第42話 愛奈4
俺なら楽にクリア出来る。
だが、ここでゲームをクリアすると俺の実力がばれてしまう可能性が高い。
愛奈には悪いが断らせてもらおう。
「愛奈、帰るぞ」
俺の冷たい一言が愛奈に突き刺さった。
俺が扉を開き外に出るが愛奈がついてこない。
「じゃあ、私が助けに行く」
この言葉を聞いて正直呆れている。
他人のために命を張るというのがどれほど愚かな行為か知っているからだ。
「何でそこまでして助けるんだ?今日会ったばかりだろ。」
「そうだけど、そうじゃない。」
これは理論ではなさそうだ。
誰にだって内に秘めている自分の譲れないルール。
それが愛奈にとっては人助けなのだろう。
こればっかりは俺が説得してもダメか。
そう判断しリスク覚悟で人助けをするとしよう。
「分かった。俺も手伝う」
「本当?」
「ああ、本当だ。けど、このことを雪や勇人には言うなよ。あいつらにばれたら怒られる。」
雪にはばれても問題ないが勇人や歩などの俺の実力を1mmも知らない人間に報告されると少し面倒だ。
「分かった。誰にも言わない」
愛奈からの確認も取れたことで少し話を進ませる。
「手伝う代わりに、お前らの能力を教えてもらう。」
そう言うと一人ひとり自分の名前と能力を紹介し始めた。
「俺の名前は白石煌、能力は目を合わせた対象の動きを数秒間止める能力だ」
「僕は笠原迅、能力は化学物質を生成する能力」
「私は椿陽菜、能力は人の居場所の特定」
一人ずつ能力を公開したが、全員かなり使える能力だ。
それにバランスが良い。
このチームに雪のような頭脳タイプの人間が居れば格上相手でも勝てそうだな。
「じゃあ、俺と白石だけでゲームに挑戦する。白石はそれでいいな?」
「俺は構わないが人数が多い方がいいんじゃないか?」
確かに普通は人数が多い方がクリア率も高い。
だが、俺にとってはLv10程度一人でも十分だ。
ましてやほかの連中も連れて行くと足手まといになってしまう。
それに、今回のゲームでは能力を使うつもりだ。
俺の能力の目撃者は少ない方がいい。
これが、最も大きな理由だ。
正直、白石も連れて行く必要はないが、このゲームを一度でも経験している奴がいると役に立つ可能性がある。
「私も行くよ」
愛奈が志願してきたが断らせてもらう。
「愛奈の能力は今回のゲームではあまり役に立たない。それよりも俺たちが帰ってきた後に能力を使ってくれた方が助かる。ゲーム中に死なれても俺が悲しい。」
そう言うと素直に引き下がった。
「じゃあ、大丈夫だとは思うが残りの笠原と椿は愛奈の護衛を任せた。」
「了解」
諸々の準備を終え俺と白石はゲームに挑戦する。
転送が完了し、周囲を見渡すと巨大な木が一面に広がっている。
どうやら今回のマップは巨大樹の森のようだ。
神殺人殺のアプリを起動すると地図が映し出され俺たちのいる地点ともう一つの地点に赤く点が表示されている。
そのほかには黒色、紫色、金色で示された点が無数に表示されている。
恐らくだが、赤い点がプレイヤー、そのほかの点が今回の敵という事になる。
今回のゲームのルールは敵を全て撃破と単純なものだ。
よく見ると少しずつだがこちらに赤色と金色以外の点が近づいてくるのが分かる。
これがラッシュというやつか。
「白石、お前はこの点からとにかく逃げ回れ。必要になったら呼ぶ。」
「それだけで良いのか?」
「いいから早く逃げろ。もうすぐ敵が来るぞ」
白石のミスで捕まってしまった仲間の気持ちが少し分かった気がする。
白石の性格を分析するに、やる気はあるが全て裏目に出てしまうと言う結論に至った。
何となくだが、白石がどういうミスをして仲間が捕まったかが想像できてしまう。
そんなことを考えている間に敵が数十体ドタバタと足音を立てて近づいてきた。
見た目はゴブリン。
だが、数が多い。
俺はナイフを握りしめ数十体のゴブリンを一瞬で殺した。
特殊な能力がないから人間を相手にするよりよっぽど楽だった。
いや、もしかしたら何かしらの能力を持っていたかもしれないがそれを使う前に殺した可能性もある。
そしてまた、数十体のゴブリンがこちらに走ってきた。
一通りのゴブリンを始末し、地図上から黒色の点が消えた。
黒色の点はゴブリンで確定だな。
その瞬間、全方向から殺気を感じた。
俺は思わず能力を使い上空へ座標をずらした。
俺の元居た場所には10人の中世の騎士がいる。
こいつは、確か塔のゲームの時にいたあの騎士と同じ姿だ。
だが、違う点が一つだけある。
それは意思が無いことだ。
この間戦った中世の騎士には意思があった。
そのせいで、攻撃が複雑で目の前にいる騎士よりもさらに厄介だった。
だが、目の前にいる騎士は意思がなく全員機械的に動いている。
行動が読みやすい。
騎士の繰り出してくる技は同じだが、質が全く違うな。
もっと以前戦った時は技にキレがあった。
まあ、どうでもいいことか。
そうして俺は10人の騎士に向かって空気弾を放つ。
威力はかなり抑えたが、しっかりと心臓を空気が射抜いてくれた。
騎士はその場に倒れ光の粒子となり消えていく。
これで、後は金色の表示の敵だけか。
そう思い神殺人殺を開くと地図に表示されている点が全て復活していた。
はあ、めんどくさい。
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