第51話 隠し要素
歩は雪に振られたことを俺に話してくれた。
本当はその時見ていたが、そのことは言わない。
「まあ、次の恋を見つけることだな」
恋愛経験のない俺がそんなアドバイスをする。
その後も俺と白石で歩を慰めた。
神殺人殺で平和な日々が続いていたある日、待っていたかのように災難が降り注ぐ。
時は3時間前。
俺がいつも通り神殺人殺を開いて情報収集をしていた時の事だ。
神殺人殺の通知が鳴った。
【隠し要素】
これから第2ステージ隠し要素その1を公開する。
・ランダムで選ばれた複数のチームor連合の位置情報がリアルタイムで全プレイヤーに公開される。ここで、選ばれたチームor連合を防衛チーム又は防衛連合と呼ぶ。
・防衛チーム又は防衛連合の中でさらにランダムで選ばれた1名のプレイヤーを核プレイヤーと呼ぶ。
・核プレイヤーを殺したチームは第2ステージを即座にクリア出来る。
また、第3ステージが始まると同時に星を獲得することが出来る。
他にも様々な報酬が用意されている。
・核プレイヤーでなくとも防衛チーム又は連合のメンバーを殺すと報酬がもらえる。
・防衛チーム又は防衛連合はこの隠し要素が終了するまで生存者が居れば、ptと星が配布される。
・核プレイヤーの情報は全プレイヤーに通達される。
・隠し要素の終了時間は現在時刻から2週間とする。
以上
そして現在、俺達チームエンドは全員集合し会議を始めている。
運が悪いことに俺たちは防衛チームに選ばれた。
つまり、狙われる側だ。
さらに運の悪いことに核プレイヤーに冬川が選ばれた。
ルールには核プレイヤーの情報が全プレイヤーに開示されるとあったが、幸いにも顔写真と本名だけだ。
これに、元雷鳴所属なんて書いてあったら、雪や歩、勇人に正体がばれるところだった。
だが、厄介なのは雷鳴の人間に冬川の位置情報がばれたことだ。
神殺人殺の地図機能を使うと俺たちの位置が赤い点で表示されている。
他にも、防衛チーム又は連合のプレイヤーの位置が赤い点で表示されている。
特に、核プレイヤーは分かりやすく青の点で表示されている。
その点をタップすると核プレイヤーの情報が表示される仕組みだ。
雷鳴の人間はおそらく冬川に気づいただろう。
近いうちに冬川を狙ってくることは確実だ。
俺達殺し屋にとって神殺人殺は遊びのようなものだ。
特に雷鳴や闇影などの優秀な殺し屋だとその傾向は強くなる。
雷鳴の人間であれば、ゲームよりも裏切り者の始末を優先する。
雪を中心に作戦が立てられる中、冬川は席を立ち何処かに走って消えてしまった。
一瞬、冬川の顔が見えたが、泣いているようだった。
すかさず椿陽菜が立ち上がり冬川を追いかけようとする。
「待ってくれ、俺が追う」
俺は椿を制止させ、自分が何とかする旨を伝える。
「でも、私の方が夢羽と仲いいから・・・」
「椿さん如月君に任せましょう」
雪は俺を信用し、リーダーとしての権限を発動した。
改めて雪をリーダーにしたことを正解だと確信する。
「分かった」
少し、不服そうだが椿は納得して椅子に座る。
俺は雪に「後は任せた」と目でサインを送り、冬川を追う。
廊下に出るが、冬川の姿が見当たらない。
冬川は元殺し屋のため通常気配を消している。
そのため、気配を探って探すことが出来ない。
どうするか迷ったが、短い付き合いだが冬川の行動を思い出す。
脳を回転させ、やがて一つ心当たりのある場所へ足を向ける。
俺が来た場所は屋上だ。
予想通り冬川の姿もある。
俺が足を進めると冬川も俺の存在に気が付き、こちらを見て微笑んだ。
「私、これから一人で行動することにするよ」
そんな突拍子もないことを冬川は言う。
だが、冬川にとってはこれが最善の選択なのかもしれない。
「それで、どうするんだ?一人だと確実に殺される」
「まあね。せめて皆を巻き込まずに死にたいな」
冬川は生きることを諦めている。
もう、声に生を感じない。
俺は過去に、こういう声をした人間を何度も見てきた。
俺の大切な人も最後はこういう声だった。
嫌なことを思い出す。
どうやら俺は冬川のこの声であいつと冬川を重ねてしまったようだ。
それが原因か自分でも分からないが俺はあることを決意した。
「冬川が生き残る方法が一つだけある」
「・・・」
冬川は望みなんて無いように俺の話を聞いていない。
だが、俺は冬川に語り掛ける。
「俺が雷鳴を壊滅させる」
冬川はクスッと笑う。
「前にも言ったでしょ。無理だって。」
「ああ、確かに俺一人では無理かもしれない。だから冬川、お前も手伝え」
俺がそう言うも、冬川には届かない。
「闇影元Ω部隊α1の俺と元雷鳴の情報担当が組めば、何とかなるだろ」
「でも、私は何も出来ない・・・」
自分の無力さを実感したのか涙があふれている。
「冬川は俺のフォローをするだけでいい。いや、そこが肝心だ。冬川にしか出来ないことだ」
そして、俺は冬川の頭に手を乗せその言葉を言う。
「一緒に、雷鳴を壊滅させよう」
「分かった」
そう言った彼女はまだ不安が残る表情をしているがもう絶望はしていない。
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