえば能力の予約。
仮に数秒後自分が死んでいなければ能力の予約をキャンセル、逆に自分が死んだら能力が発動し、死ぬ前に自分の時間を巻き戻すことが出来る。
このような結論に至ったが、当たっているとは限らない。
だが、正直この考えが一番しっくりくる。
「私に奥の手をつかわせるとはさすがはα1だ。期待以上だよ」
パチパチと拍手しながら俺を称賛するボスは笑っている。
「君なら気づいているだろう。なぜ私が生き返ったのか。君の想像通りだよ。」
俺の思考を見透かしたかのような発言。
だが、本当に俺の考えが当たっていたとしたらボスは不死身だ。
どうあがいても殺すことが出来ない。
首をはねても数秒前に戻り全回復する。
俺がボスを殺す策を練ろうとしている時にもファントムが捨て身で攻撃してくる。
リミッターを外すことが出来、ファントム程度の実力では相手にならないがそれでも思考の邪魔をしていることには変わりない。
このままではいづれ俺の体力が尽きてしまう。
先ほど使った残桜世界での大幅な体力・精神力の消費は今も響いている。
少し回復したといえどプロの殺し屋を相手するには残りの体力が心もとない。
俺は空気弾を利用しファントムを木端微塵に破壊するがそれでもボスの能力で再生される。
仮にボスを木端微塵にしたところでさっきと同様に時間を巻き戻され復活される。
何か、手はないのか?
そこで、俺は周囲に目をやる。
こんな行動をしたのは自分でも意味が分からない。
戦いの最中、相手から目を離すのは自殺行為に等しい。
だが、俺は周囲を見渡す。
そして、俺は何故自分がこのような行動をとったのか理解した。
一つの違和感。
その何気ないもののために俺は今敵から目をそらしている。
だけど、それが俺を勝利へ導くカギになるかもしれない。
長年の経験と勘がそう言っている。
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