第53話 隠し要素3
俺と冬川は車を利用し雷鳴の拠点まで移動する。
俺たちの動きは雷鳴にも確実にばれている。
移動中も気が抜けない。
「そういえば、冬川の能力って何なんだ?お前だけ能力を公開してないだろ」
お互いのチームを融合するときに能力を教えあったが、冬川の能力だけ聞いてない。
聞いていないというか直前で上手い具合にはぐらかされた。
「私の能力は、他人の能力を強化する能力」
「冬川にぴったりの能力だな」
そんな事を話しながら、敵拠点への道を進む。
「一応情報のすり合わせなんだが、雷鳴の内情は冬川が居た時とあまり変わらないらしい。」
「え、私が他に情報を漏らす可能性があるのに。雷鳴に限ってそんな間抜けなことしないでしょ」
「確かにそうだが、予想よりも冬川の抜けた穴が大きかったらしい。内情を変える余裕なんてなかったんだろうな」
「それなら、勝てる可能性も・・・。いや、でも結局あいつを倒さないと」
「あいつ?」
「ファントム。雷鳴で一番の実力者。」
冬川が言うファントムという人物は俺でも知っている。
詳細は知らないが。
いや、詳細を知っている人間はごくわずかだろう。
なんせ、ファントムに狙われた又は遭遇した殺し屋は全員殺されている。
だから、情報が無い。
性別、年齢すらも分からない。
分かっているのはファントムと言うコードネームだけ。
「ほかにも雷鳴には実力が確かな殺し屋がたくさんいる。本当に勝てる?」
「どうだろうな?やってみないと分からない」
素の勝負なら俺に分があると思うが、結局は能力次第だ。
そんな会話をしていると、前方に人影があらわれた。
「冬川、車の中で待っててくれ。」
「気を付けて」
俺は車を降り、その人影に近づく。
人数はおそらく2人。
両方とも首元に雷の入れ墨が入っている。
確実に雷鳴の人間だ。
こいつらの目的は冬川の暗殺、ではなく隣にあった反応の正体の確認だろう。
「コードとはどういう関係だ?」
男の内の一人が俺にそんなことを聞いてくる。
コードと言うのは冬川の雷鳴にいたころのコードネームだろう。
「友人だ」
「分かった。死にたくなければコードをこちらに引き渡せ」
男二人は銃とナイフを同時に構えながら言う。
銃口は俺の方を向いており、引き金を引けば命中する。
「断る。」
「そうか」
男たちは躊躇なく俺に弾丸を放った。
俺は弾丸を避け、懐からナイフを取り出し相手との距離を一瞬で詰め相手の喉元に突き刺す。
だが、男の傷はみるみる再生していき、やがて綺麗に傷が塞がった。
考えるに、男の能力は超再生か?
いや、この段階で結論付けては危険だ。
俺はもう片方の男にターゲットを変え、先ほどと同様に距離を詰める。
ナイフを強く握り、相手に突き刺そうとするが、相手の身体が鉄の様に堅くなった。
なるほど、身体を金属にする能力か。
なら、対処は簡単だ。
俺は一度懐にナイフをしまい、再び男との距離を詰める。
そして、男の腕を掴み逃げられないようにし、もう片方の手で男の顔を全力で殴る。
男は全身を金属にしているが、そんなのはどうだっていい。
ただ、無心で殴りまくる。
その様子を見ていた男の仲間は放心状態だ。
金属を殴っているという事もあり、俺の拳は血まみれになったが、それでも殴り続ける。
相手の顔は徐々に変形していき、やがて意識を失った。
いくら金属であろうが、殴り続ければダメージは入る。
まあ、何はともあれ残り一人。
だが、こいつが厄介だ。
正直何をしても殺す事が出来ない気がする。
俺は男の能力について考える。
超再生という可能性は大いにある。
だが、俺の勘が男の能力を超再生ではないと言っている。
では、なんだ?
超再生以外にこのように瞬時にどんな傷でも治る能力。
考えている間にも男は俺を雷鳴式ナイフ術を使い殺しに来る。
俺は幾度となく返り討ちにするが、このままだとこちらの体力が持たない。
何百回と男を殺すうちに気づいたことがある。
男の動きが鈍くなっていることだ。
そりゃあ、こんなに動き回っていたら疲労で動きが鈍くなるのは当然だ。
俺でも動きが鈍くなる。
だが、動きに比べ男の呼吸は安定している。
能力が超再生であれば、長時間の戦闘で呼吸が不安定になるはずだ。
そこで俺は一つの可能性を見出した。
スマホをポケットから取り出し、冬川に電話を掛ける。
1回のコールで電話に出てくれた。
「冬川、俺が今いるところを安全かつバレずに観察できる場所を探してくれ」
「それなら、北にあるマンションの屋上とかかな」
その発言を受け、俺はマンションを外側からよじ登り屋上へ向かう。
「見つけた」
やはり、今まで俺が戦っていた男は能力で作り出した分身。
つまり、この男の能力は不死身の分身を作り出す能力。
「化け物が」
俺を前にした男は怯えている。
俺は男の首をナイフで切り落とし、冬川が待っている車に戻った。
「大丈夫だった?って酷いケガしてるじゃん!」
「このくらい大丈夫だ。」
「大丈夫じゃないでしょ。手、貸して」
俺は冬川に手を差し出し、冬川は俺の手に包帯を巻いてくれた。
「助かる。」
「いや、助かったのは私の方だよ。それよりも、何で能力使わなかったの?」
「あいつらの目的は多分俺の能力を上層部に伝えることだったからな」
そう、おそらく俺が戦った男2人は捨て駒。
俺の戦闘を遠くから見ていた人間が居たはずだ。
それも、俺が気配を察知できないほどの実力。
雷鳴の幹部クラスの可能性が高い。
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