第44話 愛奈6
少し歩いてようやく赤色の点が表示されている場所に到着した。
目の前には檻に入れられている一人の少女の姿がある。
少女は気を失っていて俺たちの存在に気づいていない。
俺は鍵を白石に渡し解放するように指示を出した。
白石は鍵を開け少女を檻の外に運んだ。
「じゃあ、これでゲームクリアを押したら一件落着だな」
「大丈夫だよな?」
この少女の意識がないのを気にしているのか白石の表情は暗い。
「ああ、息はしているし呼吸も安定している。おそらく、飲まず食わずだったから少し衰弱しているだけだろう。まあ、あと1日2日遅かったら危なかったかもしれないが」
そういうと白石は表情は少し明るくなった。
ゲームクリアを選択しいつものように体が粒子化し始めた。
「お帰りーー」
校長室に戻ったとたん愛奈は俺に抱き着いてきた。
俺の本当の実力を知らない愛奈にとっては不安で仕方なかっただろう。
俺は愛奈の頭を優しくなでた。
「水~~」
ふとそんな声が聞こえた。
その声の主は助け出した少女だった。
意外と早く目覚めたな。
「はい」
椿陽菜が慌てて水をその少女に渡すと少女はお礼も言わずペットボトルを奪って勢いよく飲みほした。
「回復回復~」
少女は衰弱していたとは思えないほど元気になっている。
「君たちは誰?」
「あー。悪いこいつらは夢羽を助てくれた人たちだ。」
「なるほどー」
俺はこの少女を見て初めに思った疑問を口にする。
「君って、小学生?」
「なにおーー!!」
俺のその言葉に少女は大激怒した。
地雷を踏んでしまったようだ。
少女は俺に飛びつき小さい手で拳を作り俺の腹を殴っている。
正直まったく痛くない。
俺のこの鍛えられた腹筋はびくともしていない。
力を入れなくてもダメージが入らなさそうだ。
少女は疲れたのか攻撃を中断した。
この光景を見ていた椿陽菜は事の経緯を話し始めた。
「なるほど。つまり君たちは私の命の恩人という事か。だが、私を小学生呼ばわりしたことは許さない」
少女はまだ怒っている。
「とりあえず元気になったならよかった。俺たちは帰る」
そう言って俺は愛奈に目線で合図を出し部屋の扉を開ける。
「待って。少しだけ2人で話をさせて欲しい」
少女は俺を見つめながらそう言った。
俺は愛奈に許しを貰い少女と二人で隣の事務室らしき場所に移動する。
「で、話ってのは?」
「じゃあ、単刀直入に聞こう。君はどこの部隊に所属していた?」
俺は少女のその言葉に一瞬思考が停止してしまった。
「どこの部隊とは?」
「そのままの意味だよ。私の考えではLv10のゲームはある程度の訓練を受けていなければクリア出来ない。」
「生憎だが、その考えは外れている。俺は普通の高校生だ。」
「そうか...。まあ、私が何を言おうと本当の事は話さないだろうし。」
「勝手な想像はやめてくれ。正直、君の言っている部隊?の事はよくわからない。自衛隊って意味なら全くの見当違いだ。」
何かこの少女に見透かされている感じがする。
洞察力で言えば俺よりも上、そんな気がする。
「じゃあ、自己紹介をしようか。私は冬川夢羽、元、雷鳴所属の殺し屋殺しだ。」
そう言った少女は先ほどとは雰囲気が異なり昔の俺のような人殺しのオーラを出している。
だが、殺気は感じない。
雷鳴と言えば俺が所属していた影闇のメンバーが恐れていたチームの一つだ。
殺し屋を殺す事に特化した殺し屋。
確か闇影内でも数人が犠牲になっていた気がする。
そんな彼女がなぜ正体を明かした?
表情で読み取ろうとするが全く顔に出さない。
呼吸、脈拍も平常運転だ。
間違いなく、殺し屋。
そう断定しても良いだろう。
「元、という事は今は違うのか?」
「お、そこを気にするという事はやはりお前もどこかの部隊に所属しているという事か。」
こいつには隠しても見破られてしまう。
いずればれるなら今ばらして、無理やりにでも口止めをしておいた方が良いか?
脳みそをフル回転させる。
そして、俺が出して結論はこうだ。
「ああ、俺も君と似たようなものだ。」
「お、案外簡単にばらすのか?」
「どうせ、俺が何処かの部隊に所属していた事をほぼ断定していただろ。」
「正解。私は雷鳴の中でも情報担当でね、こういう他人の心理を読んだり、仕草から情報を推測するのが得意なんだよ」
「で、俺を殺すのか?」
「だから、言っただろ元だって。今はもう関わりはないよ。いや、強いて言うなら雷鳴を裏切ったから命を狙われてるくらいかな」
そんなことを平然と言う彼女に俺は少し好感を持った。
似たような境遇だからだろうか。
「で、君の所属している部隊はなんだい?」
もう、この少女には打ち明けても問題なさそうだ。
それに、上手く事を運べば利用できる可能性がある。
「俺が所属していた部隊は影闇、Ω部隊だ」
俺がそう言うと少女は驚きを隠せていない。
まあ、これは仕方のないことではある。
闇影は裏世界では知らない者はいない。その中でも特にΩ部隊は恐れられていた。
「まて、Ω部隊は解散したはずじゃ。」
「だから、俺も君と同じで元闇影だ」
「なるほど」
「ちなみにナンバーは」
このナンバーというのは闇影特有の識別番号のようなものだ。
俺たちは、わざわざ名前で呼んだりしない。
「α1だ。」
俺がそう言うと彼女は気絶しそうな勢いでその場に倒れこんだ。
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