第49話 ミーティング
特にやることもなく1日1日が過ぎてゆく。
まるで神殺人殺が始まる前の日常のようだ。
この第2ゲームの性質上自分たちから動かなければ特にやることはない。
俺達チームエンドの基本方針としては防衛に徹するという事だ。
これは、雪、冬川と内密に話し合った結果だ。
俺が何でも強制するのは少し違うと思い2人の意見を反映させている。
もうすぐ、1日1回のミーティングが始まろうとしている。
特に話すこともないが、チームでのコミュニケーションをしておいた方が良いと思いこういう場を設けた。
全員が集まったのを確認し、勇人が立ち上がった。
「皆聞いてくれ。」
全員不思議そうに勇人の方を見る。
「この間は場の雰囲気を悪くしてしまってすまなかった。」
勇人は深く頭を下げて謝罪をする。
俺の言葉が響いたのだろう。
1週間落ち込んだままだったが、ようやく気持ちの整理が出来たようだ。
「何言ってんだよ。誰もそんなこと気にしてないぜ。」
歩は勇人の肩を組みながらそんな言葉を言った。
不器用な彼なりの励ましだろう。
そのおかげか、いつもよりも雰囲気が良くなった。
雪と冬川も特に気にしていないという感じだ。
勇人の表情も晴れている。
その後、いつものように他愛もない話で盛り上がる。
全員が会話に花を咲かせている中、冬川が俺に話しかけてきた。
「矢野君にアドバイスでもした?」
冬川にはお見通しだったようだ。
「少しな。だが、この成長は間違いなく勇人自身の力だ。俺はその背中を押しただけだ」
他に聞こえないようにお互い耳を近づけて話していた様子を歩が見てきたのか俺たちをからかってきた。
「暁と夢羽ちゃんっていつの間に仲良くなったの?もしかして、俺たちに内緒で付き合ってたりして」
いつもの歩の冗談だが、それに冬川が便乗してしまった。
「そうだよ。ねー暁。」
夢川はその小さな腕を俺に巻き付けてきた。
その様子を見ていた愛奈と雪は冬川を引きはがす。
疑似ハーレム状態に歩がこちらをうらやましそうに見ている。
俺としては全くうれしくないのだが。
予想外に、雪も冬川の行動を冗談と受け取れずに俺と冬川が本気で付き合っていると思っている。
「冬川が言ったことは冗談だからな」
俺がそう言うと雪は落ちつき、静かに座った。
「そういう冗談はやめて」
雪は本気で嫌がっている。
このことで2人の間に亀裂が入らなければ良いが。
俺は全員の視線が向いていない隙を利用して冬川にお仕置きのチョップをお見舞いした。
「痛!」という声を出したがその声は会話でかき消される。
「さっきのお仕置きだ。」
そうして、ミーティングが終わった。
このまま何事もなく、神殺人殺が終われば良いと思ってしまう。
だが、そんな都合の良いことなんて起こらない。
神殺人殺のフリーチャット欄で数々の連合が出来ていることが明らかになった。
俺の考えでは連合はリスクが高すぎる。
連合リーダーが同じチームに居たらまだしも、その逆なら他人に命を握られることになる。
チームの欠片を渡すという事はそういう事だ。
だから、俺たちのチームは連合を組まないという方針を取っているが以外にも連合を組むチームが続出している。
その中で目に入ったのが、ブラッドオーダーという連合。
神殺人殺の第1ステージで名を挙げたプレイヤーが数名入っているという噂だ。
それに、加入チームが8。総勢80人以上。
これからもっと人数が増えていくと予想される。
他にも、注意すべき連合が続出している。
雪と冬川もこの動きには気づいているだろう。
問題はそれだけではない。
雷鳴の人間にも注意しなければならない。
冬川を仲間にしたは良いものの、雷鳴に命を狙われている人間が近くにいるのは危険だ。
だが、俺の目的を果たすためにも冬川は仲間にしておきたいのも事実。
「雷鳴を壊滅させるか」
そうポツリと呟くとこちらに近づいてくる足音がした。
「やめた方がいいと思うよ」
聞かれたくない相手に聞かれてしまった。
その足音の正体は冬川だった。
「気配を消すのはやめてくれ」
冬川は身体能力には恵まれていないが、気配を消すことや気配を探るという、殺し屋に必要な能力は備わっている。
まあ、これでも元雷鳴所属の人間だしな。
「癖なんだから仕方ないでしょ。それに、暁だっていつも気配消してるじゃん」
確かに俺も気配を消している。
癖というものは恐ろしく、やめようと思ってもやめられない。
そのせいで、勇人たちに話しかけるときは細心の注意を払わなければならない。
出なければ、基本的に驚かれる。
「それよりも、雷鳴に喧嘩を売るのはやめた方がいい。いくら暁が強いからって雷鳴には勝てないよ。それに、元殺し屋だと相性が悪すぎる」
「心配してくれるんだな。」
「当たり前じゃん。暁が死ぬと誰も私を守れないからね」
「で、冬川から見た感じ俺が雷鳴に勝てる可能性は何%なんだ?」
冬川は一度考え結論を出す。
「暁が戦っているところを見たことがないから正確性はないけど、1%以下かな」
1%、ほぼ勝てないと言っているようなものだ。
恐らくこの1%ですらも俺に気を使って言ってくれている。
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