第50話 告白
「それでも、今後のために雷鳴は潰しておいた方がいい」
「だから、無理だって」
冬川は呆れたように言う。
それほど、雷鳴という組織が強いことを知っているのだろう。
だが、俺が倒そうとしているのは闇影のボス。
それに比べたら、雷鳴なんてどうってことはない。
ただ、確かに冬川の言うように相性が悪い。
俺は殺し屋で、相手(雷鳴)は殺し屋を殺す事に特化した殺し屋。
やるならせめて情報が欲しいところだ。
まあ、情報を入手する術が無いこともないが、出来ればその方法は使いたくない。
とりあえず、雷鳴の件は保留という事でいいか。
近いうちに何とかするとしよう。
「分かった。今は何もしない。だが、手遅れになる前に雷鳴は潰す。」
「了解。その時までには私も情報を集めておく。これでも、一応、元雷鳴の情報担当だからね」
そんなことを言う冬川がなんとなく頼もしく感じた。
神殺人殺が始まって約2か月が経過した。
始めは、俺、勇人、晴翔、歩の4人で行動していたが、やがて仲間が出来た。
勿論その中には異性が居る。
俺たちのチームエンドは男6人、女6人の性別に偏りがないチームとなっている。
それが原因か定かではないが、起こりうるイベントが存在する。
そう、恋愛だ。
神殺人殺という自分の命が掛かっているゲームの最中にそんな浮ついたことは起こらないと思うが、実際に現在起こっている。
吊り橋効果というやつなのだろうか。
俺が廊下を歩いていると男女の気配を感じた。
いつもなら気にせず通り過ぎるところだが、何やら様子がおかしい。
今いる曲がり角を曲がったら、その男女に出くわしてしまう。
引き返そうと思ったが、少し気になってしまった。
気配を消し、壁に背中を預け、曲がり角の先を覗き見る。
気配の正体は雪と歩。
俺は殺しで鍛えられた聴覚を研ぎ澄まし会話を盗み聞く。
「で、二人じゃないと話せない用事というのは何かしら?」
雪は柔らかい口調で歩と会話を始めようとしている。
俺と二人でいるときに比べると口調に棘がない。
いや、雪は俺に対してだけ少し口調に棘がある。
まあ、そんなこと今はどうでもいい。
「あの、」
歩は次の言葉が出てこない。
出そうと思っても出せないのか。
「落ち着いて」
雪はそんな歩にやさしく言葉を掛ける。
俺には絶対しない対応だ。
俺相手だと、確実に「早くして、忙しんだけど」というだろう。
「俺と付き合ってください!」
そう言いながら、歩は頭を下げ手を差し出した。
俺は、誰かが告白する光景を見たことがなかったため聞き入ってしまった。
本来は良くない行為だろう。
だが、俺の好奇心が、悪行を上回る。
歩は手を差し出したまま震えている。
それほど、告白という行為は恐怖が存在するのだろう。
雪はその手を握らない。
それを察してか、歩も差し出して手を引く。
「ごめんなさい。今はゲームに集中したいから。それに・・・」
そう言って雪は歩を振った。
「それに?」
「いや、良いわ。気にしないで」
「じゃあ、今まで通り友達という事でいいかな?」
「それはもちろん」
歩は意外にも落ち込んではいなかった。
それが、歩の良いところだ。
俺は歩の次の恋が実ることを心から願う。
歩が去り、雪一人が残された。
声を掛けてしまっては俺が聞き耳を立てていたことがばれるため、来た道を引き返すことにする。
その瞬間、大きな声とともに背中に衝撃が走った。
「ロケットアタック!!」
その小学生が考えそうなネーミングと共に俺の背中に飛び乗ってきたのは他でもない、冬川だ。
これが雷鳴の情報担当だったと考えると以外にも雷鳴を簡単に壊滅させられるのかもしれない。
そんなことを思ってしまった。
冬川の声のせいで、雪がこちらに気が付き俺を睨みつけてきている。
「聞いてた?」
その一言に私は現在怒っていますという感情を乗せている。
ここで嘘をついても状況が悪化するだけだろう。
「聞いてました」
俺は一応申し訳なさそうにする。
「どこから?」
「多分、始めから」
雪は一度ため息を付き、俺に説教を始める。
雪が言うには俺は少し倫理観が欠けているようだ。
まあ、元殺し屋に倫理観を求められてもという感想を持ったが、口にはしなかった。
説教の末、俺が雪の願いを一つ聞くという形で幕を開けた。
説教中の間、俺の背中に乗っていた冬川は終始楽しそうにクスクスと笑っていた。
病院からこの私立姫百合女学院に引っ越したときに、俺たちの部屋割りが決まった。
女子は理科準備室、男子は事務室をお互いに改造して寝泊まりしている。
始めは歩が男女同じ部屋で寝泊まりをしようという案を出したが、女性陣がその案を却下した。
そして俺は雪に振られたばかりの歩がいる事務室の扉を開ける。
正直少し気まずいが、知らないふりをしておこう。
普段通りに扉をあけると、歩は白石に慰められていた。
どうやら白石には振られたことを話したようだ。
この2人は性格が似ているため気が合うのだろう。
出会って1日で親友と呼び合っていた。
泣いてる歩が俺に気づき、俺の胸に飛び込んできた。
「聞いてくれよ暁。」
歩の涙と鼻水が俺の服に付着してしまった。
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